《今回の「自著書評」の著者紹介》
地域情報化アドバイザー/合同会社 KUコンサルティング 代表社員/豊島区 元CISO(情報セキュリティ統括責任者)
髙橋 邦夫たかはし くにお
1989年豊島区役所入庁。情報管理課、税務課、国民年金課、保育課などに勤務。2014~2015年は豊島区役所CISO(情報セキュリティ統括責任者)を務める。2015年より総務省地域情報化アドバイザー、ICT地域マネージャー、地方公共団体情報システム機構地方支援アドバイザー、文部科学省ICT活用教育アドバイザー、2016年より独立行政法人情報処理推進機構「地方創生とIT研究会」委員。2018年豊島区役所を退職、合同会社KUコンサルティングを設立し現職。豊島区役所在職中、庁舎移転に際して全管理職員にテレワーク用PCを配布、また庁内LANの全フロア無線化やIP電話等コミュニケーションツールを用いた情報伝達など、ワークスタイルの変革に取り組む。庁外では、自治体向け「情報セキュリティポリシーガイドライン」、教育委員会向け「学校情報セキュリティポリシーガイドライン」策定にかかわる。今年度は一関市、飯島町、堺市、宇和島市など10を超える自治体のアドバイザーを務めている。2015年には総務省情報化促進貢献個人等表彰において総務大臣賞受賞。2022年には情報通信月間記念式典において総務大臣表彰受賞。
かつて豊島区CISO(情報セキュリティ統括責任者)として自治体DX推進を通じた職員の働き方改革を進め、現在は地域情報化アドバイザーとして数多くの自治体のDX推進をサポートしている髙橋 邦夫さん(合同会社 KUコンサルティング 代表社員)が「私の経験の集大成」(髙橋さん)と語る2冊目の書籍をこのほど上梓しました。本書『全体最適の視点で効果を上げる 自治体DXの進め方~推進段階別の課題と対応~』(第一法規)のポイントや想いを髙橋さんがお伝えします。
「自治体改革支援」の豊富な経験を集大成
私は基礎自治体のひとつである東京都豊島区役所で29年間公務員として務めてきました。そのうち18年が情報システム部門での勤務という、公務員としては変わった経歴の持ち主です。
特に課長職6年目に訪れた新庁舎への移転(2015年)では、自治体としては珍しかった数々のICTツールを取り入れて、職員の働き方を大きく変える推進役を担いました。
後に一般社団法人日本テレワーク協会から、基礎自治体では初めてとなる「テレワーク推進賞優秀賞」を受賞するこの働きが総務省の目にも留まり、豊島区の職員でありながら「地域情報化アドバイザー*」として、他の自治体の情報化のお手伝いをする役割を頂くこととなりました。
地域情報化アドバイザー:ICTを利活用した地方公共団体等に対する豊富な支援実績や知見を持つ、総務省が認定した専門家
そして、地域情報化アドバイザーとして各地の自治体を支援すると、それまでは当たり前だと思っていた豊島区役所の仕事の進め方が自治体ごとに違っていることに気づきました。特に小規模自治体と言われる職員数が100名程度の自治体においては、情報システムの業務は企画課や総務課の一部として扱われ、専用の係がないこともあれば、担当職員が広報や防災といった他の仕事を兼ねているのも珍しくないという状況でした。
お世話になった豊島区役所に定年まで勤めて、区民のお役に立つのが、あるべき姿なのかもしれません。しかし、こうした状況を知り、これまでの経験と知識を活かして、困っている自治体のサポートをすれば、より多くの人たちのお役に立てる、そう考えて区役所を退職し、フリーのコンサルタントとして現在に至っています。2021年9月に『DXで変える・変わる自治体の「新しい仕事の仕方」-推進のポイントを的確につかみ効果を上げる!』(第一法規)という書籍を執筆したことで、省庁の担当者から声を掛けていただけると同時に、多数の自治体から話を聞きたいというリクエストを頂いています。
(関連記事:DXで変える・変わる 自治体の「新しい仕事の仕方」)
他にもCIO補佐官やCDO補佐官など特別職の非常勤職員として直接契約を交わすケースや、個人情報保護審議会の専門委員や庁舎建設の基本計画策定委員会など自治体が設置する会議体の有識者として登用されるケース、さらには行政改革アドバイザーなどとして自治体の企画部門の支援を行うケースなどがあります。こうした自治体の改革支援の経験は、デジタルに限らずさまざまな分野で活かせることを実感するとともに、今後は「エバンジェリスト(伝道師)」として次の世代に引き継ぎたいと思い、2冊目の著書となる本書『全体最適の視点で効果を上げる 自治体DXの進め方~推進段階別の課題と対応~』(第一法規)の執筆に取り組みました。
《本書の主な内容》 | - 第1章 Society5.0の到来で社会と自治体業務は変わる
- 第2章 DXに着手する・進める
- 第3章 DX推進を阻む課題を解決する
- 第4章 DXで「新しい仕事の仕方」「新しい社会」を創る
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自治体が「新たな行政サービス」を見出すためには…
早いもので豊島区役所を退職し、フリーのコンサルタントとして活動を始めてから5年が経過しました。区役所勤めの29年間も今振り返るとあっという間でしたが、その後の5年間はそれ以上に時間の経過が早く感じられます。コロナ禍においてその対応が目まぐるしく変わったことで、このように感じる人は多いかもしれません。私にとっては、このコロナ禍でデジタル化するメリットが多くの人に認知され、DXという言葉が広く国民に知れ渡ったことが、そう感じる大きな要因です。
自治体がデジタルを活用した新たな行政サービスを見出すためには、総務省が進める地域情報化だけでなく、経済産業省のキャッシュレス化や厚生労働省のテレワーク、文部科学省のGIGAスクール構想など複数の省庁が進める施策に目を配る必要があり、そのことによって現在デジタル庁が取り組んでいるデータ連携・データ活用へと発展していくことを、身をもって体験してきました。
デジタル化を進めるにはさまざまな障壁や課題を乗り越える必要があります。本書を手に取っていただくことが、その一助となることを願うとともに、障壁や課題を乗り越えた経験を次のライフステージに活かしてもらいたいと思っています。
課題解決につながるアプローチは必ずある
自治体DXはすべての職員が自分事として参加し、「変えよう」と思ってもらえることで実現に近づきます。自治体DXはひとりで進めることはできません。仲間をつくり、その輪を広げていくこと、すなわち「ソーシャルスキル」が求められるのです。
私は、総務省の地域情報化アドバイザーとして100を超える自治体を支援したことから、2022年の情報通信月間記念式典において総務大臣表彰を受けることとなりましたが、経済産業省のキャッシュレス化、厚生労働省のテレワーク、文部科学省のICT活用教育、さらにはJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)などのアドバイザーとしての支援を合わせると、その倍以上の自治体の支援を行っています。
自治体DXの担当者として「自分は孤軍奮闘している…」と思われた職員の方は、先ずは私に相談ください。複数のアドバイザーを務めていますので、課題解決につながるアプローチの方法がきっと見つかると思います。私が最初の理解者になります。そこから仲間を増やしていきましょう。デジタル化そのものを否定する人はもういないのですから。
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