電子黒板の役割
電子黒板は映像やアニメーションなども映し出せるので、幼少期から映像や画像、アニメーションやゲームなどに親しんできた今の時代の児童や生徒の興味や関心を高めやすく、授業に集中できない子どもの集中力を高めたり、理解を深めたりするのに役立ちます。今どきの世代にとどまらず、かねてより画像や図などを用いることは理解を促進しやすいと言われており、従来は教科書にある写真や絵をはじめ、大きなパネルなどの副教材や教員が模造紙などで手作りした資料やグラフ、図などが用いられてきました。
電子黒板の導入により、教員の資料作成業務を効率化させるとともに、保存機能もあるため、その都度、作り直したり、破れたりする度に作り直す手間や労力を省くことにもつながります。つまり、児童や生徒の授業への集中力アップや理解力の向上をはじめ、映像などを駆使できることによる教員の指導力の強化や、資料作成業務の軽減による働き方改革にもつながるのもメリットです。教員が一方的に授業を展開するのではなく、児童や生徒による発表や課題研究の成果を披露する場面など幅広く活用が期待できます。
電子黒板の位置づけ
学校現場のICT環境整備が推進される中、電子黒板が従来の黒板にとって代わるイメージを持たれるかもしれません。しかし、文部科学省が現段階で考えている構想としては、電子黒板は黒板の代わりではなく、あくまでも授業支援のためであったり、従来の黒板との使い分けにより、両者を融合させて使うことを想定したりしています。
従来の黒板は授業全体の振り返りをはじめ、児童や生徒の意見や話し合いの結果をまとめるには便利なツールです。一方、電子黒板は写真や絵、グラフなどの資料を瞬時に拡大表示ができたり、映像やアニメーションなどの動きのある資料を投影したりするのに便利です。動的な表現ができる電子黒板と、静的な表示に適した従来の黒板を並行して用いる授業スタイルを構築していくのが基本となっています。
電子黒板にできること
従来の黒板との違いや、どのような場面で活用できるのかを見ていきましょう。
一番のメリットは教室のどの位置からもよく見えるよう、教材を大きく拡大表示できることです。表示させた教材にマーキングや補足説明などを直接書き込めるので、授業の重要なポイントをわかりやすく示せます。簡単なタッチ操作で、部分的に拡大したり、移動させたりすることも可能です。
教員にとって何より便利に感じるのは、一度表示した内容を保存しておく機能があることです。従来の黒板では全体を使いつくしたら、一度消して書き直さなくてはなりませんでした。意識しておかないと、後でもう一度振り返りたかった内容もいったん消すことになり、書き直すといった二度手間も生じてしまいます。電子黒板は画面を保存しておけるので、何度も書き直す必要がなくなり、次回の授業をはじめる際に前回の振り返りに使うことも可能です。
ノートを取るのが遅い児童や生徒がいても、後から保存した画面を表示し直して、ゆっくりと書き込んでもらうこともできるので、授業も進めやすくなります。児童や生徒のが書き込んだ内容も保存できるので、児童・生徒の作品を残したり、考えを比較したりするなどにも使えます。教員だけでなく、児童や生徒の画面を共有し合うこともでき、授業の活性化やクラスの一体化が図れ、協働学習を活発に進めることが期待できます。
従来の機器とは異なるメリットや利便性
これまでもプロジェクターを教室に持ち込んで使用したり、視聴覚教室などで大型スクリーンや大型テレビで映像を使った学習を行ってきたりした学校や教員もいることと思います。従来の機器とは何が違うのでしょうか。
プロジェクターを使う場合は教室の照明を落としたり、視聴覚教室では暗幕をかけて窓からの光を遮ったりするなど、暗くした特別な環境での授業が一般的です。そのため、プロジェクターや視聴覚教室の利用は特別な時間となり、手元が暗いので映像授業に集中した上で、ノートの書き込みや意見交換は後から行うといったスタイルの授業が基本となりました。
しかし、電子黒板の場合は照明を消さずとも、画面がくっきり見えるので、通常の授業環境で利用できます。その上で拡大表示や動的な表現ができるので、従来の授業をより柔軟にできるようになるのがメリットです。あらかじめ用意したデジタル教材を表示したり、保存しておいた内容も即座に呼び戻して表示できたりするので、板書時間を削減でき、指導のために時間をより割けます。
教員が生徒たちに背を向けて板書している間、集中力が途切れて悪戯をする子どもたちもいれば、教員が見ていないわずかな時間でいじめなどが行われているケースも少なくありません。電子黒板の活用で、教室中を見渡す時間が増えれば、子どもたちの集中力を途切れさすことなく、丁寧な指導に役立ちます。
電子黒板の導入や利用にあたって
電子黒板を教室に設置する場合は、次の点に気をつける必要があります。設置するためのスペースの余裕があるか、子どもたちや教員がスタンドにつまずくなど安全性の問題はないか、安全面に配慮することが大切です。動作環境としてスクリーンへの光の映り込みがないかや、スクリーンに人の影ができないかの配慮や調整も必要となります。
電子黒板と一緒に使うICT環境の導入や整備も検討しなくてはなりません。実物投影機(書画カメラ)は教科書やノート、作成したプリントなどを電子黒板に拡大表示させるために必要な機器です。また、電子黒板でインターネット上のコンテンツなどを投影して使いたいなら、高速インターネットや無線LANなどの導入が必要です。各児童や生徒にパソコンやタブレットなどを使わせて、電子黒板への参加をさせたい場合にもインターネット環境を整えておく必要があります。
電子黒板と各自のタブレットを連携させた授業は、児童や生徒の授業への参画意識が高まり、学習効果も高まるメリットがあります。タブレットに書き込んだクラス全員分の回答を電子黒板に一覧表示させることもできるので、クラス全員の意見をお互いに知ったり、比較し合ったりすることも可能です。
なお、電子黒板とタブレットを連携させるにも、専用のソフトウェアが別途必要になりますので、導入費用や予算における配慮も求められます。
電子黒板や周辺機器を使いこなすには、教員の知識や経験だけでは難しいケースも少なくありません。設定や操作などの技術的なサポートをはじめ、授業で使うデジタル教材や表示方法などのアドバイスや提案もしてくれるICT支援員も、あわせて導入できるようにすると安心です。