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AI・ロボティクスを含めたICTの活用の進め方について【自治体事例の教科書】

AI・ロボティクスを含めたICTの活用の進め方について【自治体事例の教科書】

日本では少子高齢化が進み、今後の生産年齢人口が減少する中で、地方自治体においても人材不足が懸念される状況です。地方自治体が住民生活に不可欠な行政サービスを提供し続けるには、行政職員でなければできない業務に注力し、住民へのきめ細やかで高品質なサービスを提供する必要があります。そのためには、住民の利便性の観点からオンライン化を進めるとともに、業務の自動化を進めることが欠かせません。そこで、総務省では標記研究会を設け、地方自治体における業務プロセス・システムの標準化を進めています。AI・ロボティクスなどICT活用について、実務上の課題の整理と今後の取り組みについて解説します。

【目次】
■AI・ロボティクスを含めたICT活用の現状と方向性
■業務プロセス・システムの標準化の進め方
■地方自治体のAIの導入状況について
■地方自治体のRPAの導入状況について
■AI・RPA等のICTにおける先進事例の周知について
■自治体行政スマートプロジェクトについて

AI・ロボティクスを含めたICT活用の現状と方向性

地方自治体におけるICTの活用の現状は次の通りです。人口が一定規模以上の地方自治体では導入が進んでいる傾向があり、その多くは実証実験段階で無償の導入となっています。そのため、人口の少ない地方自治体での導入促進と、実装段階における価格面の導入のしやすさをいかに担保するかが課題です。

今後の取り組みの方向性は以下の通りです。地方自治体が取り組みやすい部分については直ちに導入可能との共通認識のもと、すでに導入している地方自治体の導入事例を参考に、積極的に導入を進めるよう求められます。国は全国の導入事例を周知することを徹底し、総務大臣メールや資料配布、説明会などを通じて周知していきます。直ちに導入が難しい部分、例えば、住民や企業にとっても行政サービスの利便性が向上する部分や、地方自治体行政の課題を抱える部分については、今後の検討と環境整備が不可欠です。

数値予測やニーズ予測などはAI技術の活用可能性がある分野や機能です。現段階で開発や導入が進んでいない部分については、各府省と地方自治体、開発を手掛ける企業との検討や開発促進が求められます。また、安価に導入ができるよう、地方自治体で共同利用できる環境を整備していくことも必要です。

人材面の方策も不可欠であり、CIOスタッフの強化をはじめ、幹部職員や一般職員などすべての職員におけるITリテラシーの向上、地域情報化アドバイザーの活用促進も図っていきます。実現すべき姿は、各行政分野において、全国的なサービスとして複数のベンダーによりAI・ロボティクス等のアプリケーションが提供されること、そして製品価格を安価に保つため、複数社による競争環境を確保することです。

業務プロセス・システムの標準化の進め方

現状は地方自治体がシステムを独自にカスタマイズする傾向が見られます。独自機能で使いやすいように思えるものの、カスタマイズをするための導入コストや検証、実装といった手間や時間がかかり、各地方自治体にとってはひとつの負担です。また、住民は引っ越しなどで利用する地方自治体が異なることも多く、複数の地域に支社や営業所を持つ企業も多いため、地方自治体ごとに機能やできることが異なると、わかりにくく不便です。

今後の取り組みとしては、各府省と連携しつつ、地方自治体とベンダーなどの関係者が意見を出し合って共通化に向けた話し合いを行い、各行政分野のシステムの標準化を目指すことが求められます。国による整備や参考となる地方自治体のシステム、市販のサービスなどを用い、一元的に標準システムを調達したり、各地方自治体に配布したりする方法も考えられますが、その場合にはシステムが1社独占となってしまうことに留意しなくてはなりません。

そこで、自治体クラウドは、引き続き推進するとともに、ベンダー標準に準拠したパッケージを作成していきます。地方自治体としては、既存のシステムの更新時期に合わせて標準準拠システムの導入を図っていくとともに、全国的に同一レベルの行政サービスを提供できる標準システムを導入した以上は、カスタマイズは原則として行わないことが大切です。

実現すべき姿は各行政分野において、全国的なサービスとして複数のベンダーがシステムのアプリケーションを提供する体制を整えること、製品価格を安価に保つために複数社による競争環境を確保すること、そして、住民や企業など行政サービスの利用者の利便性向上を図ること、地方自治体の負担の最小化を目指すことが重要です。

地方自治体のAIの導入状況について

総務省において、全都道府県・市区町村を対象に行った平成30年11月1日時点の調査では、導入している機能として多かったのは次の通りです。都道府県についてはAIを活用した議事録作成など音声認識機能、市区町村では住民からの問い合わせに対応するチャットボットを活用しているケースが半数以上を占めました。導入している行政分野については、市区町村では児童福祉や子育て、健康・医療など福祉分野での活用事例が多く、保育所の利用調整へのAI活用や市議会や会議等における議事録のAIによる文字起こしなども活用が進んでいます。

地方自治体のRPAの導入状況について

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入している分野については、都道府県・市区町村ともに行革や情報担当を所管している部局における実証的な導入が主です。一方で、福祉部門や税務部門で実装が進められている地方自治体もあり、超過勤務実績の入力業務、通勤手当調査業務や保育施設利用申込書入力事務、児童手当入力事務、ふるさと納税受付・データ処理業務などで利用が進んでいます。

AI・RPA等のICTにおける先進事例の周知について

地方自治体においてAI・RPA等のICTの導入が効果的に進められていくよう、国では既存組織の導入事例を参考資料として周知することになりました。そのひとつが、情報をすぐに届けることができ、すぐに閲覧が可能な総務大臣メール「Society5.0時代の地方」です。

総務大臣の下に「地域力強化戦略本部」を立ち上げて、具体的なICTの実装例や導入支援策を各地方自治体の首長とメールで情報共有を図っていきます。単にメールを送信するのではなく、地方からも優良事例や必要な施策を提案してもらうなど、双方向かつ持続的な情報交換と情報共有、取り組み事例の周知に役立てることを目指します。

平成31年1月25日に第1号、2月28日に第2号を配信しており、その中では次のような地方自治体の例を配信しました。
・神奈川県綾瀬市における自治体翻訳システムによる自治体窓口業務の効率化
・福井県永平寺町におけるAIを活用した観光案内による業務の効率化事例
・埼玉県さいたま市におけるAIによる保育所利用調整業務の省力化
・茨城県つくば市におけるRPAによる業務プロセスの自動化
・愛知県一宮市によるOCR-RPAによるシステム入力業務の省力化

自治体行政スマートプロジェクトについて

自治体行政スマートプロジェクトの目標や成果イメージは団体規模別標準モデルの構築です。住民基本台帳システム・税・福祉など地方自治体の基幹的な業務について、人口規模ごとに複数団体でグループを組み、グループ内で団体間比較を実施し、人口規模ごとに業務の標準化の検討を図っていく必要があります。

業務改革に取り組む方法としては、業務体系の整理・見える化、比較調査・分析の実施、類似団体との意見交換が推進されます。人口規模ごとに実践モデルを形成し、AI・ロボティクス等を導入可能な業務プロセスを検証・把握していく流れです。その上で、AI・ロボティクス等を導入した業務フローを定式化し、業務に最大限AI・ロボティクス等を導入することで、できる限り業務の自動化を進め、導入による効果を検証していきます。

〈参照元〉

内閣府_第17回 国と地方のシステムWG御説明資料
(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg6/190315/pdf/shiryou2-4-1.pdf)

内閣府_自治体行政スマートプロジェクト
(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg6/190315/pdf/shiryou2-4-4.pdf)

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