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コンベンション誘致における自治体の課題と取組事例【自治体事例の教科書】

コンベンション誘致における自治体の課題と取組事例【自治体事例の教科書】

2019年G20大阪サミットなど、国内で大規模な国際会議(以下、コンベンション)などが開催されるケースが増えています。地元経済への波及効果も大きいコンベンションを誘致して地域活性につなげる取り組みとは? 事例などを通じて、そのポイントを探りました。

【目次】
■コンベンション誘致の効果とは
■事例①【バラエティ豊かな支援】横浜市(神奈川県)
■事例②【学術と平和】広島市(広島県)
■事例③【融資制度を準備】 松江市(島根県)

コンベンション誘致の効果とは

コンベンション誘致とは、多くの集客交流が見込まれる企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)といったビジネスイベントの開催を誘致することです。それぞれの英語の頭文字をとり「MICE誘致」と呼ばれています。

MICEの開催数は、全世界的には増加傾向にあります。ICCA(International Congress and Convention Association:国際会議協会)の統計によると、2017年の世界全体における国際会議の開催件数は1万2,563件で、前年比336件増となっています。

2017年の日本での国際会議開催件数は414件(前年比で4件増)で世界第7位。地域別にみると欧州での開催が世界全体のおよそ半数を占めていますが、経済発展著しいアジアや中東地域での開催数も増加しています。今後その傾向は顕著になっていくだろうと予想されます。

日本では、2013年に閣議決定された「日本再興戦略JAPAN is BACK」のなかでMICE誘致について「2030年にはアジアNo.1の国際会議開催国として不動の地位を築く」という目標を掲げています。

優れた人材や情報、知見を日本に呼び込み、さらなる人的交流や投資を国内に呼び込むための重要な戦略として、MICE誘致が位置付けられています。

MICE誘致は一般的な観光誘致とちがい、企業・産学活動、学術イベントなどと関連することが多く、そこから派生する人的交流や知識交換などの付加価値が生じることに大きな意義があります。

また、社会的な影響力が大きいリーダー層が集まることで、会議開催場所の知名度があがり、その地域の魅力が広く拡散される効果も小さくありません。

MICE誘致には、以下のような効果があると言われています。

➀ビジネス・イノベーションの機会の創造
MICEの開催によって集まって来るのは、世界中の企業や学界の主要メンバーなど、各分野のスペシャリストたちです。

こうした人材が集まることは、その自治体だけにとどまらず、国内の関係者と海外の関係者の間をつなぐ機会を提供することになります。新しいビジネスやイノベーションを生み出すきっかけになる場合もあり、社会的意義は大きいと言えるでしょう。

②地域への経済効果
MICEの開催では、国内外からの参加者や出展者の移動や宿泊、そしてそれに伴う消費支出、事業支出といった一連の動きそのものが地域全体に経済波及効果をもたらします。

開催規模にもよりますが、会議開催や参加者の宿泊・飲食・警備、そして観光などの経済効果を見込むことができ、地域全体への波及効果が期待できます。

また、MICEの場合、その地域に滞在する滞在期間は一般的な観光客と比べて比較的長いとされています。観光庁が平成28年に調査したデータによると、MICE参加者ひとりあたりの総消費額は平均33.7万円です。MICEの総参加者は数百人規模のものが少なくないことを考えると、MICE誘致の経済効果は大きなものであることがわかります。

③国と都市の競争力の向上
MICE開催の意義・メリットは経済効果だけではありません。そのイベントを通じて集まる国内外の人的交流やそこから生み出されるネットワークやイノベーションこそが真価といえます。人や情報の交流の機会を提供することは、国や都市の競争力の向上につながります。

世界的にも、MICE誘致は国・都市の発展と国際競争力向上のための重要な戦略と位置付けられており、各分野の産業振興のための国際会議や見本市の開催などをめぐって、誘致合戦が繰り広げられています。

次に、MICE誘致における自治体事例を紹介します。

事例①【バラエティ豊かな支援】横浜市(神奈川県)

横浜市(神奈川県)は観光庁から平成25年に「グローバルMICE戦略都市」に選定され、平成26年には200件の国際会議を開催しています。

誘致した国際会議のうち、一定の要件を満たすものに対しては最高1,000万円を助成することも、横浜市でMICE開催が活性化している一因となっているようです。

グローバル規模のMICE誘致の国際コンペでは、国際本部に提出する資料や英文提案書、開催地選定のためのプレゼンテーション資料作成、海外主催者の視察に関する経費負担など、立候補段階から取り組みを同市では行っています。

さらに、MICEの開催規模・内容に応じて会議名のロゴ入りエコバッグや和太鼓のアトラクション提供、借り上げバスの提供など、同市が提供する支援内容はバラエティ豊かなことも特徴です。

事例②【学術と平和】広島市(広島県)

広島市(広島県)も平成25年に観光庁から「グローバルMICE指定都市」に選定されています。平成26年に広島市で開催された国際会議数は50件。そのうち、広島国際会議場(収容人数1,600名)で開催された大規模なMICEは26件あります。

同市では平成24年に「広島産学連携MICE推進委員会」を設立し、はやくからMICE誘致のための情報収集や誘致支援などに取り組み、地元の大学や観光団体、行政機関の相互連携が充実しているという特徴があります。学術会議の誘致に熱心で、広島大学と広島市などの間で平成27年に「コンベンション誘致・開催のための連携・協力に関する協定」を結んでいます。

被爆都市であり、平和都市であることを活かした取り組みにも力を入れており、広島市長が会長を務める「平和首長会議」の加盟都市5,145都市とのチャンネルを活かして平和分野を中心とした国際イベントの誘致にも熱心に取り組んでいます。

事例③【融資制度を準備】 松江市(島根県)

松江市(島根県)は地方都市ながら、平成26年の国際会議開催件数は8件あります。そのうち7件が収容人数5,000名を誇る大ホール「くにびきメッセ」での開催です。

MICE開催支援として、最大1,000万円の助成金制度を整備しているほか、国際会議の主催者を対象に、1会議につき100万円を上限とした融資制度も準備しています。

<参照元>
観光庁「MICEの誘致・開催の推進」
http://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kokusai/mice.html
観光庁「MICE国際競争力強化に向けたとりまとめの公表~MICE国際競争力強化委員会 提言及び関係府省MICE支援アクションプラン2018の策定~」
http://www.mlit.go.jp/kankocho/news03_000182.html
三重県庁「三重県国際会議等 MICE 誘致・開催取組方針」
http://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000730251.pdf    等

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