データの活用が必要な理由
地方公共団体が保有しているデータを活用することで、住民ニーズに合わせたサービスの提供や、データに基づく政策の推進を行うことが可能です。
2016年12月に、「官⺠データ活⽤推進基本法」が施行されたことから、行政手続きのオンライン化やオープンデータ化が進み、地域住民に寄り添ったサービスが提供されるようになりました。
実際にデータを活用するうえでは、さまざまな課題もあります。たとえば、データを分析するために必要となる人材育成や体制づくり、さらにデータの活用方法や外部との連携方法の問題などが挙げられます。
データには個人情報が含まれることがあるため、セキュリティ対策や運用ルールについてあらかじめ理解する必要があります。実際にデータを利用する際は、活用するデータが条件を満たしているかどうかや、利用目的、利用条件の確認など、所定の手続きが必要です。個人情報を活用する際は、庁内手続きを経て初めて利用できます。
全国で行われているデータ活用の実施例
少子高齢化社会や人材不足などの問題に対応するため、自治体ではデータを活用した行政サービスの開発に向けたさまざまな取り組みを行っています。
実施例1.オープンデータの推進(千葉市)
千葉市では、独自の取り組みとしてオープンデータを公開し、アプリ活用に役立てています。
「市税の使い道ポータルサイト」では、市民が負担している税金や公共料金を視覚化し、さらに受けている公的サービスを知ることができます。市民が市の政策に対して理解を深めることを目的としています。
また、「ちばレポ」は、実際に千葉市内で起こっている課題や問題を報告することができるアプリです。
地元の協力企業を紹介したり、アプリについてのアンケートを1年に1度行ったりするなど、アプリを通して市民と行政との距離が近くなる効果が期待できます。これまでのレポートについては、オープンデータとして公開されています。
「まちづくり支援システム」は、東京情報大学との連携で提供しているアプリで、人口減少や少子高齢化などの情報を共有しながら、地域課題の解決に向けての問題提起を促しています。
このほかにも、防災マップや避難場所を探せるアプリ、千葉市内の保育園を検索できるアプリなど、オープンデータを活用した取り組みが行われています。また、属性情報を活⽤し、ひとり親家庭へ向けた⽀援情報をプッシュ型で提供するなど、特定のニーズに沿ったサービスの提供も行っています。
実施例2.データを活⽤した政策⽴案・評価(姫路市)
兵庫県姫路市では、市役所職員が閲覧できるのは統計情報のみで、分析や統計処理は守秘義務を負う職員が行っています。住民サービスの向上とよりよい行政づくりを目的としており、統計結果は会議資料や市のホームページなどに活用されています。
住民基本台帳のデータは人口推移や転出入状況、出生数の推移などの分析に役立てられ、図にすることで将来予測を立てることが可能です。また、子育てデータを分析することで、施設の定員状況などを把握し、保育所の配置計画を検討したり、待機児童や隠れ待機児童の解消策といった政策⽴案を行ったりしています。
どこにどのような児童がいるのか、保育園児が小学生になったときに学童不足の過不足の問題はないかなど、より具体的な分析を行うことが可能です。このほかにも、地域ごとの検診受診率、市役所の窓口利用状況などにも活用され、サービスの効率化につなげています。
職員が個別にデータを収集し、ソフトを使って分析するとかなりの時間を要します。しかし、姫路市が利用している分析基盤は、作業時間を大幅にカットでき、たとえば小学生の年齢別児童数の分析に数時間を要していたのが、わずか数分で実施できるようになりました。担当者のスキルに関わらず操作が可能で、人事異動に伴う引き継ぎ業務もスムーズになる効果が期待されています。
実施例3.オープンデータ活用事例(大阪市)
大阪市はオープンデータを公開することで得られるメリットについて話し合う推進協議会に参加したり、「インターナショナル・オープンデータ・ディ」の認知を広げる取り組みを行い、オープンデータの普及促進をはかっています。
また、行政の作業負担の軽減とサービスの普及を目的に、「PUSH大阪」のアプリを開発しました。これは、住んでいる地域や職業、性別など、ユーザーの属性や関心に応じた情報を配信するサービスです。すでに配信済みのRSSを利用しているため、コストを抑えることができ、さらに大阪市以外の自治体の情報も閲覧できます。今後はユーザーの閲覧履歴を活用した情報分析なども行う予定です。
そのほかにも、バス停や駐輪場、お手洗いの場所などを検索できる「大阪もよりナビ」や、市内の警察署や犯罪発生場所を可視化した「大阪市 警察署 ×犯罪発生」のアプリなとも提供しています。これらの情報は大阪市が公開しているオープンデータをもとに作成されており、アプリで活用されているデータの一覧は市のホームページから確認できます。
行政の負担軽減に向けたAIやICTの活用など、大阪市では行政の効率化に向けたさまざまな取り組みを行っています。
オープンデータを活用している自治体は全国各地にあります。しかし、地域によっては行政サービスの開発に向けてまだまだ課題があるのが現状です。今回紹介した千葉市・姫路市・大阪市の活用事例は、行政におけるデータ活用の参考となるでしょう。