「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」とは
2019年は、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」における第1期(2015年度~2019年度)の最終年にあたります。第1期が完了すると、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」である地方創生が開始されます。第1期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、総合戦略である地方創生版三本の矢の創設や、ライフステージに応じた地方創生の充実・強化を策定します。その最終年にあたる「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」の方針の主な内容は、第1期の総仕上げと第2期への準備です。
第1期の総仕上げとして、これまでの活動を継続して続けます。そして第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の基本的な考えを整理し、具体的に取り組む主な事例を決めます。第2期は第1期の基本目標やビジョンをより発展させ、強化した取り組みを行います。
ビジョンと総合戦略は国のものと、地方のものがあり、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」における国のビジョンは「長期ビジョン」と「総合戦略」に分かれます。長期ビジョンは「2060年に1億人程度の人口を維持する中長期展望を提示」で、総合戦略の基本目標は「地方ごとにしごとをつくり安心して働けるようにする、これを支える人材を育て活かす」「地方へ新しいひとの流れをつくる」「若い世代の結婚・出産・子育ての希望を叶える、誰もが活躍できる地域社会をつくる」「時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する」の4つです。
地方創生版・三本の矢は「情報支援」「人材支援」「財政支援」です。第2期の枠組みとしては、国のビジョンに関しては大きな変更はなく、総合戦略に関しては2019年内の改訂がありました。地方のビジョンと総合戦略は、国のビジョンと総合戦略を踏まえて創設されるため、ビジョンも総合戦略も内容が大きく改訂されました。
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の5つの政策原則
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を実現するためには、第1期・第2期共通の5つの政策原則を意識することが重要と考えられています。5つの政策原則とは自立性、将来性、地域性、直接性、結果重視です。
自立性を高めるための活動とは、優れた教育を受けるために上京したり、国際的なイベントを東京で集中的に行ったりするのではなく、地方都市でも教育機関を充実させ、国際的なイベントや交流などを地方都市でできる環境を整えるということです。将来性を高めるための活動は、広い範囲に住宅地や施設が点在している今の地方環境の規模を縮小させ、高齢者でもさまざまな施設を利用しやすくすること。地域性を高めるための活動は、地域の習慣や文化などを生かした行事などを行うことです。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の政策原則は、どの地域都市でも実現可能なものであり、地方活性化の基盤となります。
第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の重要な視点と取り組み
第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は総合戦略となる4つの基本目標に沿って、4つの分野で異なる具体的な取り組みを行います。「地方ごとにしごとをつくり安心して働けるようにする、これを支える人材を育て活かす」を目標とした分野では、「地域人材支援戦略パッケージ」などの地方へ人材を集め、地域経済に合った新しい経済の発展を行い、地方高校や大学などで人材を育成する取り組みなどを行います。また、「地方へ新しいひとの流れをつくる」を目標とした分野では、個人単位で募っているふるさと納税を企業にも行い、民間資金を地方に還元する仕組みを作ったり、東京に集中している政府関連機関を地方へ移したり、都市部に住んでいる人に地方の暮らし情報を発進して興味を持ってもらったりする取り組みなどを行っています。「若い世代の結婚・出産・子育ての希望を叶える、誰もが活躍できる地域社会をつくる」を目標とした分野では、地域住民ひとりひとりの希望を叶える少子化対策を行っています。「時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する」を目標とした分野では、地域の交流を支え、交流が少ない地域にはコミュニケーションを生み出す取り組み、スポーツによる健康な街づくりの推進などを行っています。
各府庁の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」への取り組み
「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」は地方自治体だけではなく、各府庁の取り組みにも触れています。内閣府は近年、民間主体の公共空間を使ったエリア価値を上げるエリアマネジメント活動の取り組みに対して「地域再生エリアマネジメント負担金制度」を2018年から実施しています。他の府庁は以下のような取り組みを行っています。
・総務省 圏域における広域連携の推進など
・文部科学省 体育・スポーツ設備を建設する場合の学校施設環境改善交付金
・農林水産省 農山漁村交付金の配給による農山漁村雇用拡大と活性化
・経済産業省 中心市街地活性化支援のための地域まちなか活性化・魅力創出支援事業
農林水産省の取り組みは、地方での子供の農山漁村体験の場をつくる取り組みにつながっています。子供の頃に地域の農山漁村体験をしておくことで、大人になった時に地方へのUIJターンが期待できます。地方にとっても地元の魅力を再発見する機会になり、活性化が期待できます。経済産業省は他にも、経済産業大臣が認定する商業施設設備事業の活性化計画として「特定民間中心市街地経済活力向上事業計画」の取り組みも行っています。
中枢中核都市の考え方
現在日本では東京に人口や企業が極集中していて、地方都市には人口が少ないというとてもバランスの悪い人口分布になっています。この偏った人口分布を改善するための考え方が「中枢中核都市」です。中枢中核都市とは仙台市や大阪市、札幌市など地方都市を活気ある都市にする計画です。企業を誘致したり、地域企業の事業拡大を行ったりして、都市を成長させる目的があります。
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の内閣府の取り組みのひとつである中枢中核都市は、経済面や環境面において魅力ある街づくりを行い、地域社会の発展と活力の中心を担います。また雇用の拡大や医療・教育施設の充実などを行うことで近隣住民の生活の質を底上げし、国際的な投資の受入環境を整えることで、地方都市の自立性・集積性を高くします。例えば東京へ行かなくても高度な医療が受けられる環境と、自然と地域の特性を生かした街づくりを行うことで、東京にはない地方都市ならではの充実した暮らしが実現します。
特に医療機関の充実は今後の少子高齢化社会において、地方都市の共通課題となるため、民間企業や教育機関における疫病予防指導や、医療機関への公共交通機関の整備などが重要となります。医療機関を充実させ、地域住民の健康を支えることで高齢者も活躍の場が増えるため、高齢化社会の地方都市が活力を失う可能性を軽減できます。