出版の経緯
本書を執筆するきっかけは、多くの議員の方から聞いた「財政は難しい」という声でした。議員として行政運営をチェックし、市民生活を支える政策提案を行うには、財政の知識が欠かせません。しかし、専門用語や仕組みが複雑で、「理解しづらい」「つい後回しにしてしまう」と感じている方が多いようです。
さらに、議員向けの研修も定期的に行われていますが、「その場では理解できた気がしても、実務に戻るとすぐに忘れてしまう」という声も耳にします。私自身、市役所職員として研修を受けた際に、似たような経験をしました。研修で学んだ知識はその場では鮮明でも、数日後には曖昧になり、十分に活用できなかったことをよく覚えています。
財政課に配属された当初、私も専門用語の多さや仕組みの複雑さに戸惑いを感じました。しかし、実務を通じて、自治体財政の基本的な仕組みは「ポイントを絞れば意外とシンプル」だと気づきました。この経験から、財政を初めて学ぶ方がスムーズに理解を深められるよう、本書を執筆しました。本書の目的は、「分かりやすく」「実務に即した形」で議員活動に必要な最低限の財政知識を提供することです。
本書の構成と特徴
本書は、忙しい議員の皆様が効率的に自治体財政の知識を学べるよう、必要なポイントを厳選して構成されています。それぞれの章では、実務に直結する内容を中心に取り上げ、読みやすさと実用性を両立させることを意識しました。
1. 自治体財政の基礎
歳入と歳出の基本構造を「家計管理」に例えてわかりやすく解説しています。「収支の分類」や「用語の意味」といった基礎知識を身につけることで、議会資料の内容がスムーズに理解できるようになります。難解な概念を避け、初心者の方にも抵抗なく読み進めていただけるよう工夫しました。
2. 決算カード・予算書の読み方
自治体の「通信簿」とも言われる決算カードについて、特に注目すべき指標(経常収支比率、積立金現在高など)をピックアップして解説しています。また、予算書についても、「どの項目を見るべきか」「それがなぜ重要なのか」を具体例とともに示しました。実際の議会活動にすぐに役立つ実践的な内容を心がけています。
3. 財政指標の実務的理解
財政力指数や健全化判断比率といった指標を、議員活動でどう活用するかを中心に解説しています。「知識を持っているだけ」ではなく、「それをどのように議会で活かすか」に重きを置きました。また、その他にも、私が実務経験を通じて感じた重要なポイントを盛り込み、自治体運営をより深く理解するためのヒントを提供しています。
一緒に活用していただきたい教材
本書の内容をさらに深めたい方のために、「ゼロから学ぶ自治体財政講座」という動画講座を作成しました。この講座では、本書に記載されている内容を含め、自治体財政に必要な知識を網羅的に学べる構成となっています。
動画形式で視覚的に学べるため、特に自治体財政に苦手意識がある方でも理解が進みやすいのが特徴です。また、具体的な事例を交えながら、本書で学んだ知識を実務でどう活用すればよいかを詳しく解説しています。詳細は、私のX(旧Twitter)アカウントに掲載していますので、ぜひ本書と併せて動画講座もご活用ください。
最後に
議員の皆様が自治体財政をしっかり理解することは、市民の生活を支える政策提案や行政運営の監視を適切に行うために欠かせません。本書は、財政という専門性の高いテーマを、初心者でも「手軽に」「実践的に」学べるよう意識して執筆しました。
自治体財政の基本は、専門知識がなくても理解できる部分が多くあります。そのため、最初から「難しい」と身構えず、気軽に本書を手に取ってみてください。「財政は意外とシンプルだ」と感じていただけたなら、これ以上の喜びはありません。
本書を通じて得た知識を基に、議会での議論をさらに深め、地域の未来を支える重要な役割を果たしていただければ幸いです。皆様の活動が、市民と自治体のより良い関係を築く力となることを願っています。
今後も、議員活動を影ながら応援させていただきます。