千葉県柏市
柏市では、2050年までに世界が抱える課題への解決モデルとなることを目指しています。具体的には、環境・エネルギー問題に対する「スマートシティ」、超高齢化社会問題に対する「健康長寿都市」、日本経済再生を担う「新産業創造都市」となることを宣言しています。この3つの課題を解決するには、最先端の知を結集して取り組む必要があります。そのためには、市民や企業を中心として、地域一丸となって実現に向けて努力しなければなりません。
現状に目を向けてみると、環境問題については市民の意識が高く、柏市と事業者が連携しながら取り組むことで、温室効果ガスの排出量は減少傾向にあります。東京圏に近いことから、多様な価値観や生活意識をもつ市民が多いのが柏市の特徴で、市民団体による自主的な市民公益活動や、地域活動が幅広く行われているのも柏市ならではです。また、柏市は全国平均と比べて出生率が下がっていますが、東京圏に近いために人口は少しずつ増加しています。柏市ではこうした活動を支援し、市民の健康維持を図るため,市民活動センター機能の充実や、市民公益活動補助金の交付などの取り組みを行っています。
福岡県北九州市
北九州市では、エネルギーを効率よく使い、温暖化対策と安定したエネルギー供給を両立させるための、総合的なエネルギー基本政策を策定しています。特にエネルギー消費量の多い響灘地区では、スマートインダストリの構築を検討しており、エネルギー消費をさらに効率アップしようとしています。また、「ゼロ・カーボン」と「子育て支援・高齢者対応」のまちづくりをしているのが北九州市の特徴です。
さらに、北九州市では次世代自動車の普及を目指し、将来的な化石燃料の枯渇に対応する自動車社会の構築を進めています。そのために電気自動車・プラグインハイブリッド自動車の普及を促進し、電気自動車用充電インフラの整備を進め、さらに水素燃料電池自動車・バス(FCV)の普及に向けて積極的に取り組んでいます。また、北九州市では青島市、天津市、大連市のエコタウン整備の成果を踏まえ、新たな北九州エコタウンの海外展開を計画しています。
神奈川県横浜市
横浜市の環境未来都市の取り組みには、以下の3つがあります。
○横浜スマートシティプロジェクト
横浜スマートビジネス協議会(YSBA)を中心として、防災性・環境性・経済性に優れたエネルギー循環都市の構築を目指します。
○持続可能な住宅地モデルプロジェクト
少子高齢化など地域の課題解決に取り組み、魅力あるまちづくりのモデルを創出します。
○みなとみらい2050プロジェクト
エネルギー、グリーン、アクティビティ、エコ・モビリティなどの取り組みについて、みなとみらい21地区を中心に推進します。
横浜スマートシティプロジェクトにおいては、横浜市では仮想の発電所(バーチャルパワープラント)構築に取り組んでいます。横浜市(温暖化対策統括本部・教育委員会・総務局)と東京電力エナジーパートナー、東芝が連携して進める事業で、市内小中学校に蓄電池を設置し、蓄電池の群制御による「仮想の発電所」の構築を推進しています。また、持続可能な住宅地モデルプロジェクトにおいては、横浜市(温暖化対策統括本部・建築局・区役所)と東京急行電鉄、相鉄グループ、URが連携して事業に取り組みます。
岩手県大船渡市
大船渡市では、気仙広域環境未来都市計画を推進しています。具体的には、「地産地消型エネルギー社会の構築」、「超高齢社会に対応し、誰もが暮らしやすいまちづくりの推進」、「産業振興と社会基盤の整備の進展」の3つの計画が進行中です。
「地産地消型エネルギー社会の構築」として、東日本大震災による長期の大規模停電の経験を踏まえ、メガソーラーなど再生可能エネルギー発電所の建設を推進し、災害に強いまちづくりを進めています。
「超高齢社会に対応し、誰もが暮らしやすいまちづくりの推進」においては、高齢者にやさしく、環境負荷の軽減されたまちの実現を目指しています。被災した中心市街地の整備をし、効率的な施設配置を図り、都市機能の集約化を進めています。
「産業振興と社会基盤の整備の進展」においては、地場の産業を活性化する環境共生型木造住宅の開発を行っています。地元の木材を最大限に利用し、環境共生型木造住宅の設計仕様を策定しました。高い断熱性や気密性があり、さらに太陽電池や蓄電池などを備えた住宅の普及に努めています。
福島県南相馬市
2011年12月に策定された南相馬市復興計画により、「心ひとつに世界に誇る南相馬の再興を」をスローガンとして、「すべての市民が帰郷し地域の絆で結ばれたまちの再生」「逆境を飛躍に変える創造と活力ある経済復興」「原子力災害を克服し世界に発信する安全・安心のまちづくり」の3つの基本方針を示しています。この復興の主役は南相馬市民であると位置づけ、環境問題や少子高齢化対策、一次産業の再生などとともに環境未来都市への取り組みを推進しています。
環境未来都市として、「原子力発電に依存しない持続可能で環境負荷の少ないエネルギー確保の手段を確立すること」「地域コミュニティの再生を中心として、誰もが元気に暮らすことができること」「地域の基幹産業が継続的に発展していくこと」の3つについても、具体的かつ長期的な取り組みが進んでいます。
低炭素・省エネルギーに関する取り組みにおいては、津波浸水被災地を中心に地理的用途を精査した上で、大規模な太陽光発電、風力発電、バイオマス発電による発電施設を設置・運用します。また、個人で太陽光発電施設を設置する場合のための補助金助成や、太陽光発電施設設置事業の資本を積極的に活用し、広く市内に普及させていくこととしています。さらに、津波被災地域の防災集団移転に関連し、再生可能エネルギー(太陽光発電)とHEMS(家庭用エネルギー管理システム)を活用した、省エネ集落を作る計画を推進しています。そして、電力に関する教育(環境学習)を行い、省エネや電気の必要性を学習させる取り組みも行っています。
少子高齢化対策では、地域の介護・福祉を充実させるとともに、一次産業の再生を目指します。2050年を見据えた取り組みとして、産業用・介護用ロボット開発など新たな産業の誘致や、放射線医療を中心とした医療基盤の整備も進行中です。