放課後児童健全育成事業とは
放課後児童健全育成事業とは、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校に就学している児童に対し、授業の終了後等に小学校の余裕教室や児童館等を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図るものです。事業推進の拠点となるのが放課後児童クラブです。
厚生労働省の調べによると、平成30年5月1日現在の登録児童は123万人を超え、全国で25,328ヶ所で設置されています。内訳は、自治体公営が8,740か所、民営が16,588か所となっています。
放課後児童クラブは、児童が健康で安全に過ごせる場所として、情緒への配慮も含めた見守りが行われるほか、宿題に取り組んだり、積極的に遊べるように促しながら、自主性、社会性、創造性などを育めるような環境を整備します。
児童福祉法に基づいた放課後児童健全育成事業運営(放課後児童クラブ運営)のガイドラインは「最低基準」ではなく「全国的な標準仕様」として作成されたもので、放課後児童クラブの運営はガイドラインの最低基準を満たすという視点ではなく、より活動内容を充実させたり、対応の質を高めたりする視点での努力が大切だとしています。
次に、さまざまな工夫が行われている放課後児童クラブの事例を紹介します。
事例①【世代間交流】都城市(宮崎県)
都城市(宮崎県)の上長飯エンゼル児童クラブでは、地域の人たちとの連携によって放課後児童クラブ運営が行われています。指導員だけでなく、児童館の委員、地域の高齢者、高校生や大学生のボランティアなどにも働きかけて、積極的な協力を得ながら進められているのが特徴です。
高齢者に教わりながらの梅干しづくりや、高校生や大学生とのクリスマスパーティー、スタンプラリー、ミニゲームなど、さまざまな遊びを通じて世代間交流が盛んに行われており、多様な人たちと関わる環境を子どもたちに提供することで、心豊かな人間性を育んでいる事例です。
事例②【分割・新設を推進】北九州市(福岡県)
北九州市(福岡県)では、希望児童が全員登録できるよう、放課後児童クラブの分割・新設を推進しています。高学年児童の指導についても、研修などを行うことで対応能力の強化と充実が図られています。
運営については各学校、自治体、民生委員、PTAなどの関係者と十分な話し合いが行われ、それぞれの学校や地域にフィットした運営も実現しています。
事例③【児童館と連携】仙台市(宮城県)
仙台市(宮城県)より委託を受けた「NPOみやぎ・せんだい・子どもの丘」が地区の児童館で運営している岩切児童クラブは、児童館活動とクラブ運営を連携させ、年間を通して多様な行事を開催しながら、子どもとその保護者を支援に取り組んでいます。
すべての取り組みを子ども・指導員・保護者の3者が一緒になって進めていくことが重視されているのも特徴です。対象は小学校3年生までの児童で、4年生以上の児童は保護者の許可があれば下級生の面倒をみたり、行事への参加や協力ができます。
事例④【多彩な活動】那覇市(沖縄県)
那覇市(沖縄県)の若狭児童クラブは隣接した放課後子ども教室と連携しながら運営されています。那覇市の放課後子ども教室で行っている学習支援やエイサー、三線、大正琴、昔遊びなどの活動に参加できるのが特徴です。
また指導員は曜日分担制になっており、体育指導員、地域民生委員、地域支援ボランティアが若狭児童クラブの活動にかかわることで多彩なプログラムの提供が行われています。
事例⑤【特別支援学級の児童と一緒に】宇都宮市(栃木県)
宇都宮市(栃木県)の晃宝小学校に設置されている放課後児童クラブ「どんぐりクラブ」では、障がいを持つ子どもも含めた放課後児童クラブを運営しています。放課後児童クラブの指導員と放課後子ども教室のコーディネーター、学校の先生、特別支援学級の先生、養護の先生、保護者みんなの連携で障がいのある子も毎日温かくサポートしています。
晃宝小学校には放課後児童クラブの「どんぐり」と放課後子ども教室の「ピノキオ」 があります。放課後子ども教室の「ピノキオ」での活動を希望した子ども たちは、まずはここで楽しく遊んで過ごし、ピノキオ」の終了時間になると「どんぐり」の指導員が迎えに行きます。子どもたちは、それぞれの活動の楽しさを 吸収して、豊かな放課後の時間を過ごしています。
<参照元>
厚生労働省「放課後児童健全育成事業について」「放課後児童クラブ運営指針解説書」「放課後児童 実践事例集」 等