神奈川県
神奈川県では、県内でネットワークを構築する際の指針となる「神奈川県地域医療介護連携ネットワーク構築ガイドライン」を策定しました。国が今後、稼働を目指している全国的な保健医療情報ネットワークに接続可能なネットワークとして、神奈川県内各地域で地域医療連携ネットワークの構築を目指していきます。
地域医療介護連携ネットワークには、医療情報の広域的な共有および在宅における多職種連携の推進を図るため、医師、歯科医師、訪問看護師、介護支援専門員(ケアマネジャー)等の医療介護関係者が相互に連絡できるコミュニケーションツールを設け、日ごろのコミュニケーションを迅速に図る仕組みを作ります。
また、タブレット端末と連動させることにより、たとえば訪問看護師が高齢者の自宅等を訪問した際に、褥瘡等の状況をタブレット端末で撮影し、その場で地域医療介護連携ネットワークのクラウドサーバに送信したり、口腔衛生状況やバイタル等の情報をその場で入力したりすることで、在宅診療を行う医師、歯科医師による適切な在宅医療の提供が可能になります。
奈良県宇陀市
奈良県宇陀市は、市の重点政策の一つに「健幸都市“ウェルネスシティ宇陀市”」があり、市民が住み慣れた当地域で自分らしい暮らしを人生の最期までできる限り続けられるよう、「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」を一体的に提供する地域包括ケアシステムの構築を進めています。このシステムをより便利に効率的に展開することを目的として、平成28年秋より奈良県のモデル地域の指定を受け、ICT(情報通信技術)を活用した医療介護連携ネットワーク「宇陀地域医療介護連携ICT導入検討事業」を展開しています。
これは宇陀地域の福祉・医療及び介護の関係機関を情報共有連携できるようにつなげる仕組みで、宇陀市、宇陀地区医師会をはじめ、地域の医療介護施設などが集まり、宇陀地域医療介護連携ICT導入検討協議会を設立し、平成30年に一般社団法人宇陀地域医療・介護連携ネットワーク運営協議会が運営する「宇陀けあネット」がスタートしました。
新潟県
新潟県では、魚沼圏域の住民の健康寿命延伸とより良い医療サービス提供を目指し、平成26年4月から魚沼地域医療連携ネットワーク(愛称:うおぬま・米[まい]ねっと)を構築・運営しています。令和2年1月31日現在、圏域住民加入者数は27,672名、圏域外加入者数は210名、合計27,882名です。
魚沼地域医療連携ネットワーク構築の目的
・医療機関の地域連携(患者データの共有等)
・地域住民の健康管理(自治体検診結果の活用等)
・地域住民の健康寿命延伸(地域特性の研究等による疾病対策)
「米ねっと」では、加入した住民に「米ねっとカード」を交付し、「米ねっとカード」を医療機関・介護施設で提示することで、診療情報の共有を許可する方式をとっています。当初は医療情報の共有からスタートしましたが、平成31年4月から介護情報も共有できるようになりました。
「米ねっと」はカードを提示した医療機関・介護施設での診療情報や介護記録のみが共有される仕組みで、患者がカードを提示しなかった場合は診療情報や介護記録の共有ができないため、利用するすべての医療機関・介護施設でカードを提示するよう呼び掛けています。
「米ねっと」利用者のメリットとして、参加施設が診療情報・介護記録を共有することで、重複検査の低減やこれまでの治療内容の説明が簡単になり効率的に診療を受けることが可能になります。また、医師等がアレルギー・禁忌薬情報などを参照できることで、より安全な医療の提供をサポートします。日頃の介護記録も医療従事者へ共有されるため、急変時や緊急時のより適切な処置が期待できます。
北海道登別市
平成30年1月から、西胆振(登別市・室蘭市・伊達市・豊浦町・壮瞥町・洞爺湖町)地域の住民の医療・保健情報を病院や診療所、歯科診療所、薬局、介護事業所などの施設で共有するため、スワンネット協議会事務局による「スワンネット」の運営を開始しました。
これまで、診療内容や処方薬の情報などは医療機関ごとに管理されていたため、別の医療機関で診察を受ける場合には診断書やお薬手帳などを持参したり、治療内容を説明したりする必要がありました。スワンネットに参加すると、各医療機関が持つ診療情報等を一括管理することで、各施設間で情報を共有することができ、検査や薬の重複が少なくなる、災害の際にも治療や介護が継続しやすくなるなど、より質の高い医療・介護サービスを受けられることが期待できます。
岩手県花巻市
岩手中部医療圏(花巻市、北上市、遠野市、西和賀町)で運用されている「いわて中部ネット(岩手中部地域医療情報ネットワーク)」と、気仙医療圏(大船渡市、陸前高田市、住田町)及び両磐医療圏(一関市、平泉町)で運用されている「未来かなえネット」の2つのネットワークが、平成31年3月から接続し、お互いのネットワークで情報を共有することが可能になりました。
この2つのネットワークシステムが接続したことにより、医療圏をまたいで医療機関を受診した場合でも、ネットワークに蓄積された医療や介護に関する情報を、医師等が閲覧することができます。また、医療圏をまたいで救急搬送されても、受け入れ先の医療機関でこれまでの医療情報を把握することが可能になり、迅速な処置につながります。異なる医療圏でも医療や介護に関する情報を閲覧できることで、災害が発生したときにも継続して医療や介護サービスを受ける助けになります。
青森県
青森県では、県内の複数の医療機関でICT(情報通信技術)を活用した診療情報共有ネットワークシステム「あおもりメディカルネット」を運営しています。高度医療や専門的な医療を提供する地域の中核的な病院(情報提供機関)と、かかりつけの診療所等(閲覧機関)が、役割分担と相互連携を図り、患者の診療情報を共有することで、地域全体で切れ目のない質の高い医療サービスの提供を目指しています。
「あおもりメディカルネット」では、かかりつけの診療所等は、地域の中核的な病院のカルテ、検査結果、画像、レポート、処方などの診療情報の閲覧が可能で、紹介患者の受け入れにあたって、必要な治療計画を確認できます。
さらに、「地域連携パスシート」を情報提供機関と閲覧機関との間で共有しています。主治医、専門医、各種コメディカルなどの関係者の間で、患者メモに治療方針の詳細を記入したり、必要な電子ファイルを添付したりすることで、チーム全体で患者の状況を共有し、地域でのスムーズな医療連携を実現します。
患者側のメリットとして、地域の中核的な病院で受けた検査の結果等を、身近なかかりつけの診療所等で閲覧できるため、どこに住んでいても良質で先進的な医療を受けることが可能になります。また、重複した検査や投薬を防ぐことにつながり、適切な診断・治療を受けることができます。自身の診療情報を共有する医療機関を指定することも可能です。
山形県
山形県では、平成31年3月20日より地域を越えて患者情報を共有する「医療情報ネットワークの全県化」の運用を開始しました。患者の同意のもと、地域の医療機関・薬局・介護施設等といった医療機関同士で、患者のカルテやレントゲン画像などを共有する「医療情報ネットワーク」は、これまで地域単位(村山、最上、置賜、庄内)で整備・運用が行われてきました。
医療情報ネットワークの全県化による広域連携協定の締結で、レントゲン画像などの患者情報を他地域の医療機関の間で速やかに取り寄せ迅速な治療を行えること、共有するカルテから過去の検査履歴を確認して検査の重複を避けることが可能になり、地域を越えて医療機関を受診する患者の治療に役立てられます。また、救急時においても、「医療情報ネットワーク」を通し、搬送された患者の情報を地域を越えて取り寄せることで、迅速な救急処置につなげられます。