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平成29・30年改訂 学習指導要領について(小学校)【自治体事例の教科書】

平成29・30年改訂 学習指導要領について(小学校)【自治体事例の教科書】

文部科学省は平成29年3月31日に小学校学習指導要領の改訂を実施しました。新小学校学習指導要領等は令和2年度から全面的に実施されますが、平成30年度から一部を移行措置として先行的な実施を求めています。平成29・30年改訂の新小学校学習指導要領の基本的な概要と、これからの小学校教育で重視されることについて見ていきましょう。

【目次】
■平成29・30年改訂の基本的な考え方
■知識の理解の質を高め資質や能力を育むためには
■授業改善の活性化について
■教育内容の主な改善事項について

平成29・30年改訂の基本的な考え方

これまでの我が国における学校教育の実践や蓄積を生かすとともに、ベースとなる教育基本法や学校教育法などを踏まえ、子どもたちが未来社会を切り拓くための資質・能力がいっそう確実に育まれる教育指導を行っていくことを目指すものです。そのためには、子どもたちに求められる資質・能力とはどういうものなのかを、家庭や地域社会と共有し、連携することが重要となってきます。つまり、今後の教育指導では、社会に開かれた教育課程が重視されるということです。

次に、知識および技能の習得と思考力、判断力、表現力などをバランスよく育成していく現行の学習指導要領の枠組みや教育内容を維持しながらも、知識の理解の質をさらに高められる、確かな学力の育成が求められます。

三つ目として、平成30年度から先行される特別教科化などを中心に、道徳教育の充実と体験活動を重視した指導が必要です。体育や健康に関する指導を充実させることで、豊かな心や健やかな体の育成を目指さなくてはなりません。

各学校においてはこれらの3本の重点課題を柱に、学習指導要領についての理解を深め、創意工夫を生かした特色ある教育課程を編成し、実施していくことが求められます。

知識の理解の質を高め資質や能力を育むためには

改訂の二つ目に挙げられた、知識の理解の質を高め資質や能力を育む教育を行うには、どのような指導を行っていけばいいのでしょうか。重視されるのは、主体的かつ対話的で深い学びです。

教師は何ができるようになるかを明確化して、指導に臨まなくてはなりません。知・徳・体のバランスに優れた生きる力を子どもたちに育むべく、何のために学ぶのかという学習の意義を、子どもたちと共有することも大切です。ただ、時間割どおりに教科書に沿って授業を進めていくのでは、一方通行になり、主体的かつ対話的な深い学びは成り立ちません。

まずは、何のために学ぶのか、学ぶことでどのような意義があるのか、子どもたちとコンセンサスを図り、学ぶ意欲を引き出すことが必要です。そのうえで、子どもたちが学ぶ意欲を高めて、ぐんぐん吸収していけるよう、授業の創意工夫や教科書などの教材の改善を引き出していくことが求められます。

授業改善の活性化について

現代およびこれからの子どもたちは、情報スピードが速く、グローバルでIT技術がどんどん進化を続ける変化の激しい時代に生きています。変化の激しいグローバルな時代を生き抜くためには、子どもたちの知識の理解の質の向上を図り、これからの時代に求められる資質・能力を育んでいくことが必要です。

これまでの我が国における教育実践の蓄積に基づいた授業改善の活性化を通じて、未来を生き抜く力を育んでいかなくてはなりません。小学校においては英語教育やプログラミング教育がスタートするとともに、いじめ問題や殺傷事件などの低年齢化が問題視される中、道徳教育や体験学習をこれまで以上に重視していかなくてはなりません。

もっとも、これまでとまったく異なる指導方法を導入しなければならないと焦る必要はなく、ベテラン教員や先輩教員が蓄積してきた教育実践のノウハウを若手教員にもしっかりと引き継ぎながら、今後の課題に向けて授業を工夫・改善することが大切です。

教育内容の主な改善事項について

小学校において、これからの時代に求められる資質・能力を育んでいくうえでは、以下のような能力の育成や教育の充実が求められます。

まず、言語能力の確実な育成が大切です。今の時代の若者は言葉が乱れ、本来の意味を適切に理解できていないケースが少なくありません。また、ネットの活用により、ネットスラングや特有のネット用語が横行し、正しく美しい日本語が忘れさられる傾向が見られます。若者言葉やネット用語もひとつの文化ではありますが、それらを使いこなす前提として、正しい日本語を確実に理解したうえで適切に使うことが望まれます。

小学校の国語教育では、抽象を押さえて考えるなど情報を正確に理解させ、適切に表現する力の養成が必須です。また、実験レポートの作成や、学級会や道徳の授業などで立場や根拠を明確にして議論を行うなど、各教科において言語活動を充実させていくことも大切です。

かつては理数系に強いのが日本の若者の強みでしたが、近年は一気に能力が低下し、世界に追い抜かされている状態です。そこで、前回の改訂において理数教育の充実を図り、2~3割ほど授業時数を増加させました。今後はさらに算数の授業において日常生活などから問題を見いだす活動や、理科において見通しを持った観察や実験を充実させ、学習の質の向上を図っていくことが求められます。算数においてはデータを収集・分析しながら、傾向をとらえて課題を解決する統計教育を深め、理科における自然災害を学ぶ機会を充実させることも必要です。

体験活動の充実を通じて、生命が有限であることや自然の大切さ、挑戦や他者との協働の重要性の理解を深めていくことも欠かせません。そのために、特別活動の時間として自然の中での集団宿泊体験や職場体験などに積極的に取り組んでいくことが大切です。

グローバルな時代を生き抜く力を養うべく、小学校の段階から外国語教育の充実が図られます。中学年で外国語活動、高学年からは外国語科が導入されることとなりました。新教材の整備や教員の養成・採用・研修の一体的な改善や専科指導の充実、外国人講師などの外部人材の活用といった条件整備を行い、新たにはじまる外国語教育を支援していきます。

小学校から高等学校に至るまで一貫した外国語学習を目指し、外国語能力の向上を図るうえでの目標を設定することが大切です。それと同時に国語教育との連携を図り、外国語と比べた日本語の特徴や言語の豊かさに気付く指導を図り、母国語の素晴らしさを理解させることも必要です。

日本語への誇りを育み、グローバルな世界に飛躍していくうえでは、日本の伝統や文化を知り、世界に発信していけることも大切です。そのために、古典など我が国の言語文化をはじめ、社会科学集を通じて地域にある文化財や年中行事を理解、体験すること、音楽の授業を通じて郷土の音楽や和楽器に親しんだり、家庭科の時間を通じて和食や和服に親しんだりすることも求められます。

情報が飛び交い、IT技術が進化し続ける時代を生き抜き、羽ばたいていくうえで、プログラミング教育を含む情報活用能力の育成も不可欠です。教科を問わず、コンピュータなどのICTを活用した学習活動の充実を図っていくことが求められます。また、総則や算数、理科、総合的な学習の時間などを使い、コンピュータでの文字入力などの習得やプログラミング的思考の育成を図っていくことも大切です。

そのほか求められる教育指導として、主権者教育、防災・安全教育、消費者教育の充実も推進していくことが必要です。選挙権が18歳と引き下げられたことに伴い、早期の段階からの主権者教育が重要になりました。社会科においては、国民として政治への関わり方について自分の考えをまとめたり、市区町村による公共施設の整備や租税の役割の理解したりすることをはじめ、特別活動における子どもたちが主導の主体的な学級活動や児童会活動が行えるよう、環境を整備し、サポートをしていきましょう。

〈参照元〉

文部科学省_小学校学習指導要領(平成29年告示)
(https://www.mext.go.jp/content/1413522_001.pdf)

文部科学省_幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領等の改訂のポイント
(https://www.mext.go.jp/content/1421692_1.pdf)

文部科学省_小学校学習指導要領(平成29年告示)解説総則編
(https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/
2019/03/18/1387017_001.pdf
)

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