自治体の「外交力」が高まってきた
―「まち・ひと・しごと創生法」の施行から1年以上経過しました。自治体による取り組みの進捗について、どう評価していますか。
この1年間みていて、「自治体のチカラは相当あるな」と思いました。たとえば、自治体どうしの連携が進んでいる。泉佐野市(大阪府)と弘前市(青森県)が連携し、都会の就農希望者を派遣するプロジェクトを始めたのがその一例です。自治体が“外交力”を発揮しているわけです。
一方で、意識改革がなかなか進まない面もあります。地方創生プロジェクトは数値目標をもって、PDCAサイクルを回し、長い時間をかけて目標を達成するもの。今日やって明日成果が出るものではない。反面、短期的には失敗があってもいい。PDCAサイクルを回して改善を重ねて、10年後20年後に成果を出すという、自治体職員にとっては非常に新しい考え方です。理解してくれたところもあるが、まだまだのところもあるというのが実情でしょう。
―特徴ある取り組みの具体事例をいくつか教えてください。
行政からの政策提案力・発信力の高さを発揮した例や地域住民をうまくプロジェクトに巻き込んだ例、民間の優秀な人材を責任者にひっぱってきた例など、多くの特徴的な取り組みがあります(下の表参照)。
―効果的な取り組みがなかなかできない自治体もあると思います。どんな原因があるのでしょう。
多くの要因のなかで、ひとつだけあげるなら、人材が少ないことでしょう。どこの自治体でも地方創生プロジェクトを切り回せる人材は少なく、実務責任者が孤軍奮闘しているところもあります。
自治体として、あるいは首長個人でもいいのですが、人的ネットワークをもっているか、つくっているかが問われます。事業に向いた人をひっぱってこられるかが、成否をわけるいちばんのポイントになるかもしれません。
情報・財政・人材の「三本の矢」で支援する
―人材不足に悩む自治体に対する国の支援策を教えてください。
「地方創生人材支援制度」を継続して実施します。これは「右腕がほしい」と首長が希望した市町村と、「専門領域のわくにしばられない地方創生プロジェクトに携わりたい」という40代以下の国家公務員などをマッチングし、2年間派遣するもの。平成27年度は69名を派遣しました。
また、地方創生に携わる人材がノウハウを共有して、ヒトが育っていくプラットフォームを立ち上げます。さらに、自治体が専門人材を招く費用を交付金の対象に含めて、財政的にも支援します。
―交付金制度が大きく変わると聞きました。
ええ。複数年度にまたがったプロジェクトに交付金を出すようになります。腰をすえて取り組む自治体を支援するためです。
くわえて、ほかの自治体の取り組みや、施策立案の基礎となる各種データを得られる『RESAS(地域経済分析システム)』を拡充。人的支援・財政支援・情報支援の“三本の矢”で自治体を全面的にバックアップしていきます。
―最後に、自治体関係者へメッセージをお願いします。
人口減少は、いま危機感をもつのが非常に困難な問題です。でも、顕在化したときには手遅れ。住民や地元経済界と危機感を共有して、知恵を出しあい、20 年後30年後に「あのとき手を打ってよかった」といえるようにしたいですね。