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「前例踏襲」からの決別を打ち出した徳島県の新総合計画

変化を恐れず、未来志向の挑戦を重ね、「地方創生戦国時代」を勝ち抜く

変化を恐れず、未来志向の挑戦を重ね、「地方創生戦国時代」を勝ち抜く

※下記は自治体通信 Vol.59(2024年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

徳島県では、昨年5月に知事に就任した後藤田氏のもと、今後5年間にわたる新たな県政方針「徳島新未来創生総合計画」を今年度からスタートさせた。計画策定にあたって同氏は、「少子高齢化や人口減少が進む地方はいま、勝ち組と負け組が分かれる『地方創生戦国時代』の真っ只中にある」と語る。そうした危機感のもと、計画にはどのような内容が盛り込まれているのか。今後の県政ビジョンを含めて、同氏に聞いた。

インタビュー
後藤田 正純
徳島県知事
後藤田 正純ごとうだ まさずみ
昭和44年、東京都生まれ。平成5年、慶應義塾大学商学部を卒業後、三菱商事株式会社に入社。平成12年、衆議院議員選挙で初当選。内閣府大臣政務官、衆議院決算行政監視委員長、衆議院東日本大震災復興特別委員長、内閣府副大臣などを歴任。令和5年5月、徳島県知事に就任。

「静かなる有事」が地方で進行している

―令和5年5月、どのような使命感をもって徳島県知事に就任したのでしょう。

 22年間、国会議員を務めてきた経験で感じてきたのは、いくら国が政策をつくり、予算を配分しても、地方が動かなければなにも変わらないという現実でした。いま地方は、少子高齢化や若者の流出、それに伴う労働力不足が顕在化し、「静かなる有事」が進行しているとの危機感を私は強めています。この徳島県も例外ではありません。この流れに歯止めをかけ、本来すばらしい魅力をもった徳島を未来に引き継いでいくためには、地方から、徳島県から変えていくしかない。そうした危機感の中で、国の背中を押すような一歩先の日本の姿を徳島から示していこうと、知事選に出馬しました。その際、私が伝えてきたのは、「知事は県の営業マンでなければいけない」という考えです。その主張に対し、私の行動力や発信力に県民が期待し、「新しい知事像」を感じてくれたのかもしれません。

―この間の取り組みを振り返ってください。

 就任直後からまず、10年先を見据え、県政運営の指針となる総合計画の策定に力を入れてきました。これから先の10年は、地方同士が「地方創生」の成果を競い合う正念場、いわば「地方創生戦国時代」を迎えると私は認識しています。これに対して、残念ながらこれまでの徳島県は、観光においては宿泊者数が最下位、ふるさと納税の寄附額に関しても全国最下位と、大きく立ち遅れてきたことは否めません。この厳しい現状認識のもと、「現状維持」や「前例踏襲」といった姿勢を徹底的に排除し、全国に注目される徳島、世界に開かれた徳島にしていくことを強く意識して策定したのが、令和6年度からスタートした「徳島新未来創生総合計画」です。

果たすべき3つのミッション

―どういった計画なのでしょう。ポイントを教えてください。

 この計画が掲げる基本理念は、「『未来に引き継げる徳島』の実現」というもので、目指すべき将来像は、「ずっと居りたい」「いつも帰りたい」「みんな行きたい」と県内外のみなさんから感じてもらえる徳島県、つまり選ばれる徳島県です。その姿を実現するためのミッションとして設定しているのが、「安心度」「魅力度」「透明度」という3つの指標の向上であり、この3つのミッションのもとに17項目の戦略、75項目の戦術を紐づけています。

―3つのミッションには、どのような問題意識が反映されていますか。

 まず、「ずっと居りたい」「いつも帰りたい」徳島を実現するためには、県民のみなさんが安心して、豊かに暮らし続ける社会であることは大前提です。「安心度」を最初に掲げているのは、そのためです。

―詳しく聞かせてください。

 具体的には、子育て支援の強化や教育の再生では、未来を担う子どもたちの可能性を引き出す環境をつくらなければいけません。また、先般の新型コロナウイルス感染症への対応でも浮き彫りになったように、充実した医療体制や高齢者福祉環境は、県民生活を支えるもっとも重要な基盤にほかなりません。いずれの環境を充実させるためにも、現場で働く人たちへの支援がきわめて重要になることはいうまでもありません。そのために先般も、政労使会議に知事として初めて出席し、全国で2番目に低い最低賃金に対する危機感を関係者と共有したところです。徳島県においても、社会的弱者に寄り添い、県民の誰もが安心して活躍できる県政運営を行っていきます。

 また、発生が予想される「南海トラフ巨大地震」や「中央構造線・活断層地震」のシミュレーションを再点検し、県民の生命・財産を守るための危機管理体制の充実や県土強靭化を図ることも「安心度」を高めるための重要なテーマになります。

前例踏襲を打破する

―ほかの2つのミッションについては、いかがですか。

 先ほどお話ししたとおり、私は現在を「地方創生戦国時代」と位置づけています。その中でも、県外の人々に選んでもらい、「みんな行きたい」と思ってもらえるには、これまで以上に徳島県の「魅力度」を引き上げ、発信していかなければならないのはいうまでもありません。正直、これまではその努力が十分だったとはいえないと、私は評価しています。四国4県で唯一、徳島県だけLCCの成田便の就航がないのは象徴的です。

 これらの政策を県民のみなさんや市町村とともに推進していくためには、県政運営の「透明度」を高め、公平・公正な開かれた行政の実現が求められます。そこでは、情報発信の強化や財政の持続可能性向上はもとより、知事としてその姿勢を打ち出すために、私は就任後、「最長でも3期12年」を任期とし、退職金も受け取らないための条例を成立させています。多選を制限することで、私自身が不退転の決意で政策を推進するとともに、県政の新陳代謝を担保したいという狙いがあります。これらも「透明度」向上の一策と位置づけています。

―今後、これらのミッションをどのように実現していきますか。

 私が日頃から県職員のみなさんに伝えていることは、現状維持や前例踏襲を打破し、つねに「これは安心度UPにつながっているか」「魅力度UPに資するものか」「透明度を高めるものか」といった視点を持ちながら、一つひとつの政策を立案、実行してほしいということです。計画において、「新次元の政策」という言葉を打ち出し、前例からの決別を強く意識しているのも、行政として変化が必要だという認識の表明にほかなりません。これに伴い、私が就任して以降、初めての当初予算編成では、20あった特別会計を16に減らし、審議会等も大幅に削減しています。同時に、超過勤務が全国で最上位クラスにある現在の当県職員の働き方も変えていくために、大規模な組織再編も実施しました。

国内外から注目される徳島へ

―県政運営のかたちも前例を踏襲せず、抜本的に見直していると。

 その通りです。私は知事に就任してから29ヵ国の駐日大使等との面会や、外務省との共催で、約80ヵ国の駐日外交団等をお招きし「飯倉公館」でレセプションを開催しました。さらには、現在、県産品の国内外への販路拡大を目指す「新たな地域商社」設立に向けた体制整備を進めています。このように変化を恐れず、全国・世界に向けて挑戦を重ねていけば、「地方創生戦国時代」を勝ち抜き、国内外から注目される新しい徳島を築いていけると思っています。

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