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「“公務員の装い”のプロ」にインタビュー
服を味方につけて「自分らしく」働こう!

《新人職員向け》公務員の身だしなみのポイント

    インタビュー
    古橋 香織
    元東京都職員/イメージコンサルタント
    古橋 香織ふるはし かおり
    早稲田大学を卒業後、東京都庁に入庁。都職員時代は消費者行政や東京都議会議会局に勤務。在職中にイメージコンサルティングを学び、2020年1月に東京都を退職し独立。2021年11月に『公務員男性の服~普通の服で好印象・信頼・清潔感は出せる』(ぎょうせい)を上梓。最近は個人のイメージコンサルのほか「公務員×服装」に関する研修を多くの自治体で実施している。色彩検定1級、UC級所持。

    風薫る5月は瑞々しい若葉がぐんぐん成長する季節。新人職員のみなさんも業務に慣れ、庁内の雰囲気に馴染んだ頃なのではないでしょうか。周囲を客観視する余裕が生まれ始めるそんな時期に、意外とよく聞かれる新人職員の“ホンネの悩み”のひとつに「どんな服装をすればいいのか、よくわからない…」ということがあります。社会人にとっての装いは自分の印象をつくる重要なツール。ハズしたり、やり過ぎたりは避けたいところ。そこで、元都職員で「自治体職員の装合計画」を自治体通信Onlineに連載しているほか、著書に『公務員男性の服~普通の服で好印象・信頼・清潔感は出せる』(ぎょうせい)があるイメージコンサルタントの古橋香織さんに、新人職員のみなさんに押さえてほしい公務員の身だしなみのポイントを聞きました。自治体職員としての働き方論に発展した必読のインタビューです!

    「世間の目」は公務員の服装にも厳しい!

    ―今回は今年度入庁した新人職員のみなさんに向けて、初歩的な「公務員の身だしなみのポイント」を教えてください。

    入庁から1か月あまりが過ぎ、業務に少しずつ慣れ始めたのに反して、身だしなみについては正直なところ「何を着ていけばいいのか、よくわからない」と感じている新人職員のみなさんは少なくないんじゃないかなとお察しします。かく言う私も都職員時代に何を着ていけばいいのかわからなくてやらかしたことがあります(苦笑)。
    まず、役所の世界ではおしゃれは禁物。都職員時代に私自身も実感していたんですけど、公務員は他の職種よりも「世間の厳しい目」にさらされています。それは身に付けるものにまで及び、おしゃれな色味や柄を身につけようものなら一部の住民の目や所属全体の空気がピリッとしがちです。
    にもかかわらず、近年は役所でもオフィスカジュアルが推奨されています。「カジュアルに、でもおしゃれはダメ」ということなので、以前にも増して「よくわからない」と感じている公務員の方は多くなっているように思います。

    「他の職種よりも“世間の厳しい目”にさらされている公務員の服装は思っている以上にチェックされています」(古橋さん)

    ―新人らしく、しばらくは就活で使ったリクルートスーツで登庁する、というのはどうですか?

    それはオススメできません。リクルートスーツは通常のスーツとは仕立てが異なっていて“新人感”がすごく出ちゃうからです。「大切な役所の手続きを新人感丸出しの職員にまかせるのは不安」と感じる住民の方などもいたりして、不要な摩擦が起きたり、トラブルに巻き込まれることも。自分の能力とは無関係であるはずの服装が原因でそんな目に遭ったらやり切れないし、悲しいですよね。

    「正解はない」けれど

    ―確かに。では、どんな身だしなみをすれば正解なんですか?

    そういう発想がアウトなんです(苦笑)。身だしなみというと“正解”といったような型にハメて縛りつけるものと考えがちですけど、そうではないんですよ。
    身だしなみの基本は相手に寄り添い、敬意を払うこと。相手の立場によって臨機応変に変化すべきで、正解はあってないようなものなんです。

    ―寄り添って敬意を払う…。難しそうです。

    難しく考える必要はありません。住民の方など自分の仕事の相手は自分に何を求めているのか、その相手に自分をどう思ってもらいたいのかを考えれば「こういう方面のものを着ればいいんじゃないかな」といった方向性がざっくり見えてきますから。そうして相手の立場に寄り添い、敬意を払っているなら、自分らしさを取り入れたおしゃれを楽しんでもいいんです。

    「相手の立場に寄り添い、敬意を払うことが身だしなみの基本。それができているなら、自分らしさを取り入れたおしゃれをしてもいいんですよ」(古橋さん)

    公務員には「ふたつの見せ方」がある!

    ―身だしなみはセルフプロデュース(自己演出)の一環、ということですね。では、公務員の場合、どんなざっくりした方向性がありますか?

    自治体には多様な機能・役割がありますが、大まかに言って「ふたつの見せ方」にわけることができます。
    まず「権威的」に見せたい職場。条例や法制度の執行というカッチリしたイメージを出したい議会、税、会計などです。こうした部門の職員は襟のあるものを着たり、ベルトや靴も黒で統一したフォーマルなアイテムを多めに持ち、権威的に見せるアイテムをそろえたほういいですね。これがひとつ。

    ―もうひとつの見せ方を教えてください。

    もうひとつは、地域の方と接したり庁外の人たちに協力を仰ぐことが多いので「親しみやすくてフレンドリー」な見せ方をしたい部門。窓口、住民課、観光などですね。こういった職場ではオフィスカジュアルに寄せ切りましょう。たとえば、ワイシャツよりもポロシャツ、靴の色は黒より茶色。女性の場合は、襟のついたパリっとしたシャツだとシャープな印象になってしまうので、柔らかめのブラウスを着たり、カーディガンを羽織ったり。庁内に協力を求めることが多い職員課も「親しみやすくてフレンドリー」な見せ方をしたい職場です。
    このように「自分が所属している課の業務は権威的か、フレンドリーか」を考えれば自分がすべき装いの具体的なイメージがざっくり見えてくるはずです。

    自分の業務・職場はどっち!?

    ―ざっくりした方向性が見えれば選択肢がかなり限定され、シンプルに考えることができそうです。

    さらに、服装を決める前にその日の自分のスケジュールを思い出してほしいですね。フレンドリーな職場なのでオフィスカジュアルを着用している場合でも、たとえば「今日は市長レクがある」とか「住民説明会がある」となれば「じゃあジャケットを着ていこう」といったように相手の立場に寄り添った臨機応変な身だしなみができますから。

    ―なるほど。「自分は何をしている人か」「これから何をしようとしているのか」を考え方の根底において着るものを戦略的に決めよう、ということですね。

    そうです。「どんな服を着ていけば自分の仕事が円滑に回りそうか」という基準で服選びをしてほしいですね。
    付け加えて、心に留めておいてほしいことがあります。それは、服装で自分の評価がプラスされることはないけれど減点はあり得る、ということ。自分の能力とは関係ない身だしなみで減点されるのは悔しいし、自分にとってソンですよね。だからこそ、身だしなみにおけるちょっとした工夫はホントに大事なんですよ。世間の厳しい目にさらされている自治体職員のみなさんには、イキイキと自分らしく働くためにも「自分を守る盾」として服を味方につけてもらいたいですね。

    「自分らしさ」は諦めない!

    ―最後に、新人職員のみなさんにメッセージをお願いします。

    服には心の安定を保つチカラがあります。公務員の仕事全般について言えますけど、特に淡々とこなす日常業務では仕事を仕上げる過程で地味に心がすり減ることが多いです。それゆえ自分で自分の機嫌を取ってあげてモチベーションを高めることが大切。その特効薬となり、誰でもできることに「見た目を磨くこと」があるんです。
    ですから、100%攻めた服はオススメできませんけど(笑)自分を押し殺した服ばかりを選ぶのではなく、服装を通じて自分らしさを表現してもいいんだよ、ということは声を大にしてお伝えしたいです。

    「服には心の安定を保つチカラがあります!!」(古橋さん)

    「守破離」という言葉があります。最初は基本の“型”を習得し(守)、次に自分に合ったものを試行錯誤しながら型のなかに取り入れ(破)、最終的に型どおりではない“自分らしさ”を表現する(離)、といった意味です。仕事にも身だしなみにも「守破離」があります。型を学びつつも「自分らしさ」は絶対に諦めないでくださいね。



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    ■ 古橋 香織さんの著書紹介

    『公務員男性の服~普通の服で好印象・信頼・清潔感は出せる』(ぎょうせい)の表紙カバー

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