「経営感覚」で公務員の仕事は変わるの?
「役所に経営感覚は必要か?」という問いかけから、これまで4回にわたって文章を書かせていただきました。
参照記事
第1回:「ケチケチ大作戦」で意識が止まっていませんか?
第2回:「経済知識」で政策運営はこんなに変わります
第3回:著名経営者や経営学の本は「役所の仕事」のヒントの宝庫
第4回:公務員生活と経済・経営学を橋渡しする“ちょっとしたこと”
私の意見として、
・役所にも公務員にも経営感覚は必要だけれど、ケチケチ作戦と経営感覚を間違っていないかしら?
・経営感覚もさることながら、経済の知識が必要ではないかしら?
・経営学についても知っておいた方がいいような気がするなあ
と述べさせていただきました。
では、経済知識や経営学をひと通り学んだら、仕事は大きく変わるでしょうか?
産業振興部門に所属しているなら変わるはずです。
景気動向が見えるようになれば、地域経済を見る目も変わるでしょうし、決算書が読めるようになれば、企業支援の進め方も変わるでしょう。
企画部門や財政部門に所属している職員にも、経済や経営学について関心を持っていただき、政策立案に活かしてもらいたいところです。
「視座のあるなし」が生む大きな違い
それでは、それ以外の所属の場合はどうでしょうか。
正直なところ、日々の仕事はあまり変わらないと思います。
住民からの申請や届出を懸命にさばいている所属や、教育や福祉の現場で奮闘している所属においては、業務の中で経済や経営学の知識を活用するケースはあまりないでしょう。
そうだとすれば、経済や経営学について学ぶことにどんな意味があるのでしょうか。
現在放映されている日本経済新聞の電子版TVコマーシャルに「人は、毎日触れるもので、視座を養う」というセリフがあります。
「視座」とは、物事を認識する時の立場、基本的な考え方、価値観、といった意味でしょう。
確かにそうだなあ、と思ってコマーシャルを見ています。経済や経営学について学ぶことは、自分なりの視座を構築していくうえでの土台固めになるのではないでしょうか。
国の政策の方向性、世の中の変化、それを受けた各自治体の政策―。経済や経済学の知識に裏打ちされた視座ができてくれば、見えてくるものが変わってくると思います。
なんとなく受け入れていたものが、意味を持って伝わってくるのではないでしょうか。日々の仕事の中でもちょっとした気づきが増えてくるはずです。
少しずつの変化が大変革を生む
改めて、最初の問いは「役所に経営感覚は必要か?」というものでした。その問いに対する回答は、もちろんYESだと思いますが、「経営感覚とは何か」ということをしっかり考えるべきだと思います。
また、経営感覚が必要だからといって、それがすぐに持てるものでもありません。経営感覚とは、ひとりひとりが“あるべき姿”を考え抜いていく中で、少しずつ磨かれていくものなのではないでしょうか。
経済や経営学の知識を蓄えても、経営感覚を意識しても、日々の業務に活かせる機会はあまりありません。しかし、多くの職員がしっかりした視座を持っている組織は、きっと強くなっていきます。
変化は少しずつかも知れませんが、いずれ大きな力になり、地域を変える原動力になるに違いありません。
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本連載のバックナンバー
第1回:「ケチケチ大作戦」で意識が止まっていませんか?
第2回:「経済知識」で政策運営はこんなに変わります
第3回:著名経営者や経営学の本は「役所の仕事」のヒントの宝庫
第4回:公務員生活と経済・経営学を橋渡しする“ちょっとしたこと”
林 誠(はやし・まこと)さんのプロフィール
所沢市(埼玉)財務部長
1965年滋賀県生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。日本電気株式会社に就職。その後、所沢市役所に入庁。一時埼玉県庁に出向し、現在に至る。
市では、財政部門、商業振興部門、政策企画部門等に所属。役所にも経営的な発想や企業会計的な考え方も必要と中小企業診断士資格を、東京オリンピック・パラリンピックに向けて通訳案内士資格を取得。また、所沢市職員有志の勉強会「所沢市経済どうゆう会」の活動を行う。
著書に「お役所の潰れない会計学」(自由国民社)、「財政課のシゴト」(ぎょうせい)、「イチからわかる!“議会答弁書”作成のコツ」(ぎょうせい)、「9割の公務員が知らない お金の貯め方・増やし方」(学陽書房)「どんな部署でも必ず役立つ 公務員の読み書きそろばん」(学陽書房)。
<ブログ>
「役所内診断士兼案内士のヨモヤ」
https://matoko.blog.ss-blog.jp/