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地方創生関係交付金について・地方創生事業・実施事例(地方へのひとの流れ)【自治体事例の教科書】

地方創生関係交付金について・地方創生事業・実施事例(地方へのひとの流れ)【自治体事例の教科書】

日本では、平成26年に制定された「まち・ひと・しごと創生法」に基づいた、地方創生事業が各地で行われています。こうした取組の背景には、日本の抱える少子高齢化社会による人口減少問題、それに伴う生産人口の減少等の課題が挙げられます。国と地方が協力して連携する地方創生事業によって、地方への流れをつくり、地域産業を活性化させる等の施策を講じることで諸問題を改善へ導くため、各地方自治体は創意工夫しながら取組を行っています。次に、各自治体のそうした事例を紹介します。

【目次】
■事例①「地域文化のプロモーションによる交流人口拡大」釧路市(北海道)
■事例②「観光地としてのまちづくり」京都府
■事例③「百人一首かるたコンテンツを活用した観光誘客推進事業」大津市(滋賀県)

事例①「地域文化のプロモーションによる交流人口拡大」釧路市(北海道)

釧路市では、交流人口拡大のため「北海道くしろ地域・東京特別区交流推進事業」を実施しました。釧路地域は、地域特有の自然や豊富な食資源、アイヌ民族等の歴史・文化的魅力を有しており、雄大な自然環境に恵まれています。北海道に位置するため夏は涼しく過ごせる気温であり、温泉や森林浴、その他さまざまな体験型観光メニューなど、地域資源を活用した体験型観光やヘルスツーリズムが盛んな地域でもあります。とはいえ、首都圏における釧路地域の認知度は必ずしも高いとは言えず、交流人口の拡大に向けて、首都圏をターゲットとした効果的なプロモーションを行う必要があります。そこで、交流推進員を東京都内に配置し、北海道町村会と東京都特別区長会との連携しながら、以下の施策を講じました。

①メディアによる情報発信
②教育旅行
③ヘルスツーリズムのプロモーション

これらの取組を行うことで、誘客を促進し、釧路地域の交流人口促進を図りました。地域資源を活かしたヘルツーリズム等、効果的なプロモーションが首都圏における釧路地域の認知拡大につながっています。KPIに関しても、釧路市宿泊客延べ数の実績値はH27年度137.7万人、H28年度145.2万人、H29年度153.5万人と年々上昇しており、地方創生に大きな成果を上げていることが伺える結果となりました。

事例②「観光地としてのまちづくり」京都府

京都府では、観光による地方創生推進事業として、「海の京都~丹後・中丹魅力ある観光まちづくり~」を実施しました。同事業は、以下の将来像を目標として行われます。

①強い集客力を持つ新たな観光圏の形成
②「陸の京都」と「海の京都」の双極構造
③強いブランド力を持った観光拠点の複数整備
④観光拠点を結ぶ交流基盤整備
⑤持続可能な内発的地域づくり

まず、内陸の観光地とは異なる魅力で強い集客力を持つ新たな観光圏を形成することで、「陸の京都」と「海の京都」の双極構造の実現に向けた取組を行っています。まず、海外においても日本を代表する有数の観光地として認識されるよう、強いブランド力を持った観光拠点が複数箇所整備しました。それに伴って、観光拠点を結ぶハード・ソフトの周遊システムの整備も必要です。具体的には、交通インフラ、周遊旅行商品等を対象に、観光客起点による整備等が挙げられます。また、観光客の滞在時間が延び、宿泊客の増大につながることとなり、地域経済への波及効果が期待できます。上記の取組により、構想の実現を目指す過程の中で、圏内のさまざまな分野で社会や事業のイノベーションに挑む人たちを増やすことで、持続可能な内発的地域づくりにつながります。京都府は、発信力・集客力のある「戦略拠点」として、重点的に整備を行う以下の拠点を定めました。

①福知山市:お城とスイーツをめぐるまちなか観光エリア
②舞鶴市:舞鶴赤れんがパーク周辺一帯
③綾部市:グンゼから大本に至るまち並み
④宮津市:天橋立
⑤京丹後市:浜詰(夕日ヶ浦温泉)・久美浜エリア
⑥伊根町:伊根浦地域内(伊根浦舟屋群のある平田地区内を中心に整備)
⑦与謝野町:昭和モダン・シルクの里もてなしゾーン(とくにちりめん街道)

同府は、戦略拠点ごとに、各市町の関係者によるまちづくり委員会(仮称)等を設置し、「海の京都」のコンセプトに合致したマスタープラン等の策定を行いました。それに加えて、パースといったまちづくりのデザインについての決定も行っています。デザインについては、役割分担によって事業を進めています。具体的には、プロのデザイナーによるアドバイスの実施や使い方の統一等を行い、景観デザイン等にこだわった整備に取り組むといった手順です。公共施設については、府や市町の管理者が整備民間することで効果的に役割分担を行っています。民間施設については、景観形成に資する観光関連施設の外装改修等の修景補助金等を活用した整備が行われます。こうしたまちづくり事業の対象となる施設は、以下のものが挙げられます。

①まちづくり・景観関係
・散策路、遊歩道、植栽、ファサード、サイン、ライトアップ、休憩所、トイレ、親水施設など
②民間施設関係
・旅館、民宿、ホテル、温泉施設、レストラン、食堂、カフェ、居酒屋、土産物屋、観光バス、観光船、駐車場、観光ガイド案内センターなど
・「戦略拠点」等を結ぶ観光交流基盤の整備

観光交流基盤の整備においては、交通の核となる京都縦貫自動車道等の以下の拠点について、整備の推進および周遊ルートを設定しました。

①道路関係
②北近畿タンゴ鉄道関係
③京都舞鶴港関係
④二次交通関係
⑤周遊コース

京都府は、これらの戦略拠点をつなぐ観周遊ルートを設定し、そのルートを観光客が快適に移動できるような公共交通システムの整備を行いました。広域観光プロモーションについては、観光客増加につながるような広域的観光事業を戦略的に展開しています。具体的には、「海の京都」の統一的なテーマ・コンセプトによる観光プロモーションをはじめ、観光客誘致のためのマーケティングや観光企画づくりなどの取組です。こうした活動によって、「海の京都」の知名度向上を図り、観光客増加につなげる活動を行っています。広域的観光事業の戦略的展開は、以下の4つに分けられます。

①誘客関係
②観光企画関係
③ブランド戦略
④マーケティング

誘客関係では、イベントや祭り等の開催、観光大使の委嘱などに加えて、首都圏等での観光PR活動からガイドブックの作成まで多岐にわたります。観光企画関係においては、名物料理や土産物の開発を行い、観光地の活性化につなげます。ブランド戦略については、「海の京都」統一ロゴの作成や「海の京都パスポート」の作成等によってブランド価値および認知度を向上させる取組を行っています。こうした要素に加えて、観光客の満足度、訪問回数等をアンケート等により調査を行うマーケティングにも取り組んでいます。京都府は、こうした観光事業を推進するための体制整備として、以下の3つの組織を新設および再編しました。

①海の京都実践会議(新設)
②海の京都観光推進協議会(丹後広域観光キャンペーン協議会を再編拡充)
③海の京都PT(新設)

海の京都実践会議は、内外の民間事業者、経営専門家等で構成されており、海の京都PT、海の京都観光推進協議会への助言・事業提案等を主に担当します。海の京都観光推進協議会は、地元自治体および観光関連団体等の会員で構成されており、海の京都構想の共有を行うとともに、「戦略的な広域観光プロモーション」の実施主体である組織です。海の京都PT(プロジェクトチーム)については、京都府、北部地域の市町で構成されており、海の京都構想の作成を行っています。「民主導の観光まちづくりを進めるための仕組みづくり」、「発信力・集客力のある『戦略拠点』の形成」、「『戦略拠点』等を結ぶ観光交流基盤の整備」の実施主体となる組織です。これらの組織が各自役割分担を行いながら、協働してプロジェクトを推進することで、効果的かつ効率的に地方創生推進事業を実施しています。

事例③「百人一首かるたコンテンツを活用した観光誘客推進事業」大津市(滋賀県)

大津市では、「百人一首かるたコンテンツを活用した観光誘客推進事業」を実施しました。同事業実施に至った背景には、大津市が「競技かるた」を題材とした漫画「ちはやふる」ゆかりの地であることが挙げられます。競技かるたは、こうした漫画やアニメ作品の影響もあり、2016年3月には実写映画が公開されるなど、国内のみならず海外でも普及し人気を博しています。同事業では、作中のゆかりの地である以下の地域が連携して、かるたコンテンツ活用の誘因となる取組を行っています。

①滋賀県大津市
②福井県あわら市
③東京都府中市と関連企業
④商業施設等官民

上記の事業が連携して行う主な取組は、以下のとおりです。

①国内外へ百人一首かるたコンテンツを発信
②国内旅行者およびインバウンド観光客を誘致
③かるたコンテンツ活用を誘因する事業の実施

かるたコンテンツ活用を誘因する事業の実施については、まず先導的に官が取り組み、民の自主実施へつなげています。同事業の主な実施内容は、以下の3つに分けられます。

①広域連携事業
②地元事業
③広域看板および近江神宮周辺道標の多言語化

まず広域連携事業では、以下の幅広い事業を行っています。
・マップ作成、ウェブ情報発信、都市圏展示会、発地プロモーション、ツアー造成、ノベルティ作成、FAMツアー等

続いて地元事業では、ちはやふるゆかりの地にちなんだ事業を主に行っています。
・原画展等イベント、初心者・外国人向けかるた体験ツアー、関連施設整備、著作権使用料等

2つの事業に併せて、広域看板および近江神宮周辺道標の多言語化を行うことで、海外からの旅行客に対してもアプローチを行っています。KPIに関しても、大津市内における主たる宿泊施設および市内全域にある観光地の外国人観光入込者数の増加率に対する、H28年度の目標値179,092人、実績値は184,706人を記録し、地方創生活性化事業として成果が伺える結果となりました。

こうした結果を受けて、28年度の評価分析では、平成28年度の映画「ちはやふる上の句・下の句」および映画と連動した観光プロモーションにより、近江神宮の入込客数は、対前年124%、10万人以上増加した一方で、周辺地域への波及効果は限定的であったとの分析結果が得られました。また、懇話会の意見でも、百人一首かるたは観光資源として可能性を感じる一方で、現状は近江神宮単体でしか効果が出ていないため、周辺地域にもっと効果が波及する取組が必要であるとの指摘が寄せられています。

京都府は、こうした客観的評価を踏まえた今後の事業の方針をまとめました。具体的には、ロケ地訪問が観光消費額の増加につながるような事業展開に向けて、近江神宮をはじめ、大津市内でロケ地となる観光地へのさらなる誘客を促進するとともに、周辺観光施設への周遊を促しています。

〈参照元〉

北海道釧路市_平成29年度 地方創生推進交付金事業の概略とKPI
(https://www.city.kushiro.lg.jp/common/000132627.pdf)

北海道釧路市_北海道くしろ地域・東京特別区交流推進事業
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/tiikisaisei/dai43-2nintei/plan/756.pdf)

京都府_京都府ホームページ
(https://www.pref.kyoto.jp/kikakuriji/uminokyoto.html)

滋賀県大津市_平成28年度 地方創生の交付金を活用した事業の実績
(https://www.city.otsu.lg.jp/material/files/group/53/koufu28.pdf)

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