厚生労働省_新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の見解」
3月9日の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議では、国民一人ひとりが二次感染を防ぐための行動に協力できることを前提にした上で、社会・経済機能への影響を最小限に抑えつつ、最大限の感染対策効果を得られるような対策をとる、という方針で検討がなされました。
この時点では感染者の約8割は感染源となっておらず、平均すると1人の感染者が1人に感染させる程度であることから、感染者や濃厚接触者・集団感染(クラスター感染)を早期に把握することでなんとか爆発的な感染拡大には進んでいないと評価しています。しかし同時に、潜伏期間の長い新型コロナウイルスにおいては、感染状況把握に約2週間のズレが生じること、収束しつつあっても諸外国からの持ち込みなどによりぶり返すことも予測されることなどを挙げ、注意喚起をしています。
中国では感染者の2割程度が重症化したことおよび、日本でも風邪症状から症状が急激に悪化し、人工呼吸器や人工心肺を用いた集中治療が必要になることがあることから、医療提供体制を強化の必要性を訴えています。
集団感染を起こしやすい条件として「換気の悪い密閉空間」「多くの人が密集する場所」「近距離での会話や発声」を挙げ、具体的な場面を例示しつつ、避けたり対策をとったりするように国民や事業者に対して呼び掛けています。
厚生労働省_新型コロナウイルス感染症 クラスター対策による感染拡大防止
専門家会議を受けて厚生労働省は、新型コロナウイルス感染拡大の対策を「クラスター対策(集団感染対策)」に集中して行うことを決めました。
クラスター対策とは、集団感染を早期に把握し対策を行うことで感染拡大を収束させようとの考え方であり、医師からの届け出から感染源や感染経路を探索し、感染拡大防止対策を実施する方法です。この時点では感染者及び濃厚接触者に対しての健康観察を行い、濃厚接触者の外出自粛・関係施設の休業やイベント自粛を要請することを主な対策としています。
関係省庁の協力体制として具体的な支援策も例示していますが、どの省庁に何を依頼するのかはまだ明確にはなっていません。
このクラスター対策を実施する上で国と地方の連携が欠かせないとして、厚生労働省に状況把握とクラスター特定のための協力、データ収集や分析を行う「クラスター対策班」が設置されました。クラスター対策班は新型コロナウイルス対策本部の直下にあり、国立感染症研究所が取り仕切る「データチーム」と東北大学が構成する「リスク管理チーム」に分かれています。
国立感染症研究所は「データチーム」と同時に、その下にある「接触者追跡チーム」と「サーベイランスチーム」も構成し、そこに「データ解析チーム」として北海道大学が加わる形になっています。
内閣官房_新型コロナウイルス感染症対策の基本方針
政府の「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」では、いくつもの地域においては感染ルートが判明していないこと、小規模患者クラスター(集団)があることなどから、集団感染を予防して感染者の増加のスピードを遅らせてその間に医療提供体制の整備を行うことを目指すこととしました。
その内容とは、「国民・企業・地域等に対する情報提供」「国内での感染状況の把握」「感染拡大防止策」「医療提供体制」「水際対策」などです。これらの方針が骨子となっているのです。
国民への分かりやすい情報提供としては、受診方法と感染予防があげられています。
企業に対しては、体調不良の職員を休ませることやテレワーク・時差出勤の推進を求めており、イベントなどには開催の必要性を改めて検討するよう求めています。
国内での感染状況の把握は医師の判断での検査と濃厚接触者を把握と検査を挙げていますが、患者が増えた場合には肺炎患者の確定診断のための検査に移行するとしています。
感染拡大防止策は、最初はクラスター発生の把握と関係施設やイベントの自粛と高齢者施設などにおける施設内感染対策、人が多く集まる施設での感染対策を徹底するとしつつ、感染が拡大した場合には広く外出自粛を求める対応にシフトするとしています。
医療提供体制では、帰国者・接触者相談センターの整備と周知、適切な対応と病床や人工呼吸器などの確保、治療薬やワクチン・迅速診断用の簡易検査キットの開発を挙げています。
集中治療が必要な重症患者を優先して受け入れる医療機関を決めるなど、地域の医療機関においては役割分担が必要であるとみています。
国立感染症研究所_新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(暫定版) -患者クラスター(集団)の迅速な検出の実施に関する追加-
「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を踏まえて、国内の新型コロナウイルス感染症の患者に対し保健所が「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」第15条による「積極的疫学調査」を実施するために作成された要領です。
状況把握とクラスター特定のための協力、データ収集や分析を行う「クラスター対策班」と国立感染症研究所が密接に連携し、感染の流行の早期の終息にあたることを改めて明記しています。
この積極的疫学調査の対象は感染者とその濃厚接触者とし、さらに新型コロナウイルスの感染が疑われる人も対象として加えるとしています。
保健所は、管轄する地域の感染者やその疑いのある人の届出状況や帰国者・接触者相談センターへの相談情報を総合的に評価し、地域の新型コロナウイルス感染症の発生状況と全国比較検討を行うこととされており、調査の方法や手順・注意事項について詳しく説明がされています。
感染の疑いのある人の場合と濃厚接触者の場合に分けて、マスクを着用するなどの調査時の感染予防策と、自宅待機などの対象者へ伝える留意事項についても解説されています。
厚生労働省_新型コロナウイルスの集団感染を防ぐために
厚生労働省は自治体と連携して、クラスター発生を早期に発見する、すみやかに専門家チームを派遣する、データの収集や分析をおこない対応策を検討する、といった対策をとっていくため、国内の感染症専門家を集めた「クラスター対策班」を設置したことに併せ、国民向けの啓発文書「新型コロナウイルスの集団感染を防ぐために」を作成しました。
国内でも小規模ながら複数の患者が発生している例があることから、小規模な感染者の集団(クラスター)が次の感染者をつくってしまうことを防ぐことが重要だと説明しています。
感染経路の特徴の特徴として、感染者の8割は人には感染していない反面、スポーツジムや屋形船、あるいはビュッフェスタイルでの食事など、密閉された空間において一人の感染者が複数に感染させた事例があること伝える必要があります。そのため、「換気がしにくい空間」「多くの人が密集するような空間」「不特定多数の人が接触する可能性が高い場所」を避けるよう注意喚起しています。
また、イベントを開催する際には、風通しがよくない空間や人が近距離で会話する環境は感染リスクを高めるおそれがあることから、イベントの規模にかかわらず開催をするべきかどうかを検討することが重要としています。開催する場合には、なるべく換気や風通しのよい空間を作るなど、イベントの実施施設や方法を工夫するよう要請しています。
厚生労働省_厚生労働省ホームページ
厚生労働省はホームページにおいても北海道などのデータの分析など、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議で判明したことを分かり易く発表しています。
症状の軽い人から感染するケースが増加している、空気の出入りが少ない狭い空間で人々が近距離で一定時間以上一緒にいるような空間において、患者集団(クラスター)につながりやすい、と説明しています。重症化に至る経過についても次のように触れています。
・約80%が軽症、14%が重症、6%が重篤
・風邪症状が出てから約5~7日程度で症状が急速に悪化し、肺炎へ
その上で北海道の例を出し、人と人との接触を可能な限り控えるなどの積極的な対応を行えば感染拡大を急速に収束させることができるとして、若い世代への次のような内容のメッセージで結んでいます。
「10代~30代の若者世代は新型コロナウイルス感染による重症化リスクは低いといえます。しかし、このことから症状の軽い人から重症化するリスクの高い人へ感染させてしまう可能性があるのです。多くの人が集まる場所や換気の悪い場所を避けるだけで、感染や重症化を食い止めることにつながり、コロナウイルスから命を救うことにつながります。」