本書執筆の背景
「若手の地方公務員の負担は、限界に近いのではないか」
自分が所属する自治体に限らず、広く自治体の方々と交流させていただく中、ぼんやりと不安を感じていたところに、出版社からお話しがあったのが本企画でした。
近年、国や県からの権限移譲が進められて業務の負担が増す一方、少子化・高齢化や公共施設の老朽化など地域には新しい課題も発生してきています。
一方で、行政不服審査法などの法律改正に伴い、行政運営の透明性はますます要請されており、その表裏として事務的な作業は増大傾向にあります。
役所の中に目を移せば、役所の成長期を支えた職員の大量の退職と、一時の新規採用の絞り込みに伴う中間層の減少により、職員の年齢層の構成にはいびつさが生じています。このような現状では、経験や技術の継承に支障が生じるだけではなく、職階に応じた職務分担もバランスを欠いたものになりかねません。
本書の「はじめに」にも書きましたが、職員の育成に余裕のない現場では、「育てるより育て!」の要請がますます強くなっているのではないかと思うところです。
これだけは知っておきたい!
ところが、書店の本棚を見てみれば、どうでしょう。役所の仕事について幅広く概要が掲載された、わかりやすい参考書が見当たりません。
採用後の研修や、仕事場で提供される資料も、「なんでかな?」「もうちょっと説明が欲しいな」という要望に十分に応えるものではないのではないでしょうか。
本書では、現役の公務員である執筆者の経験に基づいて、「知っておきたい最低限の知識と心構え」をまとめました。全体は、「授業」の標題で、6つの章立てを行っています。
・1時間目「公務員になったら」 地方公務員法の基礎知識、窓口対応など
・2時間目「組織」 仕事の種類、役所の組織、意思決定の方法など
・3時間目「もしものとき」 情報公開、訴訟、監査など
・4時間目「お金」 予算、会計事務、公有財産など
・5時間目「法律」 法令・例規、条文の読み方など
・6時間目「議会」 議員対応、議会の仕組み、議決の対象など
また、上記の内容に収まりきらなかった内容は、各章の終わりにコラムとして掲載させていただきました。うーんと唸ったり、クスっと笑ったりしていただけたら幸いです。
執筆者2人は、いずれも30歳前後になって千葉県内の市役所に入庁しました。それなりに経験を経たつもりであっても、入庁時は「役所独特のルール」に困惑したことを思い出します。みなさんも、専門用語が飛び交う職場に慣れないうちは、席に座っているだけでストレスであったのではないでしょうか。
本書を担当いただいた編集者さんには、「専門用語が並ばないように」「もっとわかりやすく!」と、随分と発破をかけられました。執筆にあたっては、読みやすく構成するとともに、図表を多くして理解の助けになるよう工夫しています。
迷いの道の案内人として
本書の編集者さんには、自身が職場の若手であることから、同じ立場である役所に入ったばかりの人が戸惑う状況をなんとか解決したいという思いがあったそうです。
その意を受けて、執筆者2人は、世にいう「スーパー公務員」にならなくても「誰もが仕事をしやすい」よう、みなさんが行く道を少しでも整えておくことが、ちょっとだけ先輩の私たちができることだという思いから本書を執筆しました。
本書の読者は役所に入ったばかりの方が多いでしょうが、ある程度経験を積んだ職員もご自身の知識の確認に、また、公務員の仕事に興味を持つ学生の方々も役所の仕事の理解のために本書を役立てていただけるものと思います。
掲載された各項目は「★」の数で重要度を提示しており、★3つのものは入庁したばかりの新人も理解しておきたい内容、★2つのものは3年目くらいまで、★1つのものは5年目くらいまでに理解しておきたい内容として目安をつけています。
どのように役立て欲しいか
仕事の根拠や目的を十分に理解していなくても、仕事場のマニュアルに従っていれば結構(?)仕事はできてしまうかもしれません。でも、本書に掲載した程度の知識があれば、仕事はずっと楽になるはずです。
そしてそれは、「公務員の仕事って、おもしろい!」と思っていただく契機にもなるものと思います。ひいては、みなさんのお仕事を通じて、地域のみなさんの暮らしの安心と充実につながれば、執筆者としてこれに勝る喜びはありません。
地方自治体を応援するメディア Heroes of Local Governmen(HOLG)からの転載記事です。
書籍「疑問をほどいて失敗をなくす 公務員の仕事の授業」
http://www.gakuyo.co.jp/book/b482160.html
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