水力発電とは
水力発電は、二酸化炭素を排出せずに電気を供給する発電方法です。貯水池式、調整池式、流れ込み式、揚水式の主に4つの方法があり、水流そのものや水が落下する力を利用して電気を発電します。ダム以外にも河川の流水や農業用水などを利用した小水力発電などがあります。
近年は大規模な水力発電所の建設はほぼ完了しており、中小規模の開発が中心となっています。水力発電を核とした地場産業の活性化など、今後のさらなる発展が期待されています。
水力発電のメリット
水力発電にはさまざまなメリットがあります。ここでは、水力発電ならではの特徴とメリットについて紹介します。
・二酸化炭素排出が少ないクリーンエネルギー
火力発電所からは二酸化炭素などの温室効果ガスが発生しますが、水力発電は水流のエネルギーによって発電するため、温室効果ガスを発生させずに電気を供給することが可能で、温暖化防止の観点から注目されている発電方法です。
・水力発電の特徴を活かした電気の供給
水の落下エネルギーなどを利用してタービンを回転させる水力発電は、たとえば火力発電のように高圧水蒸気を製造してその流体エネルギーでタービンを回転させる方式ではないため、他の電源と比較して「非常に短い時間で発電開始(3~5分)が可能」「電力需要の変化に素早く対応(出力調整)が可能(流れ込み式を除く)」という特徴があります。
このような特徴を生かして、水流をそのまま引き込む「流れ込み式」はベース供給力として、「調整池式」「貯水池式」「揚水式」はピーク供給力として、なくてはならない重要な役割を果たしています。
・純国産エネルギー
化石燃料などエネルギー源のほとんどを海外から輸入しているという日本にあって、国内の水資源を利用した水力発電は安定的な純国産エネルギーと言えます。
日本列島は水資源に恵まれており、水力発電に適した地形条件が多く存在します。気象条件の影響を受けやすく、発電が不安定になりがちな太陽光や風力発電と比べて、長期的に安定した電気供給が可能な自然エネルギーです。
水力発電事業を推進するための取り組み
水力発電所の設置には、長い期間を要します。建設工事には高度な施工技術が求められ、環境保全に考慮しながら行う必要があります。水力発電の開発促進のためには、コスト削減や新技術の開発による完成期間の短縮など、さまざまな課題があります。発電所を設置する場所の調査や建設計画はもちろん、地元の了解や自治体の許可を得なければいけません。ここでは、国が水力発電事業を推進するために講じている取り組みについて紹介します。
・自治体への交付金
水力発電は自治体の理解と協力が必要不可欠であり、水力発電が地域の発展に貢献できるよう、自治体や事業者に対する交付金や補助金などの施策が制度化されています。
発電所を設置する自治体に対しては、電源立地地域対策交付金が受給されます。これは、発電用施設の設置や運転の円滑化を図ることを目的に制定された交付金で、地域事業にも充てられます。
発電所が設置される地方公共団体に対しては、水力発電によって供給される電力量や出力によって交付金が支給されます。たとえば、5,000kW以上の発電所の場合で、1つの市町村に設置される場合は、交付額の限度額は5,500万円、5,000kW未満の発電所の場合は4,000万円以内の範囲で交付金が交付されます。
交付期間は原則として7年間ですが、市町村が協力して水力発電の設置や運営に携わっている場合などは、最大で40年間交付を受けとることも可能です。
この交付金は、住民の生活をより良くするための産業復興を目的に、公共用施設の整備費用や地域活性化事業、福祉対策事業などに利用できます。
・事業者への補助金
水力発電の設置には多額の費用がかかります。国は水力発電を設置する事業者に対して、建設費に充てる補助金制度を設けています。これは、中小水力発電の開発を促進することが目的で、補助率は発電所の出力規模などによって異なります。
対象事業は水力発電施設の設備や改造などで、ダム、水車、発電機、取水設備、貯水池または調整池などの設置や改造が対象です。また、経済産業大臣が認めた設備も対象です。
設備費用だけでなく、公営電気事業者などが新規に行う開発に対しても、補助金が支給されます。具体的には、発電所の運転開始から一定期間の間に発生した借入金の利子の一部を国が補助します。これも出力規模によって補助率が異なります。
水力発電の実施例(水の戸沢小水力発電所)
まとめ
水力発電事業は二酸化炭素排出をせずに、国内の水資源を活かして行えます。地域活性化に貢献でき、設置される自治体や事業者に対する補助金制度もあります。地域が協力しながら中小水力発電の促進を進めていくことが大切です。