リノベーションまちづくりとは
リノベーションまちづくりとは、まちが抱える都市・地域経済課題を解決し、地域を再生させるため、民間のまちづくり会社が主導するかたちで、補助金に頼らずに遊休不動産をリノベーションし、再生することで都市型産業の集積を行い、新しいまちのコンテンツ(産業)を生み出し、雇用などを創出する取り組みです。そのためには自治体などのサポートが不可欠です。
リノベーションを行う対象遊休不動産は民間所有の場合と公的不動産の場合の2パターンがあります。リノベーションを行い、エリア価値向上を実現するリノベーションを行うという意味では両者の違いはありませんが、自治体などの関わり方が少し異なります。
民間不動産活用型は、民間による主体的な遊休不動産再生の取り組みで、自治体などはエリア価値向上を図るためのエリアコンセプトを策定し、意見調整の場などを設けながらコンセプトに沿った民間による遊休不動産の再生を促します。
遊休不動産の改修や運営については民間事業者が主体となりますが、コンセプトの策定等において自治体などの取り組みが重要となります。
次に、さまざまな工夫を行いながら地域活性を促進した事例を紹介します。
事例①【家守構想】北九州市(福岡県)
北九州市(福岡県)では、小倉都心地区の魚町商店街エリアにおいて「地区内の特色を活かした都市型ビジネス振興のコンセプトや具体的な空きオフィス等の活用策」からなる「小倉家守(やもり)構想」を公民連携により策定。同構成に基づいた小倉都心部の活性化に取り組んでいます。
「家守」とは、江戸期の大家さんのこと。町人地は不在地主が多く、地主に代わって宅地内を差配する『家守=家主=大家』が宅地ごとに 1~2 名いました。家守はプロパティマネージャーとして賃料を確実に得るための店子の業種選定から起業育成までを担っていたほか、町の所用を行い、町全体のマネジメントも行っていました。小倉家守構想は、そうした江戸期の家守の機能を現代に復活させようという試みです。
同構想では行政と民間とでそれぞれ役割分担がなされており、行政は建築物の用途変更や消防法の適用確認など各種手続の相談窓口、広報PR、不動産オーナーへの啓発などに取り組みます。民間事業者は、リノベーションを通じた雇用の創出や地域の新しいコンテンツ収集などの役割を担い、不動産オーナーをサポートしながら事業計画を組み立てます。
これらの取り組みの結果、2010年に魚町商店街の通行量が約1万1,000人だったのが、 2014年には1万3,000人と2割近く増加しました。
事例②【ベンチャータウン】名古屋市(愛知県)
名古屋市(愛知県)は「名古屋市産業活性化プラン」における創業支援プロジェクトとして、「伏見・長者町ベンチャータウン構想」を推進しています。
同構想は市内の「錦2丁目まちづくり連絡協議会」などによる遊休不動産利活用の取り組みを踏まえ、ベンチャー産業を育成する地区として中区錦二丁目長者町を位置づけたものです。
具体的には、低層部分に商業機能を兼ね備えたビルの中上層階を利活用し、ベンチャーオフィス、アンテナショップ、サテライトワークスペース、交流サロン、インターネット放送局などを誘導し、都市型産業の集積や情報発信、集客を図っています。
また、交流サロンやアンテナショップなどの共同利用施設を「コア」として位置づけ、これを中心に周辺の小規模な空き室等を「サテライト」としてベンチャーオフィスやワークスペースに拡大していく空間展開も行っています。
事例③【SOHOまちづくり】千代田区(東京都)
千代田区(東京都)は「千代田SOHOまちづくり推進検討会」をサポートし、は神田地区の再生を目的にした「家守」による協働型タウンマネジメントを実践。中小ビルの連携による SOHO の拠点づくりを意図した「SOHOまちづくり」構想を推進しました。
小規模敷地の上に低層住宅や店舗が集まる秋葉原・神田等の地区はバブル期の地価高騰を背景に中小ビルが密集する地区ですが、バブル崩壊で空室が目立つようになりました。そこで、中小規模のビル街の空洞化防止とコミュニティ活性化、若者が集うまちへの再生するため、「家守方式」で地区の活性化を図る同構想に基づいたまちづくりが開始されました。
「家守方式」は財団法人まちみらい千代田と日本政策投資銀行とが協働で検討。事業化はビルオーナーとノウハウを蓄積した家守事業者(民間)が担いました。このリノベーションまちづくりは、中小ビルオーナーをまとめながらエリア価値の向上を実現した代表的な事例です。
<参照元>
北九州市「リノベーションまちづくりの推進」
内閣官房まち・ひと・しごと創生本部「地方創生 事例集」
内閣府地方創生推進事務局 「稼げるまちづくり取組事例集」 等