職員研修の場としても活用可能
実務学会の大きな特徴は、個人会員資格を自治体職員として10年以上の実務経験がある研究者および自治体の常勤職員に限定している点。“自治体実務の機微”に通じている職員OBの研究者と、その機微のなかで大小さまざまな困難と向き合いながら地域課題の解決に取り組んでいる現役職員が集うことで、“本音ベース”のフランクな議論や情報交換を行うためです。
それにより、実務と乖離しない実践的な新しい理論構築と実務への最新理論の反映といった好循環をつくり、“回り道”せずに効率的かつ実効性のある政策立案や実務の実施を促進し、地方行政の充実と発展に貢献することを実務学会では目的としています。機関誌を発行(当面はオンライン発行)するほか、シンポジウムや出版活動などを通じて、同会の活動から生まれた新しい理論や研究課題を社会発信することも行います。
自治体や地方自治に関する研究機関も団体会員として入会でき、職員研修の場としても活用できます。
皮膚感覚
2020年3月に実務学会の設立総会が実施され、初代理事長には元大阪市職員の早稲田大学 政治経済学術院 教授の稲継 裕昭氏が、副理事長には元神奈川県職員の中央大学 法学部 教授の礒崎 初仁氏がそれぞれ就任。稲継理事長は「自治体職員としての皮膚感覚を持つ研究者と現役の職員が連携・協力して、自治体が抱えるさまざまな課題の解決策をともに考えられるような学会にしていきたい」と今後の抱負を表明しました。
理事・監事には地方自治体職員OBの大学教授等と現役職員が合計14名就任(理事長・副理事長を含む)したほか、現役職員などの個人会員71名および自治体などの団体会員2団体が設立時に参加し、実務学会の活動に自治体関係者から大きな期待が寄せられていることがうかがわれました。
自治体にフィードバック
稲継理事長は設立の動機について、事務学会のホームページを通じて「自治体職員としての長年の実務経験のある研究者が集まり、ますます複雑化する諸課題に直面する自治体やそこで頑張っておられる職員の方々を少しでもお手伝いすることができないか。逆に新しく直面する課題を現場から伝えていただき、それについて解決策を共に模索したり、現場発の政策革新を共有したりできないか。そういった思いでこの学会は設立されました」と語っています。
また、「厳しい財政状況下で職員数削減が進む一方、業務量の増大、内容の多様化・複雑化により、自治体職員が新しい政策に取り組む余裕がなくなってきています。研修機会も減少し、職員同士が自主的に学ぶ時間も少なくなっています。本学会は、このような状況を憂い、研究者会員が多様な研究成果を自治体にフィードバックすることを目指します」との目標を掲げています。
磯崎副理事長も実務学会のホームページ上で「人口減少とAI化が進む中で、日本の自治体は多くの課題に直面する一方で、それを担うべき職員は減少を避けられません。その結果、自治体がめざすべき目標を見失い、職員が余裕をなくして受け身の仕事に閉じこもるなら、いい地域づくりはできません。この学会は、自治体出身の研究者と現職の職員がフラットな場で議論し合うことによって、理論と実務をつなぎ、指針なき時代を切り拓く場になることをめざしています」との抱負を表明しています。
実務学会は「業務で直面する問題や施策・事業の進め方についてヒントや情報がほしい」「AI化、RPAが進む中での自治体行政がどう変わるかを考えたい」「研究会で報告したり、研究論文を書いて学会誌に載せたい」といった課題認識や問題意識をもっている自治体職員の参加を想定しているほか、「地方行政の充実・発展に向けた自主的な取り組みを応援したい」「学会とタイアップして政策づくりや職員研修の質を高めたい」「職員・スタッフを研究会等に参加させて、最新情報と人脈を得させたい」と考えている自治体等に参加を呼び掛けています。
年会費は現役自治体職員(一般会員)は5,000円、自治体(団体会員)はひと口1万円、職員OBの研究者(研究者会員)は7,000円。定例研究会を春と秋の年2回実施し、春の研究会では公開シンポジウムや分科会等を実施する計画です。 実務学会のホーページはhttps://j-lpa.org/。入会希望や問い合わせなどの連絡先は実務学会事務局メールアドレスinfo*j-lpa.org(*は@に置き換えてください)。