空き家対策総合支援事業とは
空き家対策総合支援事業は「空家等対策の推進に関する特別措置法」(平成27年施行)における財政面での支援措置の一つです。条件を満たす市区町村の対象事業に対して、定められた割合での補助を実施します。空き家対策総合支援事業と似た財政面での支援措置に「社会資本整備総合交付金」がありますが、空き家の活用・除却における国の効率的で重点的なサポートを実施する観点から、別枠で設置されたものです。平成30年には空き家対策総合支援事業に対し、27億円の予算が計上されました。
空き家対策が求められる背景と措置の実績
・空き家の現状
日本国内における空き家数は、この30年間で増加し続けています。総務省の「住宅・土地統計調査」を見ると、1988年(昭和63年)の空き家数が394万戸であったのに対して、2018年(平成30年)の空き家数は846万戸と、2倍以上の増加が見られます。「二次的住宅」「賃貸用又は売却用の住宅」など、ある程度の利用や適切な管理が期待できる建物を除いても、空き家数が増加し続けていることに変わりはありません。平成26年10月の段階で、400を超える自治体が空き家条例を制定したことからも、多くの自治体が空き家を問題視していることがわかります。そのような中で平成27年5月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が全面施行。空き家対策の基礎となるフレームワークが整備されました。
・空き家の定義
「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、空き家が明確に定義されたほか、特に早急な対処が求められる空き家を「特定空き家等」と定義しました。以下、それぞれの定義となります。
【空家等】
空家等は、居住や使用が常態でない建物、付属の工作物、敷地を指します。(国・地方公共団体の所有、管理するものは除外されます)
【特定空家等】
特定空家等は、立ち入り調査ほか、指導、勧告、命令を経て代執行の措置が可能な空き家です。特定空家等は、以下のような状態の空き家が該当します。
① 倒壊など保安上の危険が著しい
② 衛生上有害となるおそれが著しい
③ 適切な管理が実施されず景観を著しく損なっている
④ その他(放置が不適切であると判断された空家等)
・特定空家等に対する措置の実績
平成27年の「空家等対策の推進に関する特別措置法」の全面施行以降、特定空家等に対する措置は増加。各市区町村が積極的に空き家問題に取り組んでいることが分かります。以下、全国における特定空家等に対する代執行の実績件数です。
【平成27年】
1件(略式代執行:8件)
【平成28年】
10件(略式代執行:27件)
【平成29年】
12件(略式代執行:40件)
【平成30年(上期)】
6件(略式代執行:14件)
補助対象市区町村
市区町村が空き家対策総合支援事業の補助対象となるためには、空家対策特別措置法に基づき、以下の条件等を満たす必要があります。
①「空家等対策計画」の策定
空家対策特別措置法の6条により、市町村は国の基本指針に基づいた空家等対策計画を策定します。平成29年10月1日の段階で、447の市区町村が策定済みとなっています。
②「協議会」の設置など、地域の民間事業者等との連携体制の構築
空家対策特別措置法の7条により、市町村は協議会を設置します。
補助対象事業
空き家対策総合支援事業の対象となるのは、各市区町村に策定される「空家等対策計画に基づく事業」です。具体的には以下のような事業において、費用の補助対象となります。
・空き家の活用
滞在体験、文化交流、体験学習、創作活動などを利用目的とするための住宅等の取得、移転、増改築など。民間事業者等が実施する事業については、地域コミュニティ維持・再生を目的とし、10年以上活用されるもの。これらの目的のため、空き家の改修等にかかる費用が補助されます。
・空き家の除却
地域環境の整備・改善を目的とし、空き家を解体する場合、これにかかる費用が補助されます。ポケットパークや防災空地などが除却後の活用としてイメージされています。
・空き家の実態把握
空家対策特別措置法の9条により、市町村長は法律規定の限度内での「空家等への立入調査」が可能です。この他、空家等対策計画の策定において必要な空き家の実態調査などが行われる場合、これらにかかる費用が補助されます。
・空き家の所有者の特定
空き家の所有者を特定するためにかかった委託費・通信費・交通費・証明書発行閲覧費などの費用が補助されます。
・関連する事業等
周辺の建物の外観整備などにかかる費用が補助されます。
事業主体ごとの負担割合(補助率)
空き家対策総合支援事業における費用の補助率は、空き家の活用か除却か、さらに事業主体が地方公共団体か民間かによって変化します。以下、空き家対策総合支援事業における費用の補助率です。
【空き家の活用】
事業主体:地方公共団体
・国費:1/2が交付対象限度額
・地方公共団体: 1/2が交付対象限度額
事業主体:民間
・国費:1/3が交付対象限度額
・地方公共団体: 1/3が交付対象限度額
・民間:1/3
【空き家の除却】
事業主体:地方公共団体
・国費:2/5が交付対象限度額
・地方公共団体: 2/5が交付対象限度額
・民間:1/5
事業主体:民間
・国費:2/5が交付対象限度額
・地方公共団体: 2/5が交付対象限度額
・民間:1/5
空き家の活用・除却事例
【空き家の活用事例】
・石川県輪島市
石川県輪島市では、空き家の改修を通じて、地元住民のコミュニティの維持・再生利用方法が検討されました。改修後、地元住民向けの生涯学習のスペース、地元障害者のための短期滞在型施設として利用されています。
・福井県越前町
福井県越前町では、空き家の改修を通じて、田舎暮らし体験・地域住民とのコミュニケーションの場としての活用が検討されました。改修後は、次世代の農林漁業の担い手の育成の場のほか、移住者の受け入れやコミュニケーションの場として利用されています。
【空き家の除却事例】
・秋田県横手市
秋田県横手市では、空き家の除却を行い、夏期はパーキング、冬期は公共用地として雪よせ場などとして活用されています。横手市が土地と建物の寄付を受け、空き家を除却。住環境における安全確保と同時に、生活環境の利便性向上を実現しました。
・熊本県天草市
熊本県天草市では、老朽化し、倒壊などにより道路や周辺の家屋などに危険が及ぶ可能性のあった家屋を除去。天草市では空き家における事前調査を実施しており、倒壊の危険などの懸念される「老朽危険家屋」を判定し、その解体・除去に対して市が経費の一部を補助しました。