事例①「生涯活躍のまち形成事業計画」雫石町(岩手県)
雫石町では、「生涯活躍のまち形成事業計画」を実施しました。事業実施に至った背景には、雫石町を取り巻く社会の現状が挙げられます。人口減少と地域経済縮小の悪循環を克服に向けて、国が平成26年度に策定した「まち・ひと・しごと創生ビジョン」を制定し、「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」の導入および「生涯活躍のまち構想」最終報告書を作成しました。
これを受けて、雫石町では、これまで町総合計画を推進する取り組みを研究する「総合計画推進モデルプロジェクト」で得た成果を発展させ、国の「生涯活躍のまち構想」推進に資する事業として「町有地を活用した100年の森とまちなか居住の連携によるCCRC事業」の取り組みを開始しました。これらの事業を整理し、平成29年1月に策定した「雫石町生涯活躍のまち構想」の実現に向けて、町が実施する事業の推進を行うために「雫石町生涯活躍のまち基本計画」がまとめられました。こうした経緯に基づいて、地域再生計画に記載した実施事業の具現化を図るため、地域再生計画のアクションプラン「雫石町生涯活躍のまち形成事業計画」が策定されました。
地域経済分析システムRESASによると、平成24年の雫石町の売上高で見る産業構造は製造業が最も多く20,764百万円であり、ついで建設業(12,085百万円)、卸売業・小売業(9,091百万円)となっており、岩手県全体の産業構造と比較すると割合の違いはあるものの、主要な業種は同様の傾向となっています。その一方で、産業構造全体に占める割合では岩手県と比較して農林業と宿泊・サービス業が高くなっており、雫石町が農業と観光を主軸に施策を展開していることを示す結果となりました。
同町は平成12年をピークに死亡者数の増加と出生数の減少、転出者数の増加を要因とする人口減少が続いており、とくに出生率が岩手県の平均と比較して0.11ポイント下回っているほか、20歳代の未婚率が岩手県内で最高を記録しています。こうした深刻な状況がある中で、このままの推移でいくと、23年後の2040年には人口が12,000人を下回り、高齢者1人を1人の働き手で支えることになると見込まれています。このような現状を受けて、雫石町は以下の施策を実施しました。
①就業情報の一元化とマッチング促進
②農業経営基盤の安定化
③空き店舗を活用した起業支援
④地域住民活動
⑤生涯学習・公民館活動
まず、中高年齢者の就業の推進対策として、雫石町と地域再生推進法人が連携し、就業情報の一元化とマッチング促進を行っています。農業経営基盤の安定化については、若者が就農する魅力づくりに向けて、経営基盤の確率化に取り組みました。具体的には、地域住民と就農者の交流などを支援し、農業の魅力の発信と地域内での農作物の販路拡大などにつなげています。空き店舗を活用した起業支援については、店舗改修の助成を起業者のみから物件所有者にも拡大し、高齢や後継者不在などを理由とする閉店、廃業による物件の活用を行いました。また、希薄化が懸念される地域住民活動についても、雫石町と法人が連携した取り組みを行っています。たとえば、これまで公民館で実施されていた生涯学習活動を継続発展させながら、地域の生活用品の買い物拠点化を実現するなどの利活用が挙げられます。これまで社会教育法で禁止されている営利目的利用も含めて、柔軟に対応することで幅広い利用を可能としました。
こうした取り組みの結果、平成28年6月には先進事例として「内閣府生涯活躍のまち形成支援チーム」の支援対象団体に全国ではじめて選定された団体の1つとなり、地方創生事業によるまちづくりの確率されたモデルとなりました。
事例②「『とうおん』ブランド創生事業による移住促進」東温市(愛媛県)
東温市では、地方創生加速化交付金事業として、稼ぐ地域が人を呼ぶ!移住地としての『とうおん』ブランド創生事業」を実施しました。実施に至った背景には、東温市の中山間地域で深刻化している少子高齢化に伴う人口減少が挙げられます。同市では、この問題により担い手不足に歯止めがかかっておらず、住民が生きがいを持って暮らし続けられる「住みたくなる地域づくり」の推進が急務となってます。こうした現状を受けて、中山間地域の地域の維持・活性化に取り組む重点地区において、地域運営組織を形成し、その組織が中心となって以下の取り組みを行いました。
①移住定住の促進
②担い手の誘致・育成
③地域特性を活かした新産業の創出
これらの取り組みによって、将来的に自立した経済循環の仕組みを持つ、持続可能な地域社会づくりを進めることが可能になりました。東温市は、同事業において、以下の取り組みを行いました。
①移住定住促進協議会の設立移住定住促進マスタープランの策定
②移住・就業体験事業
③農林業体験活動支援事業
④定住支援事業
⑤頑張る中山間地域等支援事業
KPIに関しては、以下の4つの指標を定めています。
①移住定住促進協議会の設立移住定住促進マスタープランの策定
②地域運営組織の設立
③移住就業体験・農林業体験の実施
④地域通貨制度の創設
上記の指標に対する実績値については、④についてはほとんど効果が見られなかったものの、①~③については効果が見られ、今後の発展や改善に向けての知見が得られる結果となりました。とくに①と②に関しては地方創生に効果を示しており、事業の追加を行う等継続して発展させていく方針をとっています。③に関しては、一部ではるものの地方創生に効果が見られたことから、今後事業内容の見直しおよび改善を行いながら継続して実施していく方針です。
こうした4地区の地域運営組織事業に対する支援が、地域おこし協力隊などの他事業と連携して効果的に働いていることが伺える結果となりました。効果の得られなかった地域通貨制度については、福祉や健康づくり等の分野との連携をさせていく方向で組み直すことも検討し、さらなる地方創生活性化に向けての事業改善に取り組んでいます。
事例③「地域創生施策としてのリノベーションまちづくり」沼津市(静岡県)
沼津市では、地域創生上乗せ交付金事業として「リノベーションまちづくり」を実施しました。同事業は、平成26年11月28日に施行された「まち・ひと・しごと創生法」に基づき策定した「沼津市まち・ひと・しごと創生人口ビジョン・総合戦略」に位置づけて取り組んでいます。リノベーションまちづくりは「まちに増える遊休不動産をリノベーションの手法を用いて再生し、新しい使い方、新しい空間体験を生み出す」という個別の取り組みを一定エリアに集中的に、面的に展開することで、以下の改善に結び付けることを目的としています。
①雇用の創出
②コミュニティの再生
③エリアの価値向上
④地価の向上
これらの要素によって、まちをリノベーションに向けて取り組んでいる同事業は、以下のメリットがあります。
①建て替えなどと比べて初期投資を抑制できる
②事業のスピードが圧倒的に早い
これらの特徴があり、より効率・効果的にリノベーションが行えることから、確率されたモデルとして全国に広がっています。また沼津市では、リノベーションまちづくりを含む、以下の4つの事業によって、公民連携の推進を行っています。
①リノベーションまちづくり
②まちなか起業の支援
③まちづくりファンドによる支援
④公共施設公民連携
上記の民間主導によるまちづくりを進めることで、雇用創出と居住者増加の相互作用による好循環なまちを実現に向けた取り組みを行っています。