「本当の目的」を達成するためのデザインのあり方とは?


「まちのファンを増やしたい!」―。まだまだ知られていない地域の良さ、たくさんの人に伝えたい“まちの魅力”の発信にシティプロモーション担当の自治体職員のみなさんは日夜知恵をしぼっていることと思います。そうしたなか、地元出身のロックバンドやモデル、声優、アニメ、漫画などとのさまざまなコラボを展開する等、注目されている自治体があります。相模原市です。どういった発想や方法論で一連の施策を展開しているのか、同市のシティプロモーション担当者で、通称「相模原市シティプロモーション公式SNS『中の人』」に、自身が実践している「自治体プロモーションにおけるデザイン戦略」を連載してもらいます。
はじめに
はじめまして。相模原市 市長公室 観光・シティプロモーション課 シティプロモーション班 主事「相模原市シティプロモーション公式SNS『中の人』」です。今回は市の魅力を幅広く発信するうえで、私が実践しているデザイン戦略をご紹介します。少しでも自治体職員であるみなさまの日々の業務のお役に立てたらうれしいです。
まずは私が働く相模原市を紹介します(以下、市提供画像を除き自治体通信Onlineさんの制作となります)。
相模原市の概要

相模原市は神奈川県の北部に位置する政令指定都市です。利便性の高い都市機能と川や山などの豊かな自然を併せ持ち、6つの鉄道路線や、圏央道・中央自動車道が通り都心からも約1時間でアクセスできる一方で、相模川をはじめとする河川と5つの湖が織りなす自然にも恵まれています。また、リニア中央新幹線の駅設置を見据えた橋本駅周辺のまちづくりや相模原駅北口地区における新たなまちづくりも進行しています。
相模原市シティプロモーション公式SNSを運用している「市シティプロモーション公式SNSの『中の人』」として相模原市役所で働く私は今年(2024年)で入庁8年目になります。今までに配属された部署は次のとおりです。

背景写真は相模原市役所庁舎。ひばりは相模原市の市の鳥
最初に配属された商業観光課では、桜まつりや花火大会など、市内の大規模催事の開催を支援する傍ら、市公式観光ガイドブックの企画制作や、地場産スイーツの振興事業を担当しました。
その後、市の様々な事業を各種メディアを通して全国に発信できるよう、庁内の広報の課題を洗い出し市全体の情報発信力強化に取り組む立場となりました。今の観光・シティプロモーション課に配属されてからは、IPコンテンツとのコラボ企画などの立案から実施、SNSを通した情報発信まで幅広く担当しています。
所属が毎年のように変わっているのですが、実際は、まつりやイベントをつくる立場、情報発信する立場、そして両方を兼ねる立場から、一貫して相模原のシティプロモーションに携わってきました。今回の記事テーマは「自治体プロモーションにおけるデザイン戦略」ということで、今まで私が担当した事業を、デザインにフォーカスして振り返りつつ、戦略設計とともに紹介していきたいと思います。
デザインは目的を達成するための手段
私は、事業のポスターやノベルティを制作する際、担当する事業の大小に関わらず、必ず自分の思考を整理する戦略メモ(下図参照)を作っています。
誰にむけて、何のために、何を作るのかを自分なりに整理し、上司と意識を合わせたうえでデザイナーさんに伝えることで、デザインが目的を達成するための手段として最大限機能するよう努めています。

お洒落なデザイン、格好いいデザイン、かわいいデザイン、全て素晴らしいデザインだと思います。しかしそれらのデザインは市の「本当の目的」を達成しうるのか。制作物の種別と納期をデザイナーさんに伝えてお任せしてしまうのではなく、担当者が予め戦略を設計し、明確に伝えることがなにより大事だと考えています。
それでは、実際に過去に私がメインで制作した例を挙げて紹介していきたいと思います。最初は「さがみはら推し土産スイーツ」パンフレットです。
「さがみはら推し土産スイーツ」パンフレット

「さがみはらスイーツフェスティバル」という名称を持つこの事業全体の目的は市内のスイーツを通して相模原市の魅力を全国に発信すること。パンフレット制作の目的は、市内選りすぐりのスイーツの存在を知ってもらい、スイーツめぐりという名の市内周遊に繋げることでした。
当時メインターゲットである若年層の女性に訴求する要素として、美しい写真がなにより重要と考えました。中身がどんなに魅力的でも、手に取って開きたいと思ってもらえないとその先に繋がりません。
そのためにまず、印象的な表紙で見る人の気持ち引き寄せなければと考えました。それぞれのスイーツの魅力、お店の想いを最大限引き出せる写真を提案できるのは、事業担当者である私に他なりません。撮影の瞬間こそプロカメラマンにお願いしたものの、撮影用の小物集めやレイアウト、写真の構図は自分で調整しました。
例えば、「津久井きなこのダックワーズ」であれば、地元の特産品・津久井在来大豆をメインで使用しているというこだわりがあるのできなこを添えています。

(相模原市提供画像を加工)
「パールギフト」では、ギフト感のあるパッケージと中の焼き菓子を同じ画角に収め、ギフトボックスの下にリボンを敷いた構図にすることによって、ギフトを開けた瞬間のわくわく感を表現しています。

(相模原市提供画像を加工)
掲載した全18種類のスイーツについて1つ1つこのように思考を整理し、各スイーツの魅力を最大限引き出す写真として表紙に全面的に打ち出し、ターゲットに訴求する戦略としました。
こちらからパンフレットの全ページをご覧いただけます。「さがみはら推し土産スイーツ」の魅力と、その裏の戦略を感じていただけたらうれしいです。
次に2023年5月の「Tour of Japan (ツアー・オブ・ジャパン) 2023 相模原ステージ」(以下、TOJ)開催にともない制作したステッカーをご紹介します。
※下のYouTube動画は相模原市のYouTubeチャンネル『CityOffice Sagamihara』より、TOJ 2023 相模原ステージの魅力をお伝えしたものです。
TOJステッカー

TOJ2023開催にともない制作したステッカー(左、相模原市提供画像)
TOJをきっかけに、ひとりでも多くの方に「相模原でサイクリングしてみたい」と思ってもらい、「相模原=サイクリング」というイメージを持ってもらえるきっかけになるようにという想いでデザインを検討しました。
コンセプトは「相模原サイクリングで風を感じよう」。どんな目的で、いつサイクリングするかによって、感じる風は異なると思うのです。レースなら激しい風、観光なら柔らかい爽やかな風、観戦中、駆け抜ける選手たちから感じる風もあるかもしれません。色々な風を楽しめるのは、きっとサイクリングの魅力のひとつ。そこに、相模原サイクリングで楽しめるものや見える風景、サイクリングコースがある中山間地域のシンボリックなものをぎゅっと詰め込み、単色で使う人やシーンを選ばないシンプルなデザインにまとめています。
また、サイクリストがマイボトルなどに貼り付けることを想定して、長く綺麗に使ってもらえるよう防水仕様にしています。
ステッカーデザインのこだわりの全ては相模原市シティプロモーションのnote に「これでもか」というくらいつづっているのでご覧ください。
次回は、昨年11月に公開したばかりの相模原市シティプロモーションサイト「さがみはらむすび」(下画像の左参照)と「さがみはらチアリングパートナー」ノベルティキット(同右参照)の戦略をデザインという切り口から紹介していきます。


(2点とも相模原市提供画像)
(続く)
■ 相模原市シティプロモーション公式SNS一覧

