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備えあれば憂いなし。総力をあげて「安全・安心なあいち」の実現へ

備えあれば憂いなし。総力をあげて「安全・安心なあいち」の実現へ

愛知県

「伊勢湾台風」「東海豪雨」を教訓とした愛知県の災害対策

備えあれば憂いなし。総力をあげて「安全・安心なあいち」の実現へ

愛知県知事 大村 秀章

※下記は自治体通信 Vol.23(2020年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


かつては「伊勢湾台風」「東海豪雨」など、大規模災害に見舞われてきた経験をもつ愛知県。さらに、南海トラフ地震による甚大な被害が懸念される同県では、「愛知県地域強靱化計画」を策定するといったように、防災の準備を着々と進めてきた。就任10年目を迎えた知事の大村氏に、地震をはじめとした大規模災害対策の詳細を聞いた。

「産業首都」としての、災害対策が求められる

―「愛知県地域強靱化計画」にもとづいた、独自の災害対策を教えてください。

 まず前提として、愛知県は製造品出荷額が41年連続で日本一を誇り、県内総生産が東京都に次ぐ全国第2位など、「産業首都」として日本経済の牽引役を果たしているエリアです。もし大規模災害による甚大な被害が発生し、迅速な復旧・復興がなされなければ、愛知県だけでなく日本、ひいては世界経済への影響も計り知れません。

 こうした点を踏まえ、「愛知県地域強靱化計画」を策定し、地震をはじめとした災害から、県民の生命と財産を守る強靱な県土づくりに取り組んでいるのです。

―具体的にどのような取り組みを行っているのですか。

 大きく分けて、5つの取り組みを行っています。まずは「ゼロメートル地帯の浸水対策」。愛知県は日本最大のゼロメートル地帯を有しています。こうした地域は、河川・海岸堤防が被災した場合、広範囲に浸水し、長期間湛水する恐れがあります。このため、河川・海岸堤防や排水機場の耐震化などの地震・津波・高潮対策を進めるとともに、木曽三川下流域をはじめとするゼロメートル地帯に、救出・救助の活動拠点となる「広域的な防災活動拠点」の整備を行っています。

―2つ目はなんでしょう。

 「水害対策」です。近年、雨の降り方は局地化、集中化、激甚化しており、今後もその傾向は続くと予想されます。そこで、河道改修や遊水地などの整備にくわえ、河道内に堆積した土砂の除去や樹木の伐採などの維持管理を積極的に推進。さらに「みずから守るプログラム(※)」によって、住民一人ひとりが確実に避難を行えるよう、マイ・タイムライン(※)の手法を取り入れるといった、県民の適切な避難行動につながる取り組みを進めています。

※みずから守るプログラム:住民が水害に直面した際に、適切な行動に移せるよう住民目線の情報提供と住民の自発的な行動を育む地域協働型の取り組みとして、愛知県が平成23年度から展開しているプログラム

※マイ・タイムライン:大雨によって河川の水位が上昇するときなどに、自分自身がとる標準的な防災行動を時系列的に整理し、とりまとめる行動計画表のこと

ハードとソフトの両面で、ハイレベルな施策を実行

―3つ目を教えてください。

 「土砂災害対策」ですね。土砂災害防止施設の整備にくわえ、県民に土砂災害の危険を知らせるため、これまで約1万5,000ヵ所で土砂災害警戒区域の指定を行ってきました。指定するにあたっては、本県独自のオープンハウス方式(※)の説明会を市町村と協力して開催し、来場のみなさま一人ひとりに、個々の状況に応じた土砂災害への備えについて説明を行っています。

 さらに、防災意識向上を図るとともに、より実効性のある避難行動につながるよう、世帯ごとに安全な避難経路を示す「マイ・ハザードマップ」をつくってもらい、これを用いて地域ぐるみの避難訓練を行っています。

※オープンハウス方式:来場者が都合の良い時間に随時来場する方式

―4つ目はなんですか。

 「住宅の耐震化」です。これは来年度までに住宅の耐震化率を95%にするという目標を掲げ、市町村と協力し、無料耐震診断の実施や耐震改修費補助制度の整備などを行っているところです。木造住宅の補助実績は累計で、耐震診断では全国1位、耐震改修では全国2位となるなど、積極的に住宅の耐震化を進めています。

―最後に5つ目の取り組みを教えてください。

 「道路・港湾などの強化」ですね。緊急輸送道路の重要な橋梁の耐震性の一層の強化や、ゼロメートル地帯における、液状化による橋梁の取付部の沈下を抑制するための段差対策を推進するほか、港湾の対策として、耐震強化岸壁の整備などを進めています。

 こうしたハードとソフトの両面から強靱な県土づくりに取り組んでいます。100%とは言わないまでも、相当ハイレベルな防災体制を整えていると思います。

地域ネットワークを、日頃から構築しておく

―大村さんが防災行政を行っていくうえで重視していることはなんでしょう。

 県民の安全・安心を確保するため、「備えあれば憂いなし」を念頭に置いて取り組んでいます。もちろん、災害は起こらないのがいちばんですが、先ほど言ったように、できるだけハイレベルな備えをしておく。そして、起こってしまった場合はとにかくスピードが大事。現場の状況を1分1秒でも早く把握して情報をつかみ、瞬時に判断してできるだけ被害を小さく抑える減災に努める。そして、ただちに復旧・復興する準備にとりかかる。そのような“復元力”を蓄積しておくためにも、日々そういった準備を行っていくことが重要だと考えています。

―“復元力”を蓄積するための準備にはなにが重要ですか。

 日頃からの市町村および県民、企業を含めた、地域ネットワークとの連携ですね。たとえば私が、地域の防災訓練や防災イベントなどに出席した際には、時間の許す限り会場を回り、企業や団体、そして、参加された地域住民などひとりでも多くの方と直接対話し、現場・地域の声を聞くよう心がけています。

 こうした積み重ねが、防災や災害発生時の円滑な災害対応にもつながっていくと考えています。


広域かつ甚大な災害に備え、後方支援準備を検討

―防災行政における今後のビジョンを教えてください。

 これまでの取り組みをいま一度再点検し、新たな災害に備えていきたいと思います。

 思えば、昨年は伊勢湾台風から60年。今年は、東海豪雨から20年が経ちます。私が知事に就任した直後に東日本大震災が発生し、その後も熊本地震、大阪北部地震、西日本豪雨、北海道胆振東部地震。そして、昨年の台風第15号(房総半島台風)、第19号(東日本台風)など、全国各地で過去に経験がないほどの大規模災害が発生しました。私たちの役目は、過去の災害を風化させることなく語り継ぎ、教訓を踏まえつつ、これからの取り組みを推進していくこと。それこそが重要だと考えているのです。

―過去の経験を活かすのは重要なことですね。

 はい。さらには新たな取り組みとして、広域かつ甚大な災害が発生した際に備え、活動要員や物資の備蓄・分配などの機能をもつ「後方支援を担う新たな防災拠点」の確保に向けた検討を進めていきます。国、県内市町村、民間事業者など、社会のあらゆる構成員が総力をあげて災害に対処できるよう体制を強化し、連携を深めて「安全・安心なあいち」を実現していきたいですね。


大村 秀章 (おおむら ひであき) プロフィール
昭和35年、愛知県生まれ。昭和57年に東京大学法学部を卒業後、農林水産省に入省。平成8年の総選挙に自民党から出馬し、初当選。以来、5期連続当選。平成23年の愛知県知事選挙に立候補し、当選。現在は3期目。
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