<インタビュイー> 都城市総合政策部デジタル統括課 副主幹 / 総務省 地域情報化アドバイザー 佐藤 泰格様(写真右) 同課主査 牧田 貴大様(左)
マイナンバーカードの普及率が2022年8月時点で市区別全国1位*の都城市。 10月にはデジタル庁より「good digital award マイナンバーカード特別賞」を受賞するなど、先進的な取り組みが高く評価されています。こういった取り組みの旗振り役である”総合政策部デジタル統括課”様は、公共施設管理に関する課題解決のため、体育館や公民館を対象に「公共施設管理のデジタル化に関する実証実験」を実施されました。この実証実験の目的と効果をインタビュー形式でお伺いしました。 *参照:総務省 マイナンバーカードの市区町村別交付枚数等について(令和4年8月末時点)
宮崎県の南西部に位置し、豊かな自然や数多くの史跡を持ち、畜産業が盛んな都城市。 宮崎市に次ぐ人口を擁しながら、全国市区別のマイナンバーカード普及率で日本一を誇る、デジタル先進自治体である。
(掲載内容は取材日:2022年9月12日時点の情報です)
Q 都城市、およびご担当の業務について教えて下さい
A 都城市は宮崎県の南西部に位置し、宮崎市に次ぐ人口を抱えながら、自然豊かで畜産業が盛んな市です。私たちは市の総合政策部デジタル統括課で「デジタル技術を通じた課題解決」の業務を担っています。
都城市では今年8月末時点で84%の住民がマイナンバーカードを保有し、市区別のマイナンバーカード普及率で日本一 です。マイナンバーカードの普及促進は我々デジタル統括課で担当しており、「申請しやすい環境の構築」と「利活用促進」という二つの方向性を元に普及促進を進めています。 利活用促進に当たっては、「利便性や業務効率化につなげる」といった点を意識しており、オンライン申請の拡大や電子母子手帳の普及、避難所入所の際に台帳記入なくご利用いただけるようにする、といったメリットを感じていただけるサービスをご提供しています。 マイナンバーカードを活用した住民サービスの向上だけでなく、デジタル技術を通じて様々な課題の解決を企画 しています。都城市の全ての課や組織を対象に、市民や職員が課題に感じていることを吸い上げ、デジタルの力で解決することを支援しています。 いろいろな立場の方がデジタルを使って暮らしを良くする「スマートシティ」の構想の下、我々みんなでデジタル技術を活用し、より良い社会にしていくことを目指し、地域の中小企業や市民、その他さまざまな主体がデジタル技術を活用して恩恵や意義を生み出していきたいと考えています。
都城市庁舎
Q ”自治体DX”が叫ばれる中、実現に頭を悩ませている自治体も多いと聞きます。デジタル化プロジェクトの成功の秘訣はなんでしょうか?
A 一つ一つは小さいプロジェクトであっても、誰かが着実に便利になる、より良くなったという実感が持てるようなデジタル化を推進することだと思います。
そのため、課題をまず把握して、その解決のためにデジタル技術を用いるアプローチが成功への近道だと思っています。ソリューションから入ってしまうと、効果が出にくかったり、提供側が考えていたようには利用者が使ってくれないといった事態になりかねません。課題をしっかりと捉えて、それに対してデジタルを導入し、より便利になった、より良くなったという実感が持てる事業 を意識して推進しています。 また、デジタル化の事業を立ち上げるときには、KPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標。市の場合、例えば利用者数やアンケートによる評価などが挙げられる)をしっかり設定し、効果を計測します。 デジタル化のプロジェクトは、結果が出なければ取捨選択して止める、というのも持続可能な財政運営のために重要な観点だと思います。合わせて、新規事業を立ち上げる際には、バイアスが入らないように担当者だけではなく利用者にもヒアリングするなど、現場の声を把握するようにしています。 市民感覚を併せ持つ我々デジタル統括課が技術について深く理解し先行事例を調べるなどして、課題解決につながらないような仕組みを早いタイミングで見極める ことも、関係者の手間の削減につながると考えています。
Q 施設管理に関してどのような課題をお持ちでしたか。
A 施設の鍵の貸し手が見つからないという問題が発生し、貸し手なしで運用できる仕組みを構築する必要に迫られました。
人口減少や少子高齢化を受け、施設の鍵の貸し手が見つからない という事態になったのです。また、職員が常駐していない公民館などの施設は、市民が施設を利用する際に別の場所に出向いて鍵を受け取り、施設を利用した後、また鍵を返しに行かなければならない状況でしたので、管理者も利用者も負担を感じていました。 当たり前だと思っていた運用では立ちゆかなくなってきたことが分かり、持続可能な運営のため、鍵の貸し手がいなくても回るような仕組みが非常に重要 だと考えるに至りました。他の自治体の例なども参考にしながら、貸し手なしで運用できる鍵管理のソリューションを検討し始めました。
Q 鍵管理ソリューション検討のポイントを教えて下さい。
A 公共の施設ということから、誰もが利用できるサービスであることが必須です。
特に高齢者の方が使えるかどうかが公共施設に導入する際の大きな鍵になります。複数のスマートロックを比較検討したのですが、施設に設置されているWi-Fi環境をそのまま活かすことができ、さらに暗証番号式、かつ、ボタンを押すシンプルなタイプのスマートロックはRemoteLOCK のみでした。 高齢者の方が使う際に不便を感じずご利用いただけるかどうかの基準として、例えばテレビのリモコンやATM、こういった普段から使い慣れているものの操作性が挙げられます。RemoteLOCKの「ボタンを押す」という行為はテレビのリモコンの操作と類似していますし、「4桁の暗証番号」はATMの操作と同じです。 まさにこれらのRemoteLOCKの機能であれば、高齢の方にも違和感なく使っていただける と考えました。担当の営業の方にも非常に親身に話を聞いていただいた印象があります。
Q 実証実験の詳細について教えて下さい。
A 2022年5月中旬から8月中旬まで約3ヶ月間、RemoteLOCK 5i 5台と予約システム「まちかぎリモート」を実証実験として運用しました。
対象の施設は公民館と地域の体育館 です。試運用を始めるにあたり、月に一度の利用者調整会議の場や、予約を受け付ける窓口で、実証実験の主旨や使い方に関する説明を行って、周知を図り、新しい運用に対する不安を払拭するよう心掛けました。 また、常駐者のいない体育館に関しては、RemoteLOCKの近くに使い方の手順を貼り出しました。こういった形で利用方法をご理解いただいた結果、「使い方が分からない」「開かない」などの苦情は全く入りませんでした。
実証実験を行った地区体育館
ドアのタイプを問わず設置できる「キーボックス」の形式で運用。 暗証番号でRemoteLOCK 5iを解錠し、キーボックスの中から物理鍵を取り出してドアを解錠する。
Q 今回の実証実験の評価はいかがでしたか。
A 今回の実証実験の目的である「高齢者の方が使えるかどうか」を十分検証することができました。
新しい運用に対して不安を感じる面はどうしてもありましたが、実証実験を行ったことによって、「高齢者も問題なく使える」ことがわかり、市民の方に利便性を感じてもらうことができました。 これにより今後、全市的に導入する流れができたのは、この実証実験の一つの大きな効果だと思います。 実際、利用者にヒアリングしたところ、9割9分の方が使いやすいと回答 されました。実証実験が終わることをお伝えすると、「非常に便利で、以前のようにわざわざ別の場所に鍵を借りに行く運用には戻りたくない」「(元の運用に戻すと)不便になってしまう」という意見が大半で、デジタルの恩恵を実感することができる事業だと評価しています。 また、副次的ではありますが、災害時のスムーズな対応にも活用できる のでは、と考えています。災害が激甚化している中で、どうしたら素早く避難所を開設できる体制が整備できるか、今後ますます問われると思います。その一つの手段としてRemoteLOCKの可能性を見いだすことができました。
公民館
公民館の入り口横に設置されたキーボックス
Q 今後の展望について教えて下さい。
A 実証実験で非常に良い結果が得られましたので、本格導入に向けた検討をしっかりと進めていきたいと考えています
人口減少や高齢化はこれからますます厳しい状況になると認識していますので、できるだけ多くの施設を巻き込んだ形で導入に係る検討を進めていきたい と考えています。
Q 同じような課題をお持ちの自治体にメッセージをお願いします。
A デジタル化を進めることに悩んでいる自治体の方々にとっては、RemoteLOCKはデジタル化のメリットを感じられる非常に良いツールだと思います。
人口減少や高齢化が日本全国で今後ますます深刻化すると予想される中、持続可能な自治体経営を行っていくにあたり、自治体側もラク、市民側も便利になるという両方にとってメリットがある仕組みはデジタル化を進める上でも非常に希少価値が高い です。市民に寄り添ったサービスとして導入を検討するには、RemoteLOCKは最適なツールだと思います。 いろいろな自治体でRemoteLOCKの活用が始まり、さまざまな利活用法や効果が見え始めていますので、お困りの場合にはそういった先進自治体にお話を聞くなどして、前向きに進められることを強くお勧めします。
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