2024年11月22日(金)、TikTok Japanは京都市と共催で地域企業向けに動画の活用を伝える「TikTok成功事例から学ぶ!地域企業のためのショート動画活用セミナー in 京都」を実施しました。本セミナーは、地域企業に「若者とつながる機会の創出」「若者目線の魅力の再発見」「新たなマーケティングツールとの出会い」を提供することを目指したセミナーです。全国の中小・零細企業等によるTikTok活用の成功事例から、ショート動画を活用したマーケティングの概要や基礎知識、ショートムービープラットフォームを活用した情報発信を学びました。
京都市では、地域企業の持続的発展を地域ぐるみで支えるためにさまざまな施策を実施しています。2024年11月まで社会課題の解決や新たな価値の創出を目的として、京都市と地域企業が交流、連携しながら社会実験などに取り組む「京都・地域企業 未来の祭典2024」を開催しており、本セミナーもその一環として実施しました。
当日は、京都市をはじめとする地方自治体や企業などのショート動画を数多く手がけるシェイクトーキョー株式会社代表取締役の汐田海平氏と、人気ショート動画クリエイターのあああつしさん(@aaa_tsushi_ )が講師として登壇。地域企業や自治体関係者など約40名が集まり、講師の講演に聴講しました。
新たなコンテンツとの出会いが生まれるプラットフォーム 講演に先立ち、京都市から地域企業振興課長の藤田英樹氏があいさつしました。京都市ではすでにいくつかの部署でTikTokによる情報発信を行っており、地域企業の魅力発信や後継者の担い手不足、ひいては若者の人口流出といった地域課題解決に役立つと考え、今回のセミナーを企画されました。この機会を通じて地域企業が積極的にショート動画やSNSを活用し、「京都の地域企業の存在や取り組みがもっと若者に認知され、活気づいてほしい」と期待を寄せました。
続いてあいさつに立ったのは、コミュニティ・バンク京信(京都信用金庫)の岸本恵太部長。コミュニティバンク京信が京都市と連携して、多様な主体が社会課題や地域課題解決について話し合う場を持つ「QUESTIONタウンミーティング」を実施していることを説明。本セミナーもその一環と位置付け「自分たちも運営側だが今日は学びたいと思っています」と話しました。
TikTok Japan公共政策本部の笠原一英は、TikTokの概要や取り組みについて説明しました。TikTokは日本では2017年にサービスを開始し、当初は15秒までの動画を投稿できるプラットフォームでしたが、現在では最長10分の動画まで投稿できるようになっていることを紹介。視聴者の多くは「おすすめ」フィードを中心に閲覧しており、自分の好みにあった動画に加え、「興味がありそうな」コンテンツや少し関心とは合致しないコンテンツがフィードに流れてくることで、新たなコンテンツとの出会いが生まれるのが特長だと話しました。さらに最近は検索も増えており、例えばグルメスポットを能動的に検索し、訪れるという行動変容のきっかけにもなっているといいます。笠原は2024年5月に実施したTikTokの経済効果に関する調査レポート「TikTok Socio-Economic Impact Report 2024〜日本における経済的・社会的影響〜 」にも触れ、中小企業に対しては、GDP貢献額は606億、5,300人の雇用に影響を与えた(※ )と推計されることを紹介しました。
※国内名目GDP貢献額および雇用者数は、直接的影響、間接的影響、経済波及効果の合計として推計しています。
「伝えたいメッセージ」を「聞いてもらえる言葉」に変換する 次に、映像制作会社シェイクトーキョー株式会社の汐田海平氏が登壇しました。汐田氏はプロデューサーとして自治体や企業のショート動画制作に携わっており、京都市産業観光局が運営するTikTokアカウント「京都くりえいてぃ部 」の動画制作にも関わっています。この2年で約30カ所の自治体や省庁の動画制作に携わったという汐田氏は、「自治体には言えること、言えないことがあり、その制約の中でいかに多くの人に見てもらうか」について考え方を紹介しました。
汐田氏は、自身のショート動画の制作事例として「朝に楽しむ京都観光 」「京町家の宿泊プラン 」「京町家を未来へ 」などを紹介しました。
プラットフォームの仕組みなどを理解することで、(まだフォロワーがいない)1本目の動画でも10万人、100万人に見てもらえる可能性があるのがTikTokの魅力だと汐田氏は強調します。このため新規の視聴者層にアプローチできる「新たな出会いをつくることが得意なプラットフォーム」だと説明しました。
ショート動画の制作は「アイデア + 実現方法」の組み合わせだと汐田氏はいいます。アイデアは、誰に何を伝えるのかを考えることが重要です。例えば汐田氏が手がけた「京都の旅コツを紹介する動画 」は、「観光客」に「観光モラル」を伝えることがテーマでした。しかしそのまま伝えてもなかなか視聴者に見てもらえません。そこで観光モラルを、京都を快適に旅するための「旅コツ」と言い換えて動画を制作しました。伝えたいメッセージが「聞いてもらえる言葉か」「アクションを促す言葉になっているか」を意識し、「頭がちぎれるくらい」考えてほしいと汐田氏は強調しました。
アイデアが定まったら、次は実現方法です。こちらは、リサーチが重要だと汐田氏はいいます。考えたアイデアを届けるために最適な表現手法を探すのです。具体的には、以下の3ステップです。
(1)制作したい動画のキーワードをTikTok上で検索する。 (2)視聴数が多い動画や伸びている動画を5本ピックアップする。 (3)なぜ伸びているのかを考え、その形式をまねする。
伸びている動画を研究するときはコメント欄に注目することを、汐田氏は勧めます。コメントを通じてその動画がどう見られ、どのように盛り上がっていくのかを知ることができるためです。さらに自分で動画を制作する際も「どんなコメントが来てほしいか」を計画しましょう、と参加者にアドバイスを送りました。
クリエイター目線でTikTok活用のポイントを紹介 続いて、人気TikTokクリエイターのあああつしさんが登壇し、「クリエイター目線のTikTok活用方法」と題して、ショート動画制作時に意識していることを紹介しました。スマホを使った写真や動画の撮り方を紹介するコンテンツで人気のあああつしさんは、まず「TikTokライクな動画」について解説。「動画内の動き」「動画映え」「ASMR(音)」「パワーワード」の4つをポイントとして挙げました。
「動画内の動き」は、いかに画面に変化を付けるかという工夫。人がアトラクションを楽しむ様子を撮影したり、カメラ自体を動かすカメラワークを駆使したり、動くものを撮影したりするなど、撮影時に「動き」を意識することが重要だといいます。2つ目の「動画映え」は目を引く画面をつくる工夫です。色とりどりの被写体を撮影する、人と違うアングルで撮影する、絶景を撮るなど、視聴者が見たくなる画面構成も大切です。3つ目の「ASMR(音)」は、心地よい音を意識すること。あああつしさんは、飛行機が飛び去る音などの環境音、音楽と映像をシンクロさせる音ハメ、ジェットコースターで叫ぶ声などのリアル音を例としてあげました。4つ目の「パワーワード」は、言葉の工夫です。「おすすめスポット」を「行かないと後悔するスポット」と言い換えたり、「24時間営業のカフェ」を「24時間眠らないカフェ」と表現したりするなど、いかに見てもらえるようなインパクトがある言葉を使うかがポイントです。
続いて、あああつしさんが動画をつくるステップを紹介しました。特に時間を掛けるのはリサーチです。このステップに最も時間をかけており「控えめに言っても1日4-5時間は見ている」といい、使えそうなアイデアはメモにまとめているそうです。そこで見つけた成功事例と自分のフォーマットを「掛け算」して企画を作り、「構成/準備」「撮影」「編集」と進みます。
また投稿後の効果測定、分析方法についても紹介。投稿後にインサイトで視聴維持率の推移を見ると、動画のどのあたりで視聴者が減少したかを確認できるため、構成を見直す手がかりになると話しました。
最後に、企業とのコラボ動画も数多く手がけてきたあああつしさんは、企業がクリエイターとコラボする際に注意すべきポイントをクリエイターの視点から3つ挙げました。1つ目は「クリエイターのアカウントとの一貫性」です。普段投稿しているコンテンツとかけ離れた製品やサービスを紹介しても見られにくいので、訴求したい内容とクリエイターとの親和性を意識する必要があります。2つ目は「クリエイティブな柔軟性と企業の要望のバランス」です。企業側の要望が多すぎるとクリエイターがアイデアを発揮する余地が少なくなり、クリエイターの良さが消えてしまいます。そして3つ目は「成果指標に対する理解と共通認識」です。クリエイターや動画のジャンルにより、視聴数が多い、エンゲージメントが多いなど特徴は異なります。そのクリエイターはどんな部分が強みなのかを十分理解した上で目標を設定することが大切だ、とあああつしさんは説明しました。
TikTokで、企業や自治体案件を多く手がける人気クリエイターとプロデューサーが登壇した今回のセミナー。最後に、「一番大事なのは継続すること。自分自身がTikTokを6年やってきたから言えることです。僕は自分の動画を我が子ように愛しています。皆さんも、ぜひ動画をたくさんつくってください」(あああつしさん)、「まずはプラットフォームを好きになることが大事です。TikTokを『ずっと見ちゃう』の延長線上でリサーチをすれば楽しくなるし、アイデアも湧いてきます」(汐田氏)と、それぞれ参加者に熱いエールを送りました。