保険者機能強化推進交付金とは
PDCAサイクルによる取組の一環で、自治体への財政的インセンティブとして、市町村や都道府県のさまざまな取組の達成状況を評価できるよう客観的な指標を設定し、市町村や都道府県の高齢者の自立支援、重度化防止等に関する取組を支援する新たな交付金が創設されました。それが「保険者機能強化推進交付金」です。新たな交付金「保険者機能強化推進交付金」は、2018年度より、200億円(全額国費)の追加財源を確保して運用がはじまっています。
保険者機能の強化とは
平成29年介護保険法改正により、次のPDCAサイクルにより、保険者機能の強化が強化されました。まず、市町村は、国による分析支援を受け、データに基づく地域課題の分析をし、取組内容や目標の計画への記載をします。そのうえで、保険者機能の発揮・向上(取組内容)として、リハビリ職等と連携して効果的な介護予防を実施したり、保険者が、多職種が参加する地域ケア会議を活用しケアマネジメントを支援したりします。取組には、都道府県が研修等を通じて市町村を支援します。そして、要介護状態の維持・改善度合いや、地域ケア会議の開催状況といった適切な指標による実績評価を行います。このサイクルを繰り返すことで、保険者機能の強化を図るものです。実績評価の際の市町村の評価指標として、主なものは次の6つあります。
1つ目は、PDCAサイクルの活用による保険者機能の強化です。これは、地域包括ケア「見える化」システムを活用して他の保険者と比較する等、地域の介護保険事業の特徴を把握しているかといったことです。
2つ目は、ケアマネジメントの質の向上です。これは、保険者として、ケアマネジメントに関する保険者の基本方針を、ケアマネジャーに対して伝えているかということになります。
3つ目は、多職種連携による地域ケア会議の活性化が挙げられています。地域ケア会議とは、行政職員、センター職員、介護支援専門員、介護サービス事業者、保健医療関係者、民生委員住民組織、本人・家族等が参加して行われます。ケース当事者への支援内容の検討、地域包括支援ネットワーク構築、自立支援に資するケアマネジメント支援、地域課題の把握などを目的として行われるものです。地域ケア会議において多職種が連携し、自立支援・重度化防止等に資する観点から個別事例の検討を行い、対応策を講じているか、地域ケア会議における個別事例の検討件数割合はどの程度かといった点での評価です。
4つ目は、介護予防の推進です。介護予防は、高齢者が要介護状態等となることの予防や要介護状態等の軽減・悪化の防止を目的として行うものです。とくに、生活機能の低下した高齢者に対しては、リハビリテーションの理念を踏まえて、「心身機能」「活動」「参加」のそれぞれの要素にバランスよく働きかけることが重要となります。リハビリテーション専門職等が、地域包括支援センターと連携しながら、通所、訪問、地域ケア会議、サービス担当者会議、住民運営の通いの場といった介護予防の取組を総合的に支援することにより、介護予防の機能強化を図れることが、市町村介護予防強化推進事業や先行事例等から明らかになっています。介護予防の推進は心身機能の改善だけを目指すものではなく、日常生活の活動を高め、家庭や社会への参加を促し、それによって一人ひとりの生きがいや自己実現のための取組を支援して、生活の質の向上を目指すものになります。評価指標としては、介護予防の場にリハビリテーション専門職が関与する仕組みを設けているか、介護予防に資する住民主体の通いの場への参加者数(65歳以上の方)はどの程度かといった点が挙げられます。
5つ目は、介護給付適正化事業の推進です。介護給付適正化とは、介護サービスを必要とする利用者を適切に認定し、適切なケアマネジメントにより利用者が真に必要とするサービスを見極めたうえで、事業者がルールに従ってサービスを適切に提供するよう促すことです。持続可能な介護保険制度へつなげるため、適切なサービスの確保とその結果としての費用の効率化を図り、介護保険制度への信頼が高める必要があります。評価指標では、ケアプラン点検をどの程度実施しているか、福祉用具や住宅改修の利用に際してリハビリ専門職等が関与する仕組みを設けているか等について挙げられています。
6つ目は、要介護状態の維持・改善の度合いについてです。これは、要介護認定者の要介護認定の変化率はどの程度かということについて評価されます。
また、都道府県での実績評価の際の指標については、管内の地域分析や課題の把握、市町村向けの研修の実施、リハビリ専門職等の派遣状況等を設定しています。
保険者機能強化推進交付金について
保険者機能強化推進交付金は、国民健康保険制度の保険者努力支援制度とともに、全世代型社会保障改革の大きな柱である疾病予防・介護予防の実現や健康寿命の延伸等に向けた重要施策として位置付けられています。保険者機能強化推進交付金の抜本的な強化を通じ、地方自治体の取組を支援していくことが期待されています。
具体的には、令和元年6月21日閣議決定された「成長戦略フォローアップ」において、財源を含めた予算措置を検討し、2020年度にインセンティブ措置の抜本的な強化を図るものとされています。自治体による先進的な介護予防の取組が横展開され、健康寿命の地域間格差の縮小にも資するよう、強化を図るものです。
さらに、各評価指標や配点について、成果指標の導入拡大や配分基準のメリハリを強化するなどの見直しを行うこと、介護予防や認知症予防につながる可能性のある高齢者の身近な「通いの場」を拡充するとともに、介護予防と保健事業との一体的実施を推進することについても記載されています。介護予防と保健事業との一体的実施を推進する際は、運動など高齢者の心身の活性化につながる民間サービスも活用するとされています。また、「介護助手」など介護施設における高齢者就労・ボランティアを推進するとともに、個人へのインセンティブとして、ポイントの活用等を図るとも記載されています。
2019年度評価指標の見直しの概要
2018年度評価結果は、都道府県分の得点率は87.4%、市町村分の得点率は67.2%となりました。この結果を踏まえ、2019年度評価指標においては、達成状況の高い指標等は配点を減らし、メリハリ付けを実施予定としました。また、都道府県と市町村が協力関係を構築し、市町村の施策が押し上げられることが重要であり、都道府県から施策が進んでいない管内市町村に対しとくに重点的な支援を促すため、都道府県の評価指標において、管内市町村で得点が著しく低い市町村がある場合、減点とする指標を新たに導入することになりました。ほかにも、アウトカム指標(要介護状態の維持・改善の度合い)について、対象に要支援者を追加する等の精緻化を実施予定です。都道府県分としては、管内市町村の「通いの場の参加率」等の達成状況を評価する指標を追加しました。
2018年度は、初回で、内示時期が遅くなったため、交付金を活用した事業を実施しづらかったと考えられます。2019年度は、評価指標を本年2月に通知し(配点やアウトカム指標については別途通知)、7月目途で内示予定としました。保険者機能として、予防・健康づくりの推進に加え、それらの取組を通じ、介護サービスの基盤としての地域づくりにつなげていくことが求められています。