「経営学」とも向き合ったほうがいい理由
2010年ごろ、岩崎夏海さんが書かれた「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という本が大ヒットしました。お読みになられた方もおられると思います。
公立高校の野球部でマネージャーを務める女子高生が、ピーター・F・ドラッカーの名著「マネジメント」を読んだことをきっかけに部員の意識改革を進め、甲子園を目指すというストーリーです。
読み物としてとても面白かったうえに、ドラッカーの「マネジメント論」の一端を学べるという、大変お得な一冊でした。
ドラッカーは「経営学の父」と呼ばれる存在ですが、どうしてもとっつきにくい感じがありました。この本で、ぐっと身近な存在になった気がします。
前回、公務員は経済について知っていた方がいい、ということを書かせていただきましたが、併せて経営学に関しても一通り知っておいた方がいいように思います。
(参照記事:「経済知識」で政策運営はこんなに変わります)
自治体運営との共通点がいくつも
経済学と経営学は、字も一文字しか違いませんし、混同されて理解されていることもあるようです。簡単に言うと、経営学は「企業をはじめとする組織の運営について研究する学問」ということになると思います。
ただし、経営学の範疇は、「組織の運営について」とはされていますが、組織論や人事制度などだけではなく、マーケティングや競争戦略なども含めて考えるのが一般的だと思います。
当然のことながら、役所も組織です。
役所が最大の組織であるという地域もあるでしょうし、東京都庁に至っては職員数15万人を擁する超巨大組織です。どのように動かしていくか、理論立てて考えていく必要があるのは当然のことでしょう。
また、住民が求めるものが多岐にわたり、役所がカバーする範囲も広がっている中では、マーケティングの考え方が求められます。
地域の個性を打ち出していくためには、ブランド戦略も必要です。
こうしてみると、役所の仕事に経営学のノウハウを取り入れる要素はいくつもありそうです。
年代別オススメ経営本
では、経営学についてどのように学べばいいでしょうか。
何はともあれ、参考になりそうな本を読むことから始められてはいかがでしょう?
冒頭に挙げたドラッカーは、名著ぞろいとされていますから何を読んでも参考になるはずです。非営利組織について書かれた本もあります。
ほかに著名な学者もたくさんおられるので、どれを読めばいいか迷うと思いますが、そんな時は、「経営学 おすすめ 本」などと検索し、気になった本から読んでみるという手があります。
理論より、実践的な企業経営について学びたいと思う人には、パナソニック創業者の松下幸之助さんや「宅急便」をつくった小倉昌男さんといった伝説の経営者の本が参考になるでしょう。
私見ですが、年代別のオススメ経営本を以下に挙げてみました。参考にしていただければと思います。
若手職員
「ファクトフルネス」(ハンス・ロスリング/著)
中堅職員
「ザ・ゴール」(エリヤフ・ゴールドラット/著)
ベテラン職員
「日本でいちばん大切にしたい会社」(坂本 浩司/著)
ただし、知識ばかりを詰め込んで頭でっかちになることには注意したいところです。
評論家タイプになって斜に構え、後付けの批判ばかりするようになると、周りから煙たがられる存在になってしまいます。そうなってしまうと、せっかくの知識も宝の持ち腐れですから注意しましょう。
(続く)
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本連載のバックナンバー
第1回:「ケチケチ大作戦」で意識が止まっていませんか?
第2回:「経済知識」で政策運営はこんなに変わります
林 誠(はやし・まこと)さんのプロフィール
所沢市(埼玉)財務部長
1965年滋賀県生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。日本電気株式会社に就職。その後、所沢市役所に入庁。一時埼玉県庁に出向し、現在に至る。
市では、財政部門、商業振興部門、政策企画部門等に所属。役所にも経営的な発想や企業会計的な考え方も必要と中小企業診断士資格を、東京オリンピック・パラリンピックに向けて通訳案内士資格を取得。また、所沢市職員有志の勉強会「所沢市経済どうゆう会」の活動を行う。
著書に「お役所の潰れない会計学」(自由国民社)、「財政課のシゴト」(ぎょうせい)、「イチからわかる!“議会答弁書”作成のコツ」(ぎょうせい)、「9割の公務員が知らない お金の貯め方・増やし方」(学陽書房)「どんな部署でも必ず役立つ 公務員の読み書きそろばん」(学陽書房)。
<ブログ>
「役所内診断士兼案内士のヨモヤ」
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