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徳島県市町村職員共済組合の取り組み
先進事例2023.06.19
組合員の生活習慣病対策①

ICTの活用と血糖自己管理ツールで、糖尿病対策に確かな手応えを得た

[提供] 日本生命保険相互会社
ICTの活用と血糖自己管理ツールで、糖尿病対策に確かな手応えを得た
この記事の配信元
日本生命保険相互会社
日本生命保険相互会社

※下記は自治体通信 Vol.50(2023年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

厚生労働省の試算では、「その可能性が否定できない人」を含めて約2,000万人の患者がいるとされ、いまや国民病ともいわれる糖尿病。その対策は大きな課題となっている。特に、その発症や重症化を抑えるためには、早期の対策が重要とされている。そうしたなか、特定保健指導の対象となる40歳よりも若い、30代を対象に取り組みを開始しているのが、徳島県市町村職員共済組合(徳島県)である。その詳細について、同組合の大戸井氏に話を聞いた。

インタビュー
大戸井 美由紀
徳島県市町村職員共済組合
医療保健課 事務主任
大戸井 美由紀おおどい みゆき

糖尿病死亡率が全国上位。重症化予防に力を入れてきた

―「糖尿病予防プログラム」を導入した経緯を教えてください。

 当県は、平成5年から同18年の14年間にわたり、糖尿病による死亡率が全国1位を記録しており、その後もつねに上位に位置している状況です。当組合員においても、糖尿病や高血圧症における死亡率が高かったこともあり、生活習慣病の重症化を防ぐ施策を優先的に行ってきた経緯がありました。そうしたなか、令和元年に日本生命から「糖尿病予防プログラム」の紹介を受け、関心をもちました。まずは、その効果を確かめるため、当組合の職員を対象にトライアルを行うことを決め、参加条件である「HbA1c*の値が5.6~6.4%」に該当する数人で実施しました。

―結果はいかがでしたか。

 3ヵ月間のプログラムでは、最初と最後の各2週間に『FreeStyleリブレ』という血糖管理ツールを二の腕に装着し、24時間のグルコース値*の変動を自身でモニタリングします。採血の必要がなく、食事のたびに数値の変動をリアルタイムで確認できるため、参加者は「食事内容に気をつけるようになった」とのことでした。また、このプログラムには、ほかには見られない特徴もありました。

―どういった特徴でしょう。

 保健師によって約2週間に1度のペースで行われる保健指導が、ICT機器を活用して遠隔で実施されるのです。私自身もトライアルに参加してみたのですが、専門の保健師がスマートフォンを介して、自分の生活に対して的確なアドバイスをくれるというのは、特別な体験でした。多忙な組合員でも続けられそうとの感触を持ったとおり、実際に参加者全員がプログラムを完走でき、血糖の数値も改善されました。この効果を受け、令和2年度から当組合の保健事業として開始することを決めました。

*HbA1c : 糖尿病である可能性があるかどうかを判別する数値。過去1~2ヵ月前の血糖値を反映する
*グルコース値 : 間質液中のブドウ糖(グルコース)の濃度。血糖値との間に高い相関関係があることが証明されている

30代向けにプログラムを導入。改善率は69.2%を記録

―その後、どのようにプログラムを実施していったのですか。

 当組合では、将来の医療費の削減と同時に、平等性の観点から予算の執行を若い組合員向けにシフトしていきたいという考えもありました。そこで、まずは参加者の年齢を30代とする方針を決めました。初回の令和2年9月の実施では、対象を39歳の組合員に絞り、プログラムの条件に合致する組合員を募り、5人が参加。翌年は35~39歳に年齢を広げ、参加者は9人に。最新の令和4年9月には30~39歳へと枠を広げた結果、参加者は17人に増えました。ここでの結果は、プログラムの完走率が76.5%、HbA1cの改善率が69.2%となりました。実施期間が9~12月とイベントが多い年末に重なっていることを考えると、この結果は十分に高いと評価しています。

 さらに令和4年度からは、こうした取り組みの効果を高めるために、新たな施策も導入しています。

―どのような施策でしょう。

 毎年組合員が受診する健康診査やレセプトのデータをもとに、事業所ごとの健康課題を見える化する日本生命の「データ分析サービス」を導入しました。各市町村の職員が所属する当組合は、54もの所属所によって構成されていることから、各所の健康課題や対策への意識もかなりのバラツキがありました。そこで、客観的なデータで現状を分析し、事業所ごとの健康課題の重さや種類などを定量的に把握する必要があると考えたのです。折しも、法改正に伴い、令和4年度途中から組合員は約3,200人増加しています。一人ひとりの健康課題の把握がより難しくなるなか、今後は「データ分析サービス」をもとに、所属所を通じた働きかけを強化して特定保健指導の受診率を高め、さらに必要とする組合員には「糖尿病予防プログラム」につなげる。そうした一貫した取り組みでコラボヘルスを実践し、組合員の健康増進を図っていく考えです。

研究者の視点
組合員の生活習慣病対策②
プログラム監修 日本生命病院
90%を超える完走率が示す、参加者の行動変容と血糖改善効果

これまで紹介した、徳島県市町村職員共済組合が導入し、その効果を実感した「糖尿病予防プログラム」。このプログラムには、医学的な知見からどのような効果が期待できるのか。同プログラムを監修した日本生命病院において、副院長で糖尿病・内分泌センター長を務める橋本氏に聞いた。

インタビュー
橋本 久仁彦
日本生命病院
副院長 内分泌・代謝内科部長 糖尿病・内分泌センター長
橋本 久仁彦はしもと くにひこ
昭和37年、大阪府生まれ。昭和62年、金沢大学医学部を卒業。平成7年、大阪大学大学院卒業。医学博士。令和4年より現職。

オンラインによる保健指導は、非常に画期的

―「糖尿病予防プログラム」にはどのような意義がありますか。

 糖尿病は、いまや国民病ともいわれるほどの患者数の多さに加え、平成6年以来、透析導入原因の第1位を独走していることから、国も対策に力を入れてきました。特に、若いうちから未病の方々に施す対策は、糖尿病の拡大傾向を抑えるうえで非常に重要です。

 ただし、専門医の立場でいうと、糖尿病対策の一番の難しさは、患者さんの自覚症状が乏しいなかで、継続的に通院や治療を促すことです。ましてや、まだ病気と判定される前の予備軍ともなると、保健指導を受けてもらうよう通院を促すことはきわめて難しいです。その意味では、日本生命の「糖尿病予防プログラム」は、通院を必要とせず、オンラインによって未病の方々への保健指導を実現するという点は非常に画期的です。

―プログラムでは、専用の血糖管理ツールも活用していますね。

 『FreeStyle リブレ』という間歇(かんけつ)スキャン式自己測定器が活用されています。何を食べれば、どれだけ血糖が上がるかを、リアルタイムで手軽にセルフチェックできるツールですから、血糖上昇の仕組みがわかりやすく、保健師による指導もさらに心に響くというわけです。糖尿病治療においては継続性が重要であり、食生活や運動といった習慣を変容させていく必要があります。そのため、3ヵ月というプログラムの実施期間も、効果を判断するうえで適切な長さに設計されているといえます。

「意識や行動の変化があった」参加者の9割近くが回答

―プログラムにおけるこれまでの実績を聞かせてください。

 令和5年3月時点で73団体、2,172人がプログラムに参加していますが、そこでの平均完走率は92.4%を記録しています。『Free Style リブレ』で計測した血糖に関する数値を見ても、食後の急な血糖変動を表す「血糖値スパイク回数*」は平均4.9回減少し、減少した人の割合も68.6%。グルコース値*は、平均2.6mg/dL減少しており、減少した人の割合も65.3%に達しています。参加者の9割近くが「意識や行動の変化があった」と回答している実態がまさに数字に表れています。

*血糖値スパイク回数、グルコース値は、プログラムにおいて前後半ともに機器で計測できた参加者897人を対象に算出(令和5年2月時点)

―健康増進施策を進める自治体関係者にアドバイスをお願いします。

 糖尿病は進行を放置していると、深刻な合併症を引き起こす恐ろしい病気ですが、早期の対策で発症や重症化を止めることはできます。そして、その予防対策は早いほど良い。この「糖尿病予防プログラム」で、職員や住民に向けた一刻も早い予防対策をお勧めします。

支援企業の視点
増加する若年層の糖尿病対策には、ICT機器を駆使した早期予防を
インタビュー
須永 康資
日本生命保険相互会社
ヘルスケア事業部 ヘルスケア事業企画担当部長 兼 イノベーション開発室調査役 兼 法人開拓戦略室調査役 兼 DX戦略企画部調査役 兼 大阪・関西万博推進部 調査役
須永 康資すなが やすし
群馬県生まれ。平成16年、日本生命保険相互会社に入社。平成28年から現職。
インタビュー
髙本 洵
日本生命保険相互会社
ヘルスケア事業部 ヘルスケアコンサルティング 推進役
髙本 洵たかもと まこと
千葉県生まれ。平成21年、日本生命保険相互会社に入社。平成30年から現職。

―糖尿病対策に力を入れる自治体にとって現在の課題はなんですか。

須永 近年の生活習慣の変化により、特定保健指導の対象となる40歳よりも若い、若年層において糖尿病の発症や疑いが増加していると感じている自治体は増えています。一方で、若年層の場合は健康への意識がまだ薄く、対策を継続してもらえないケースも多いです。それに対して、当社の「糖尿病予防プログラム」は、ICT機器を駆使した、若年層にも受け入れられやすいものとなっており、いま多くの自治体で好評を得ています。

髙本 さらに当社では現在、自治体の限られた予算を効率的に執行し、健康施策の効果を高めるための支援として、「データ分析サービス」の提供にも力を入れています。ここでは、お預かりした健診・レセプトデータをもとに、どこにどういった健康課題が潜んでいるのかを事業所ごとに可視化します。来年度に開始される「第3期データヘルス計画」に対応したレポート提供も開始しています。

―今後の自治体に対する支援方針を聞かせてください。

須永 コンサルティングサービスと具体的なソリューション提供の両輪で自治体を支援していきます。ソリューションに関しては、糖尿病に限らず、メンタルヘルスも含めた多様なラインナップを用意するため、ほかの事業者とのアライアンス構築にも力を入れていきます。

髙本 自治体では、令和6年に向けて「医療費適正化計画」や「健康増進計画」などの見直しを進めています。こうした計画も踏まえながら、住民の健康増進に向けて、自治体が必要とする支援を提供していく考えです。

日本生命保険相互会社
日本生命保険相互会社
創立

明治22年7月

従業員数

7万4,633人(うち内務職員2万767人、令和4年3月末現在)

事業内容

生命保険業、付随業務・その他の業務など

URL

https://www.nissay.co.jp/

お問い合わせ先
0120-201-021(月~金 9:00~18:00、土 9:00~17:00、祝日・12/31~1/3を除く)
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