奈良県の実施事例
奈良県では全国で100万人の認知症サポーターを養成しようという取り組みである認知症サポーターキャラバンに積極的に取り組んでいます。認知症サポーターは何か特別な活動をしなくてはならないわけではありません。一番重要なのは認知症について正しく理解し、偏見を持たない心を持つことです。
次に認知症の人や家族を温かく見守る応援者として、自分のできる範囲でサポートをすることが求められます。認知症は年齢を重ねれば、ご自身も含めて誰もがなる可能性があり、自分の家族にも起こりうる問題です。そこで、まずは認知症について自分自身の問題と認識することが大切です。そのうえで、自分にできる範囲で友人や家族に学んだ知識を伝えて、正しい認識を普及させたり、認知症の人や支えている家族の気持ちを理解しようと意識したりすることが求められています。
奈良県では認知症サポーター養成講座を積極的に開催しており、県内での認知症サポーターを増やすことに尽力しています。また、認知症サポーター養成講座を担う講師の育成にも取り組んでいます。キャラバン・メイト研修を受講することで、認知症サポーター養成講座を開催し、講師役を務めることができるようになるのです。
神奈川県横浜市金沢区の実施事例
横浜市金沢区でも認知症サポーター養成講座を積極的に開催し、認知症サポーターの充実に努めています。
養成講座は主に認定NPO法人市民セクターよこはまにて開催、運営がなされていますが、各自治会や町内会、シニアクラブなどでも実施されているのが金沢区の特徴です。区を挙げて認知症についての理解を深めよう、支援の輪を広げようと活動を促進しているため、区の取り組みに賛同して地域でも積極的に認知症サポーター養成講座が開かれているのです。
さらに開催日程が合わないケースや、グループなどで積極的に取り組みたいといった場合には10人程度の人数がそろうと出前講座も開催してもらえる力の入れようです。横浜市金沢区の高齢・障害支援課高齢者支援担当が窓口となり、自治会館や団地の集会所、企業の会議室などへ出張して認知症サポーター養成講座を開催しています。
その点、企業勤務者は業務に忙しく、NPO法人などが開催する講座に参加しにくい、地域に在住しているとは限らず、自治会などの開催講座にも参加しにくい実情があります。一方で、金融機関やスーパーなどの商業施設、鉄道やバス、タクシーなどの交通機関といった、認知症の人が訪れたり、利用したりすることが多い企業では、認知症への理解がないと、警察沙汰になるなど思わぬトラブルが発生することも少なくありません。
そのため、従業員教育の一環として金沢区による認知症サポーター養成講座の出張講座は重宝されています。認知症サポーター養成講座を受講したことで、街中や商業施設、駅などを徘徊している高齢者や、買い物ができずに佇んでいる高齢者、品物を手に取ったままレジを通らずに帰ってしまう認知症の人に的確な対応ができ、業務がしやすくなった、家族に感謝されたなど喜びの声が上がっています。
千葉県柏市の実施事例
千葉県柏市では認知症サポーター養成講座を受講して認知症サポーターとなった方で、ボランティアに参加したい方にオレンジフレンズとして登録してもらい、名簿を作成して組織を整えたうえで、オレンジフレンズ活動を行っています。柏市内にある11の地域包括支援センターの管轄する地域に在住または在勤する認知症サポーターが各地域包括支援センターでオレンジフレンズとして登録し、地域の町内会などと協力し合いながらボランティア活動を行う取り組みです。
取り組みの1つとして、徘徊模擬訓練が挙げられます。徘徊していると察せられる認知症の方を見つけた際に、どのように声をかければいいかや、発見したときの対応方法などを学んだり、地域の方に普及させたりする活動です。
また、地域包括支援センターが主催して認知症介護者交流会も実施されています。認知症の人を実際に介護している方と会い、介護をする中で感じている気持ちなどを語ってもらったり、情報交換などを行ったりし、地域の支援の輪を広げていこうという活動です。
さらに認知症カフェとして「かしわオレンジホッとカフェ」も開催しています。オレンジフレンズは地域包括支援センター主催のカフェの運営を補助する活動をはじめ、オレンジフレンズが主体となって運営するカフェも実施しています。認知症の人と介護者などが地域の方と交流したり、安心して外出したりする機会を提供するカフェです。ゲームをしたり、お茶会を開いたり、介護者からお話を伺ったり、認知症の方を見守ったり傾聴する活動をはじめ、介護者が専門家に相談できる機会を設けています。
千葉県白井市の実施事例
千葉県白井市でも認知症カフェを開催しています。平成29年度の認知症サポーター養成講座修了者の有志メンバーと地域包括支援センター職員が、地域で何かできることはないか話し合いの機会を持ち、平成30年4月から認知症カフェ「お楽しみ処」を開催するようになりました。
もの忘れの心配のある方や家族が一緒に参加でき、無理なく安心して地域との交流を図れる機会を提供しています。定期的な開催に至っており、第2・4木曜日は保健福祉センターにて、第3水曜日は西白井複合センターにて開催される体制が整いました。
認知症カフェの運営に携わる人は、認知症サポーター養成講座を受講した認知症サポーターのうち、ボランティアに参加する意欲のある方に、認知症パートナー養成講座というフォローアップ講座を受講してもらい、登録をする形を構築しています。開催している内容は、参加者との対話や傾聴をはじめ、梨トレ体操や脳トレゲームなどの認知症の進行予防にもつながるレクリエーションなどが中心です。
地元の高校生に参加してもらったり、地域のサークルが歌などを披露するイベントなども行われ、脳への刺激を与えたり、介護者の癒しにつなげています。参加する高校生の多くは、市内の高校で認知症サポーター養成講座を実施して認知症サポーターになってもらったもので、長期休みに10名程度の高校生が「お楽しみ処」に参加してボランティア活動に取り組んでいます。
認知症カフェの定期的な開催により、参加者と地域の方との関係性が築けるようになってきており、地域に戻ってからもご家族の話を傾聴するなどの交流が生まれたり、徘徊の際のサポートができたりするなど、よい関係性が生まれてきました。
千葉県匝瑳市の実施事例
千葉県匝瑳市では小中学生向けに認知症ジュニアサポーター養成講座を開催しているのが画期的です。認知症ボランティア養成講座を開催し、その中から小中学生向けの普及活動に協力してくれる人を募り、劇団オレンジを構成しました。小中学生がイメージを持ちやすいよう、劇団オレンジによる寸劇を通じて認知症への理解を深めようとする取り組みです。
認知症ジュニアサポーター養成講座は平成26年から開催されており、その中で劇団オレンジによる寸劇が行われています。高齢者支援課地域包括支援センターが小学生向け、中学生向けの寸劇の台本を作成し、劇団オレンジのメンバーが練習の機会を設けて、小中学生への啓蒙活動に取り組んでいるのです。
寸劇の内容は、孫のお迎えを忘れてしまう、ご飯を食べたのにまだ食べていないと騒ぐ、家に帰れなくなるなど、認知症で起こりやすい具体例を台本にしています。そのうえで、望ましい対応と望ましくない対応を劇団員が演じ、小中学生が自分の祖父母や近所の方、地域でも遭遇しうる認知症への理解を深め、対応について学ぶという取り組みです。