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自治体広報紙の課題と取組事例【自治体事例の教科書】

自治体広報紙の課題と取組事例【自治体事例の教科書】

自治体の取り組みを情報発信する広報手段のひとつとして、多くの自治体で発行されている自治体広報紙。情報入手の手段が多様化するなかで自治体広報紙に求められているものとは? 事例などを通じて、そのポイントを探りました。
 
【目次】
■自治体広報紙の多様な役割とは
■事例①【可読性と伝播性】上野原市(山梨県)
■事例②【AR技術を導入】阿倍野区(大阪府)
■事例③【地域の絆】内子町(愛媛県)

自治体広報紙の多様な役割とは

近年、自治体広報紙(以下、広報紙)がアナログな紙から電子化するデジタル化の動きが広がっています。PDF形式でのホームページアップなど簡単なものも含めると7~8割の自治体が広報紙のデジタル化を進めているようです。

デジタル化によりスマホなどで広報紙を閲覧できるようにする環境整備には、「必要な情報を、速く、手軽に入手できる手段」を住民に提供するという意義があり、住民に広報紙をより読んでもらうためには必然的な“時代の波”とも言えるでしょう。

また、さまざまな機能を使いこなすことで、紙媒体では不可能な情報発信ができるのもデジタル化の特長です。たとえば、高齢者や障害のある人のための読み上げ機能や、外国から受け入れた人材や訪日観光客などのために医療情報などを多言語化で情報発信することもできます。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)と連携することで視覚に訴求した情報伝達を行うことでエンタテインメント性を加えて、「読む楽しみ」を付加することも可能です。

一方で、高齢者などスマホの操作が苦手な住民がいることを念頭に、従来の紙による広報紙の読みやすさや見やすさをより充実させる取り組みも依然として大切です。

さらに、広報紙を単なる情報伝達手段としてだけではなく、地域コミュニティの結びつきを深めるツールとして活用している自治体もあります。

次に、独自の工夫で広報紙の魅力を高めている事例を紹介します。

事例①【可読性と伝播性】上野原市(山梨県)

上野原市(山梨県)は山梨県内で初めて多言語デジタルブックで広報紙の提供を開始しています。

従来、自治会加入世帯に広報紙を配布していましたが、新たに同市に越してきた居住歴の短い住民や若年層など自治会非加入世帯に広報紙を届ける手段の開発が同市の課題になっていました。

そのため、スーパーなどに広報紙を置いたりしていましたが、より広範に自治会加入世帯以外の住民にも気軽に読んでもらうため、デジタルブック化を行ったものです。同市は都心から電車で約1時間の立地で都心に電車通勤する住民も多いことから、電車通勤中などにスマホで気軽に読んでもらえる効果などを期待しています。

デジタルブック化にあたって、同市では「可読性」と「伝播性」を重要視。PDFなど紙面がそのまま画面表示される方式では読みにくいため、画面に表示された紙面の読みたい箇所をタップすれば、ポップアップで文字が拡大されて飛び出す表示方式を備えたデジタルブックツールを導入。住民ニーズが高い「紙」の広報紙のデータをそのまま活用してデジタルブック化しています。

また、このツールには手軽に多言語できたり、どの記事が読まれたかなどの反響を分析できる機能もついており、同市ではそれらの機能も活用し、よりよい広報紙づくりに役立てているそうです。

【設定をお願いします】
上野原市の事例を詳しくレポートした記事はコチラから読めます
https://www.jt-tsushin.jp/interview/jt09_morisawa/

 【ARを導入】阿倍野区(大阪府)

阿倍野区(大阪府)はよりわかりやすく市政情報等の発信を行うため、同市の広報紙「広報あべの」にAR(拡張現実)を導入しています。

ARアプリをダウンロードしたスマートフォンやタブレット(多機能携帯端末)を記事などにかざすと、動画が立ち上がり、自動再生されます。紙情報と映像を融合させることで、活字と写真だけでは伝えきれなかった情報をより詳しく、よりわかりやすく発信することが目的です。若年層などに広報紙に興味を抱いてもらうことが期待されます。

平成30年9月号では特集記事「防災を忘災にしない」でARによる情報発信を実施。記事にスマホやタブレットをかざすと非常用持ち出し袋の大切さや入れるべき物品などの啓発・説明を職員が熱演しています。

事例③【地域の絆】内子町(愛媛県)

平成30年全国広報コンクール総理大臣賞を受賞した「広報うちこ」は、内子町(愛媛県)が発行するふるさと情報誌です。地域の子供たちが来の夢を語る『ぼくの夢わたしの夢』、その月の町のニュース、内子町の特色を紹介する『うちこ往来』など、住民の声や内子町の特徴や風土などを分かりやすく情報発信しています。オールカラーで、老若男女の幅広い層の内子町の町民が登場しています。

総理大臣賞を受賞した2017年12月号は『地域づくりの源泉』と題して、人口約300人の同町石畳地区の地域づくりを特集しています。審査員からは「人と地域が織りなすまちづくりのドラマがうまく表現されていて、その醍醐味が伝わる」「他のコーナーでも住民にスポットを当て、地域に寄り添った誌面」と評価されました。

「広報うちこ」は、町にあふれる魅力や笑顔を発信しながら町の住民と町役場の歴代担当者が育ててきた、ふるさとの香りがする広報紙です。そんな「広報うちこ」のコンセプトを象徴しているのが、総理大臣賞を受賞した2017年12月号のプロローグ『この子のために』と題した内子町内に居住する河野さんのエッセイです。以下に、抜粋してその内容を紹介します。

エッセイは「石畳地区に嫁いで来て3年―― 『何もないとこでごめん』 と夫は言うけれど、ここには都会にない、 大切なものがたくさんあると思う。」との書き出しからはじまり、「小さな集落だけど、 みんな生き生きとして素敵。 私も、ここでしかできない子育てをして、 素敵な母になりたい――。」と結ばれています。

内子町に住むことの想いや将来への希望にあふれたエッセイです。

<参照元>
総務省「四国の地域コンテンツ制作・発信の取組事例集」
上野原市ホームページ
阿倍野区ホームページ
内子町ホームページ
自治体通信Vol.09「多くの人に読まれる広報紙づくりで❝愛着❞をもってもらえる自治体に」

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