「稼げるまちづくり」とは
「稼げるまちづくり」とは、住民の所得や雇用の増加を目的に、その地域に賑わいと活力を生み出すことで民間投資の喚起などを行うことです。この取り組みについて、政府は「地方創生推進交付金」などを通じて「稼げるまちづくり」を支援しています。
次に、「稼げるまちづくり」にチャレンジしている事例を紹介します。
事例①【人材育成】遠野市(岩手県)
遠野市(岩手県)では、東日本大震災をきっかけに、市と市外企業と連携し、廃校を活用した次世代のまちづくり人材の育成拠点となる「遠野みらい創りカレッジ」を設置しています。ここでは企業研修や国内外の学生のワークショップなどが開催されています。
また、まちづくり会社が空き家や空き店舗を活用してシェアハウス、シェアオフィス、ゲストハウスなどを起業し、外部人材の移住や起業をサポートしています。空き店舗でクラフトビールを開発するなど、国内有数のホップ生産地である強みを活かした起業・創業等の拡大も期待されるなど、「稼げるまちづくり」を目指した人材育成やインフラ整備が進んでいます。
事例②【創業サポート】江津市(島根県)
江津市(島根県)では、挑戦意欲のある若者を発掘し、地域の課題解決につながるビジネスを募集する「ビジネスプラン・コンテスト(Go-con)」を開催しています。
コンテスト受賞者等の創業をサポートする環境整備を行うため、官民連携組織として「NPO法人てごねっと石見」を設立し、空き店舗を活用した創業支援や人財育成のほか、駅前活性化事業などを推進しています。こうした取り組みにより、リーマショック以来減少傾向だった移住希望者が増加に転じるなどの効果が出ています。
事例③【インバウンド】高山市(岐阜県)
高山市(岐阜県)では官民連携で歴史的、伝統的な街並み景観を長年に渡り保存してきたことや、海外への積極的なプロモーションにより、外国人観光客が急増しています。高山祭りのユネスコ無形文化遺産登録により、さらなるインバウンド拡大も期待されています。
観光インフラ整備の一環として、飲食物の販売を主体とした、15店舗からなる外国人観光客対応のおもてなし拠点施設「EaTown(イータウン)飛騨高山」を整備したほか、通訳案内士の育成にも注力しています。
事例④【まちなか回遊】高岡市(富山県)
高岡市(富山県)は、日本三大大仏のひとつである「高岡大仏」や国宝「瑞龍寺」などの観光資源を活かしながら、観光客の“まちなか回遊”の向上に取り組んでいます。
そのため、銅器や漆器など伝統工芸の「ものづくり体験」や展示即売を行う「高岡クラフト市場街」を整備したほか、歴史的な街並みが残る金屋町の空き店舗をショップ兼ギャラリーとして再生しました。「ものづくり」と「商業・サービス」の連携により、賑わいの創出と収益力の向上が図られている点が特徴です。
事例⑤【まち全体がホテル】甘楽町(群馬県)
甘楽(かんら)町(群馬県)では、まち全体をひとつのホテルとして来訪者を迎える「The Hotel 甘楽プロジェクト」に取り組んでいます。
青年海外協力隊の農業研修等を行うNPO法人「自然塾寺子屋」と町や住民が連携し、養蚕業や農業等の地場産業と空き家を活用し、滞在者に農業経験や生活体験を提供しています。観光から移住への転換も目指しています。
また、町内人間国宝の木工藝作品創作映像の英語版制作、外国人向け和菓子作り体験メニューなど、インバウンド観光の拡大に向けた取り組みも実施しています。
事例⑥【温泉×アート】別府市(大分県)
別府市(大分県)は都市ブランドの情報発信により、若年層や女性等の新たな観光客が増加しています。
そのひとつが、NPO法人「BEPPU PROJECT」が中心となり、温泉とアートを核とした別府現代芸術フェスティバル。同時に、クリエイター専用アパートや短期滞在施設も整備し、クリエイターの移住や定住を増やす取り組みも行われています。
また、遊休施設を再生した交流施設を中心市街地に点在させ、回遊性を向上させる工夫も行っています。これにより交流人口の増加や来街者の滞在時間延長に結びついており、賑わいが増す効果が得られています。
事例⑦【林業を活用】真庭市(岡山県)
真庭市(岡山県)では、基幹産業である林業や木材産業で発生する間伐材等の未利用木材等を有効活用した「稼げるまちづくり」に取り組んでいます。
地元企業と市および木材関係団体等が連携して、木質バイオマス発電事業を実施しているもので、大学や研究機関等との連携により、小中高大学の児童生徒や学生を対象にした技術や知識の習得機会も提供しています。
エネルギーの地産地消に加え、高付加価値の新素材開発や産業観光の拡大などにより、地域産業の活性化と雇用の増加が期待されています。
事例⑧【ヘルスツーリズム】上山市(山形県)
上山(かみのやま)市(山形県)は官民一体で滞在型の新たな健康保養地への転換を目指しています。
そのため、医療機関と連携して、豊富な温泉などの地域資源を活かした健康増進事業やヘルスツーリズムの実施、温泉健康施設の整備等を推進する「上山型温泉クアオルト(健康保養地)事業」を実施しています。
同事業により、専門家の医科学的根拠に基づく認定を受けたウォーキングコースを8ヵ所設置し、健康ウォーキングなどが通年開催されています。また、市民だけではなく旅行者も史跡・名所を気軽に散策できる「まちなかウォーキング」や首都圏の中高年や民間企業向けの「クアオルトツーリズム」も実施。これらの取り組みで市内の温泉旅館への宿泊誘導や、まちなかの回遊性の向上が図られています。
事例⑨【歩けばポイント】見附市(新潟県)
見附市(新潟県)では超高齢・人口減少社会によって生じる様々な社会課題を克服するため、「健幸」をまちづくりの基本に据えた持続可能な新しい都市モデルの構築を図っています。
外出の目的となる住民交流拠点や快適な歩行空間を整備し、普段の生活で運動量を増やすまちづくりを展開しているもので、具体的な取り組みのひとつに地域商店と連携した商品券提供事業があります。
これは日々の歩行や運動をすることでポイントが貯まり、1ポイント1円で地域商品券などに交換できる取り組みです。住民の健康づくりを後押ししながら、医療費削減とまちの賑わい拡大を目指しています。
事例⑩【花のまちづくり】恵庭市(北海道)
花苗生産地である恵庭市(北海道)では「花のまちづくり」を推進しています。
個人の庭を対象にしたオープンガーデンコンテストを実施しているほか、商店街の街並み景観整備、道の駅での「花の拠点」の整備などを行っています。コンテスト実施で市民のガーデニング熱が高まったことで地域活性化につながったほか、メディアに取り上げられたことで観光客増などの効果もありました。
また、恵庭駅前に公共施設を集約的に移転させ、民間活力による官民複合施設を整備することで賑わい拠点の形成にも取り組んでいます。
<参照元>
内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局「稼げるまちづくりを支援する包括的政策パッケージ2018」等