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「スポーツ立県あきた」を軸に、競技力向上、健康づくり、地域活性化に挑む

「スポーツ立県あきた」を軸に、競技力向上、健康づくり、地域活性化に挑む

秋田県

「する」「みる」「ささえる」をテーマに取り組む独自施策

「スポーツ立県あきた」を軸に、競技力向上、健康づくり、地域活性化に挑む

秋田県知事 佐竹 敬久

※下記は自治体通信 Vol.22(2020年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


令和2年。いよいよ、東京オリンピック・パラリンピックが開催される。そんななか、かつては「スポーツ王国」と称されたほどスポーツが盛んな秋田県では、平成21年9月に、「スポーツ立県あきた」を宣言。早くからスポーツを軸にした施策を着々と進めており、現在は『第3期秋田県スポーツ推進計画~「スポーツ立県あきた」推進プラン2018-2021~』として引き続き行われている。いったいどのような取り組みなのだろうか。知事の佐竹氏に、今後の行政ビジョンも含めて聞いた。

3つのテーマを掲げて、スポーツの価値を享受する

―「スポーツ立県あきた」を宣言した背景を教えてください。

 秋田県では昔からスポーツが盛んで、以前はオリンピック出場選手数において、全国でもトップクラスでした。しかし、近年は人口減少や少子高齢化などから、状況はあまりかんばしくありません。

  そこで、競技力の向上による「スポーツ王国」の復活をはじめ、生涯を通じた豊かなスポーツライフづくりやスポーツによる地域活性化などを目指し、「スポーツ立県あきた」を宣言したのです。

 この取り組みには、3つのテーマがあります。まず、1つ目は「する」スポーツ。トップアスリートやママさんバレーといったアマチュアも含めて、スポーツをすることは健康にもいいし、精神衛生上もいい、と。

 そして、2つ目が「みる」スポーツ。やはり、アスリートの競技に打ち込む姿は人々に感動を与え、人生の活力を生みますからね。

―3つ目はなんでしょう。

 「ささえる」スポーツです。スポーツにはお金もかかるし、みんなで助け合わないといけない。そして「ささえる」ことによって人々の交流が生まれ、コミュニティの絆が強くなっていきますから。

 この「する」「みる」「ささえる」ことを通じて、県民がスポーツの価値を享受することを目指しているのです。

一定の成果を上げている、さまざまな取り組み

―たとえばどんなことに取り組んでいるのでしょう。

 やはり今年は東京オリンピック・パラリンピックイヤーということで、海外選手の事前合宿誘致に取り組んでいます。秋田県民のパスポート取得率が全国で最下位ということから、海外の方とのコミュニケーションを図ってグローバル理解を深めようというのも目的に含まれています。

 現時点では大潟村でデンマークのボート、美郷町でタイのバドミントン、大館市でタイのパラリンピックのボッチャ(※)および陸上競技の受け入れが正式決定しています。合宿が決まった国の選手と地元の小学生が試合をするなど、すでに積極的な交流が行われています。

 また秋田県ならではと言えば、駅伝。昔から盛んに行われているんですよ。特に県内では25市町村持ち回りで行われる市町村対抗駅伝は、言うなればひとつのお祭りですね。

 これは、たんに順位を競うのではなく、各市町村が宣伝ブースをつくって、物販や観光情報も提供するんです。秋田県は意外と広く、青森県側と山形県側って相当離れているんですね。そこで、市町村対抗駅伝を通じていままで知らなかった県内の情報を得たり、交流を図ることができるのです。

※ ボッチャ:重度脳性麻痺者もしくは同程度の四肢重度機能障がい者のために考案されたスポーツで、パラリンピックの正式種目

―ほかに取り組んでいることはありますか。

 スキーですね。なかでもフリースタイルスキー・モーグル(以下、モーグル)にチカラを入れていて、平成28年にたざわ湖スキー場のコースに8,000万円の工費をかけてジャッジハウスを建設したんです。これを見たスイス本部の方から、「世界の3大コースに入る」と言われました。現在のところ、日本でモーグルのワールドカップを開催しているのは秋田県だけ。毎年、各国からメダリストたちが集まり、世界最高峰の技が楽しめるんです。

 そのほか、プロのバスケットボールチームやサッカー、そしてラグビーのトップチームがあり、応援も盛ん。さらに、日本中からコーチを呼び寄せた「秋田型高校野球育成・強化プロジェクト」の効果もあって、おととしは金足農業高校の躍進もありました。

 こうした状況から、スポーツ立県として一定の成果は上がっているんじゃないかと思います。

 そして、こうしたスポーツ施策を行っているのには別の意図もあるのです。

高齢者に楽しんでもらいつつ、健康寿命を伸ばす

―それはなんでしょう。

 高齢者の方に、健康になってもらうことです。現在のところ、秋田県は健康寿命があまり長くないんですね。そこで、スポーツを身近に感じてもらうことにより、まずは自身の健康を意識してもらう。さらに、自らもスポーツをすることで元気に楽しく過ごしてもらう。スポーツと健康をリンクさせることで、副次効果として健康寿命を伸ばそうとしているのです。

 そのため、ゲートボールやグラウンドゴルフの全国大会も頻繁に開催しています。朝に、高齢者の方がグラウンドゴルフをやっている姿をよく目にしますしね。

 あと、秋田県ではバスケットボールが戦前から親しまれていて。いわゆる、「籠球」というやつです。おじいちゃんもおばあちゃんも、意外と経験者が多いんです。だから、プロのバスケットボールを観に行ってもらったりしてね。そうやって高齢者が外出する機会を増やし、自宅以外に居場所をつくってもらう。そうした取り組みも、大事だと思っています。

稼ぐチカラを身につけて“脱皮”を図っていく

―最後に今後の県政ビジョンを教えてください。

 まずは、稼ぐチカラをつけていくことですね。そのために企業誘致を積極的に行っています。いまBCP(※)の関係で、成長している企業の移転話がけっこう進みつつあります。その一方で、地元企業も誘致した企業と連携することで全体的な底上げを図っていく。そうすることで、若者が働ける環境を整え、県内ににぎわいをもたらそうと考えています。

 ただ、そうは言っても都会のような喧騒をつくりたいのではありません。

※ BCP:Business Continuity Plan(事業継続計画)の略。災害などの緊急事態が発生したときに、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画

―どのようなものを目指すのでしょうか。

 たとえるならば、ヨーロッパの地方にある中都市。文化的な水準が高くて、落ち着いていて、先端産業もあって。観光客もガヤガヤやってくるのではなく、ゆっくり観光できて、長く滞在してもらう。そういった都市を目指そう、と。

 秋田県には、落ち着いた農村文化があります。さらに子どもの学力も全国トップレベルですから、そういったポテンシャルは十分にもっていると考えています。スポーツ施策も、活かしていくことができるはずです。

 そうした取り組みにより、秋田県の産業や農業、観光などすべてにおいて“脱皮”を図っていく。それがいま、いちばんに掲げている目標ですね。

佐竹 敬久 (さたけ のりひさ) プロフィール
昭和22年、秋田県生まれ。昭和46年に東北大学工学部精密工学科を卒業し、昭和47年に秋田県庁入庁。おもに商工行政・地方行政関係を担当し、その後は工業振興課長、地方課長、総務部次長などを歴任する。平成13年、秋田市長に就任し、2期務める。平成21年、秋田県知事に就任。現在は3期目。佐竹北家第21代当主も務めている。
 
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