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《先進事業レポート》
地元大学生や高校生なども巻き込む

地域に変革を起こす! 山口市が取り組む「湯田温泉パーク」

    アメリカの有力紙「ニューヨーク・タイムズ」から「52 Places to Go in 2024(2024年に行くべき52カ所)」の世界第3位に選定された(参照:山口県観光連盟「山口県観光サイト~おいでませ山口へ」)山口県の県庁所在地・山口市が「湯田温泉パーク」の整備を進めています(供用開始予定2025年4月。市民が湯田温泉のある暮らしを楽しみ、さまざまな交流や創造的な取り組み等ができる公共空間を目指して設置するもので、地元・山口大学の学生や高校生などの若年層も巻き込み、さまざまな「仕掛け」を準備しています。一部の取り組みはプレオープンイベントとしてすでに実現し、“湯田温泉の新名物”として商品化された事例も! 従来のハコモノとは一味違う、山口市の先進事業をレポートします。

    イキイキ、ワクワク、ノビノビ

    「湯田温泉パーク」(以下、同パーク)は「あらゆる世代の市民や観光客が自由に利用し、心身の健康増進を図る」を活用コンセプトに、「あそびば(イキイキ遊ぶ)」「まなびば(ワクワク学ぶ)」「たまりば(ノビノビ過ごす)」として利用してもらうことをイメージしています。


    左は山口市と「湯田温泉パーク」の所在地。右は完成予想図および活用コンセプト(「『湯田温泉パーク施設運用方針』【改定】」より引用)

    同パークに設置される約800平米の全天候型の「大屋根広場」では施設が主催する事業に加え、多様なイベントやアフターコンベンション等の誘致を図り、年間を通じて集客。その流れを湯田温泉街全体に波及させることを目指します。

    「大屋根広場」(破線で囲んだ個所)と同広場における事業展開イメージ例。左上から時計まわりに、市民の日常における快適なくつろぎ空間、スケート体験会、キッチンカー祭りなどのフードイベント、大型ビジョンを活用したパブリックビューイング

    大浴場や貸切風呂と足湯を設置した「温浴施設」では朝6時からの早朝営業を実施し、市民が割安で利用できるようにもするほか、フリーWi-Fiやeスポーツにも利用できるPC等を備える「多目的スペース・多目的室」、飲食機能も持つ「温泉交流スペース」、「芝生広場・噴水広場」なども設置されます。
     
    昨年後半には、同施設完成後に展開される事業をイメージした、高齢者対象の足湯を活用した健康づくりプログラム「湯田温泉ヘルスラボ事業」、子育て世代の女性対象の託児付き「子育て女性の温活プログラム」、大学生等の若者を中心に企画・運営したクリスマスイベントなどのプレイベントを実施。今年度も多様なイベントを実施する予定です。
     
    ちなみに同パークでは湯田温泉の既設源泉を利用して温浴設備や暖房設備の消費エネルギーを大幅に削減することにしており、SDGsにも配慮しています。

     地元Jリーグチームとの共創が始動

    同パークを舞台に、山口市と山口県に本拠地を置くJ2所属プロサッカーチーム「レノファ山口FC」を運営するレノファ山口等との“コラボ”も実施されています。
    (関連記事:「山口市で実現する「Jリーグ×探究型修学旅行」《前編》」「同《後編》」

    新しい温泉街の活性化を目指す「湯田温泉パーク共創プロジェクト」がそれで、2022年度には県内外の企業や大学生、地元の湯田中学校の生徒などが参加し、同施設の整備を踏まえた湯田温泉の活性化に向けた新たな取組を考えるセッションを3回実施しました。

    2022年度の湯田温泉パーク共創プロジェクトでは、セッションを通じて創出された「みんなでパブリックビューイング」「湯田温泉コーヒー牛乳専門店Mill」「足湯シート」の3つのプロジェクトが生まれ、コーヒー牛乳プロジェクトでは商品化も実現しました。

    ◎みんなでパブリックビューイング

    「みんなでパブリックビューイング」の模様。湯田中学校サッカー部の生徒が企画・運営するパブリックビューイングを行うプロジェクトで、2023年3月19日に同中学校で実施(YouTubeチャンネル「【山口市公式YouTubeチャンネル】やまぐちゃんねる」より)。

    ◎商品化された「コーヒー牛乳プロジェクト」

    左は、湯田温泉の新しい名物とするプロジェクト「湯田温泉コーヒー牛乳専門店Mill」(右、画像はYouTubeチャンネル「【山口市公式YouTubeチャンネル】やまぐちゃんねる」より)で山口大学経済学部観光政策学科の2人の学生が発案したコーヒー牛乳をもとに商品化されたコーヒーベース「湯田milk珈琲」。湯田の地域おこし協力隊2人とともに、地元のカフェや地元企業、酪農家の協力のもとコーヒー牛乳を開発し、湯田温泉白狐まつりやレノファ山口FCのホームゲームでテスト販売を実施。地域団体などと連携しコーヒーベースとして商品化された。

    ◎足湯シート

    「足湯シート」の模様(2023年7月)。山口大学経済学部観光政策学科の学生による企画で、湯田温泉を多くの人に知ってもらうために、レノファ山口FCのホームゲームで足湯を体験しながら試合観戦してもらうもの(山口市ウェブサイトより)。

    地域企業との連携をより深め、企業共創を促進する取り組み「山口湯田温泉PARKリビングラボ」も実施しており、同パークを拠点に世代や立場を超えた多様な交流や地域に新しい価値を生む創造的な取り組みが着実に生まれつつあります。

    市担当者にインタビュー

    最後に、同パークの整備事業を担当する山口市 湯田温泉パーク整備推進室の田中 新治さんに想いなどをうかがいました。

    山口市 湯田温泉パーク整備推進室の田中 新治さん

    ―湯田温泉パーク整備事業(以下、同パーク)は単なる市民の憩いの場の提供だけではなく、 “攻め”の姿勢を感じます。設置目的を改めて教えてください。

    山口市では、これまで、 次世代を担う創造的な人材を生み出す場として 「YCAM (山口情報芸術センター)」 の整備や産業人材や産業交流を生み出す場として 「産業交流拠点施設」 の整備など、 本市の特性や地域資源を生かし、 まちの価値を高める魅力的な公共空間や都市空間の形成を進めてきました。
    そうした文脈のなかに同パークの整備や周辺整備はあり、湯田温泉の活性化だけではなく、地域や世代を超えた交流を通じた新たなつながりを築き、 市民の皆様の暮らしを豊かにする新たな交流創造の場として整備を進めています。それによって、湯田温泉の活性化はもとより、市民の皆様の暮らしの価値を高め、山口の新たな価値を創造していくことを目的としています。

    ―同パークの整備にあたっては大学生などの若い世代とも共創していますね。その狙いは?

    山口市の課題のひとつに、若者が気軽に集まって何かができる場所がとぼしかったということがあったんです。そこで地域全体の想いとして、若い人たちがいろんなチャンレンジができ、地域と若者をつなぐ場所として同パークを活用していこうという狙いがあります。
    レノファ山口さんをはじめ、さまざまな団体・企業とも共創していて、同パークを舞台にした多様なステークホルダーとのさまざまな取り組みを発信していくことが湯田温泉の新しい価値となり、温泉街の賑わいづくりにもつなげていきたいですね。

    右図は湯田温泉パークの事業展開の方向性(「『湯田温泉パーク施設運用方針』【改定】」より引用)。左は「『湯田温泉パーク施設運営方針』【改定】」の表紙

    ―ところで個人的なことをおうかがいして恐縮なんですが、田中さんは庁外での“課外活動”として高校生を対象に地域課題解決に向けた実践プロジェクト「やまぐちトップランナープロジェクト」(以下、トップランナープロジェクト)に参画していると聞きました。若い世代と地域をつなぐという点で、同パーク整備事業と共通するものがあるように感じます。

    市役所の業務で地域づくりを担当していたときから「若い人をどうやって地元を根付かせるか」「どうやって若い人の地元への愛着を高めるか」という問題に対して課題感をもっていました。トップランナープロジェクトは市民活動センターが母体になっている取り組みで、同パークの整備事業とトップランナープロジェクトを結びつけられないかなとの想いもあって参画しました。トップランナープロジェクトでの活動から同パーク整備の参考になったりヒントになることもありました。
    このプロジェクトに参画して大きな学びとなったのは「大人と若い世代が胸襟を開いて語り合うことが大切だ」ということ。大人と語り合うこと自体が若い人にとって新鮮なようです。「若い人って、意外と地域に対して熱い想いを持っているんだな」という気づきもありました。
    同パークの目的のひとつは多様な世代の交流促進。世代や立場を超えた交流から新しい山口市の魅力や価値が生まれるはずだと思っています。


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