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自治体の電力自由化について・実施事例【自治体事例の教科書】

自治体の電力自由化について・実施事例【自治体事例の教科書】

電力の自由化が進み、自治体が参入する新たなサービスや、電気事業の取り組みが全国各地で行われています。ここでは、自治体の取り組みについて、実施事例や実施計画を交えながら紹介します。

【目次】
■電力の小売全面自由化について
■電力の小売完全自由化と自治体との関わり
■電力自由化の実施計画・実施事例

電力の小売全面自由化について

電力の自由化とは、行政の許可を受けた電気小売業者が電力市場に参加、消費者も自由に電力会社を選べる制度のことです。電気販売において消費者は、「特別高圧(大規模な工場やオフィスビルなど)」「高圧(中小規模の工場やオフィスビルなど)」「低圧(一般家庭や商店など)」の3つに区分されます。電力の自由化は、「特別高圧」に始まり(2003年)、「高圧」(2004年・2005年)と続き、2016年4月に「低圧」に拡大しました。

電力自由化による参入企業の競争に伴い、これまでにはない料金プランやサービスが誕生しました。販売される電気も、大手電力会社が販売するものをはじめ、太陽光などの再生可能エネルギー、余剰電気など多様化しました。

電力の小売完全自由化と自治体との関わり

電力の小売完全自由化により、地域内での電気事業を活発化させる自治体も増えています。

・自治体と民間企業の連携(自治体PPS)
PPSは「Power Producer and Supplier」の略で、自治体PPSは「自治体新電力」という意味です。自治体PPSは、自治体が電力の小売り分野に参入する新たなビジネスモデルとして注目されています。自治体が電気小売事業者に出資、出資した電気小売業者を通して電気供給源の確保などのリターンを受け取ります。

・地域エネルギー事業の推進
地域エネルギー事業は、再生可能エネルギーを導入し、低炭素社会や地域の産業活性化につなげる活動のことです。クリーンなエネルギーの開発は地域エネルギー事業の目的の1つでもあります。太陽光や水力、風力など、再生可能エネルギーの発電方法は複数あり、各自治体は、地元の資源に合わせた開発や展開が可能です。再生可能エネルギーの売電は自治体にとって新たな収入源になり、売電で得た収入は、施設の維持管理費など、地域活性化の費用に充てられます。

・地産地消への取り組み
地産地消の事業モデルは、食料やエネルギーの自給自足率を上げ、地域活性化につながるとして、多くの自治体で推進されています。自治体が新電気事業に参入することで、太陽光など地元で発電させた再生可能エネルギーを、地元の公共施設やごみ処理などに利用できるようになります。

電力自由化の実施計画・実施事例

多くの自治体では、電力自由化の実施計画を立てたり、実施計画に沿って電気事業を推進したりしています。

事例1:自治体PPSのビジネスモデルで地域を活性化(埼玉県秩父市)
秩父市にある「秩父新電力株式会社」は、秩父市と秩父広域市町村圏組合の共同出資により、2018年に設立された、地域新電力会社です。秩父新電力が販売する電気の供給源は、地元に設置されているメガソーラーや、秩父広域市町村圏組合のごみ処理発電、水力発電などです。これらの再生可能エネルギーは、市内の公共施設や事業所、一般家庭など段階的に供給先を広げ、得た利益は環境学習など、必要な分野に投資されます。

秩父新電力による自治体PPSは、秩父地域の外に流出していた電気料金を地域内で循環させたり、再生可能エネルギーの地産地消を実現したりと、地域エネルギーが地元に貢献するサイクルを生み出しています。

事例2:電力自由化の波を取り入れた地域エネルギー事業計画(埼玉県所沢市)
所沢市が取り組んでいる「マチごとエコタウン所沢構想」は、再生可能エネルギーを利用した、環境に優しいまちづくりの骨組みです。これまで市は、メガソーラー所沢などの設置事業を展開、再生可能エネルギーの開発に力を入れてきました。クリーンなエネルギーの供給を実現するための取り組みとして、市が着手しているのが、地域新電力事業です。

所沢市は、2018年に「所沢新電力事業構想」と「所沢新電力事業計画」を策定、事業の方向性を整えました。

「所沢新電力事業構想」は、ドイツの「シュタットベルケの事業モデル」より着想を得て、バイオマスや太陽光、風力など地元の資源を使って得たエネルギーを売電して利益を得る、ビジネスモデルを提案しています。

「所沢新電力事業計画」は、複数の電気小売事業モデルを検討、条件の合うものを選定し、段階を経て販路を広げ、運用業務に関する具体的な計画を立て、試算から導き出された再生可能エネルギーの供給を目指します。

事例3:電力の小売完全自由化で地産地消を推進(山口県宇部市)
宇部市は、地元の民間事業者らとともに、2019年11月、地域新電力会社「うべ未来エネルギー株式会社」を設立しました。電力の小売完全自由化の影響を受けて設立されたうべ未来エネルギーの目的は、電力の地産地消の実現です。

宇部市では、すでに再生可能エネルギーの開発が進められていて、環境保全センターでは、バイオマスによる発電が行われています。うべ未来エネルギーは、環境保全センターの余剰電力を、市内の公共施設や事業所等に供給し、市内消費します。

地域エネルギーの地産地消が実現すれば、地域の資金循環システムが整うとともに、地域経済の活性化、さらに豊かなまちづくりの実現に貢献します。新電力事業で得た収入は市民サービスなどに使われる予定です。

【参考文献】

埼玉県秩父市_秩父市ホームページ
(http://www.city.chichibu.lg.jp/7346.html)

埼玉県所沢市_所沢新電力事業計画書
(https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/kurashi/seikatukankyo/kankyo/
chiikishindenryoku/kousou.files/keikaku.pdf
)

山口県宇部市_宇部市ホームページ
(https://www.city.ube.yamaguchi.jp/houdou/energy_biomass/2019/shindenryoku.html)

経済産業省・資源エネルギー庁「電力小売全面自由化で、何が変わったのか?」
(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/denryokugaskaikaku/
denryokujiyuka.html
)

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