バイオマス発電とは
バイオマスは動植物などから生じる生物資源の総称と定義されます。具体的にいえば、木くずやおがくず、野菜かす、家畜の糞など農林水産業の分野から生じるものや、食品工場や家庭で排出される油かす、飲食店や食料品店から出る売れ残りの総菜やパンなどの食品残渣まで幅広く含まれるものです。
こうしたバイオマスを直接燃焼したり、ガス化したりして発電する方法をバイオマス発電と呼んでいます。
バイオマス発電によりエネルギーを生み出すための技術の開発により、現在ではさまざまな生物資源が有効活用できるようになりました。
1997年12月に京都で開催された地球温暖化防止京都会議(COP3)で採択され、2005年2月16日に発効した京都議定書では1990年における6種類の温室効果ガス総排出量を基準に、その後20年から24年間、つまり、2008年~2012年の5年間に、先進国全体で少なくとも5%の削減を目指しました。
この京都議定書において、バイオマス発電は二酸化炭素を新たに排出しないエネルギーとして位置づけられています。木材など植物をベースにする燃料であるからです。木や植物は光合成により二酸化炭素を吸収し、酸素を排出、供給します。そのため、エネルギーを取り出すために木材を燃焼しても、それまでに産出した酸素と相殺されるため、バイオマス発電は二酸化炭素を新たに排出しないクリーンエネルギーとして位置づけられたのです。
ですから、バイオマス発電の割合を増やせれば、温室効果ガス総排出量の削減目標をクリアしやすくなります。
もっとも、化石燃料による火力発電やメガソーラーによる太陽光発電などに比べると、バイオマス発電は小規模な発電となるケースが大半です。狭い範囲の地域コミュニティや1つの施設だけで使うための電力を賄う程度の発電設備となることが多いのが現状です。
一方で、より集約的で規模の大きなバイオマス発電を目指した取り組みや技術開発も行われています。
バイオマス発電の特徴や課題
バイオマス発電は、これまではゴミとして処分されていた廃棄物を燃料として活用できることから、廃棄物の減少と再利用ができ、循環型社会の構築にも役立ちます。
他の再生可能エネルギーにはない特徴も持ち合わせています。それは、農山漁村の活性化という役割です。家畜排泄物や稲ワラ、林地の残材など地方社会の農産漁村で生み出される廃棄物をバイオマス発電に利用すれば、エネルギーの利用コストが減らせ、地域経済の活性化などにも役立つことが期待されています。
バイオマス発電は都市部でも有効活用できます。たとえば、地域の飲食店や食料品店が協力し合い、売れ残りや食べ残しの食品残渣を回収してバイオマス発電でエネルギーを生み出すことが可能です。
1つの事例として、食品工場で製造する豆腐や麺、パンなどの製造過程で発生する生ゴミに加え、排水処理施設から排出される汚泥を組み合わせてメタンガスに変換し、電気や熱エネルギーを生み出し、工場内で再利用している例があります。
バイオマス発電の課題は、バイオマス資源が広い地域に分散していることから、収集・運搬・管理にコストがかかり、小規模分散型の設備になりがちで、発電量が必ずしも期待できない点が挙げられます。そのため現状は、地産地消のエネルギー、小さなコミュニティや1つの施設などで循環する完結型エネルギーという位置づけにとどまっています。
日本ではエネルギー供給のうち化石燃料が8割以上を占めており、そのほとんどを海外からの輸入に依存しています。エネルギーの安定供給の観点からも国産のエネルギーとして、バイオマス発電を含め、再生可能エネルギーの果たす役割は大きなものがあります。2017年における再生可能エネルギー比率は約16%ですが、再生可能エネルギー比率をさらに高めていく必要がありそうです。
バイオマスの熱利用
バイオマスは発電のほかに熱利用もできます。バイオマス資源を直接燃焼させて、廃熱ボイラーから発生する蒸気の熱を利用できるほか、バイオマス資源を発酵させて発生したメタンガスも利用することが可能です。石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料資源が乏しい日本において、エネルギー自給率を高めるために注目できる方法です。
たとえば、林業が行われている地域で間伐材などを活用したペレット炊きボイラーをつくり、地域の温水プールや浴場施設などの主熱源にしている事例があります。
また、家畜の糞など畜産系のバイオマスを集積、発酵させ、発酵するときに出るメタンガスを発電や熱利用など複数のエネルギー源として活用している事例もあります。発電余剰熱を地域にあるチョウザメ飼育水槽や、マンゴー栽培用のビニールハウスを温めるエネルギーとして有効活用している事例です。多額のコストがかかる温室運用の低コスト化にも役立っています。
バイオマスによる燃料製造
バイオマスからバイオエタノールやバイオディーゼル燃料などの液体燃料を製造し、地域で供給している事例も登場してきました。地域循環型液体燃料として、家庭の使用済てんぷら油を回収してバイオディーゼル燃料を作り出し、軽油と混合したバイオ燃料混合軽油を地方自治体の公用車や地元バス会社、物流車両の燃料として利用している事例もあります。