事業目的・役割
利用者支援事業は、子どもや保護者、妊娠中の方の相談に個別に対応し、安心して子育てができる環境を構築するのが目的です。
教育や保育施設に関する悩みに対して、保険や医療、福祉など関係機関と連携して保護者や子どもをサポートするのが大きな役割です。専門職員が利用者と一緒に考え、必要な正しい情報を提供し、利用できる適切なサービスや支援機関を紹介することを事業目的としています。
この事業は利用者と関係機関への架け橋となるべく、平成25年度以前に地域子育て支援拠点事業の一つとして組み込まれました。そこに地域支援機能と利用者支援機能を合わせて強化されたものが、現在の利用者支援事業です。平成26年度からは地域子育て支援拠点事業とは切り離されていますので、そこは認識しておきましょう。
もちろんこれまで以上に関係機関と密接に連結し、地域の子育て家庭支援の機能として大いに働いています。実施主体となるのは市区町村ですが、市区町村が認めた者へは委託等も行えることになっていますのでそこも留意しておきましょう。趣旨としては、子どもと保護者の置かれている環境に応じ、保護者の選択によりさまざまな施設や事業者から良質で適切な支援を提供することにあります。
そのため、市区町村の子ども・子育て支援事業計画とは密接に連携する必要があり、両輪として利用者支援事業が成り立つ構造となっています。市区町村の子ども・子育て支援事業計画のほうでは、地域全体を捉え、子育て家庭の潜在的なニーズも含め需要を見込み、多様な施設や事業を供給する体制です。
一方で利用者支援事業のほうは、一家庭ずつ個別の家庭ニーズを把握し、適切な施設や事業等をスムーズに利用できるよう支援するのが役割となっています。どれだけ利用者の身近にいられるかがポイントとなりますので、機能を果たすために日常的に地域のネットワークを構築し、不足している社会資源の開発など地域連携の強化が必要です。この両輪があって初めて地域の子育て家庭に適切な行政サービスを行うことができるようになるのです。
子育て中や妊娠中の家庭で悩みが発生した場合、利用者支援事業はいつでも助言を行い、利用できる施設や事業を紹介します。たとえば、親を病院に連れていく時に子どもを預けたいという場合には、子育て短期支援事業や一時預かりなどを紹介することもできるのです。子どもに障がいが発生した際は指定障害児相談支援事業所を紹介したり、子育てに心労を抱えた親には子育てサークルや保険センターを紹介したりもします。こうした個別のニーズをいち早く把握し、適切な施設やサービスにつなげる架け橋となることが利用者支援事業の中心的な役割です。個人がなかなか利用できない社会資源を開発し、両者をつなげて地域のネットワークの構築を図ることが重要な使命と言えるでしょう。
家庭での子育ての悩みや問題は日常的に発生するため、子育て中や妊娠中の家庭の身近な場所に拠点を持ち、サービスを実施することも重要です。職員は常にサービスを提供する事業と連携し、サービスを必要とする側と提供する側とを適切につなぐことが求められます。
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・地域子育て支援拠点事業とは
ここで、利用者支援事業とは切り離された地域子育て支援拠点事業についてあらためてまとめておきましょう。
形成された背景は、核家族化や地域のつながりの希薄化を受け、子育てが孤立化し、不安や負担感が肥大したことです。子どもが多様な大人や子どもとの関わりを持ちにくくなったことを受け、子育て世代が気軽に集い、情報交換できる場を提供することから事業がスタートしました。公共施設や保育所、児童館などが拠点となり、身近な場所において親子が交流し、育児相談や情報提供を実施する場となりました。
この取り組みはNPOなども参画し、地域のネットワーク形成と地域ぐるみでの子育て力向上に貢献する結果となっています。事業内容は子育て世代の親子交流の場を提供すること、相談や援助の実施、子育てや支援に関する講習などの実施です。地域で子育てを支えることで育児の不安を払拭し、支え合いを実現しています。
3つの事業類型
利用者支援事業は、「基本型」「特定型」「母子保健型」という3つの事業類型があります。
それぞれをまとめておきましょう。
・基本型
基本型はさらに細分化され、「利用者支援」と「地域連携」という2つの柱があります。
利用者支援は、地域子育て支援拠点など利用者の身近な場所で実施する業務です。子育て家庭からの日常的な相談を受け付け、個別にニーズを把握するとともに、子育て支援に関する情報を収集し提供します。具体的に提供されるサービスや保育所などの利用に対してアドバイスを行い、利用者視点に立った寄り添う形の支援となります。
一方、地域連携は協働体制の構築がメインとなり、効果的な支援につながるよう地域の関係機関と連絡調整を行う業務です。地域に展開している関連資源を育成し、社会資源を開発するのが目的となり、子育て支援のネットワークに基づいた支援を行います。基本型の職員配置に関しては、専任職員1名以上の配置が義務付けられています。子ども・子育て支援に関する事業や地域の子育て支援拠点事業などで一定の実務経験を持つ者が、子育て支援員基本研修及び専門研修を修了した場合などに就任することが可能です。
・特定型
特定型は「保育コンシェルジュ」とも言われるサービスです。
主に市区町村の窓口で相談に応じる形で、地域において提供される保育所や各種保育サービスの情報提供を行い、利用に向けて支援するのがメイン業務です。職員配置は専任職員1名以上の配置が必要で、特に就任資格はありませんが、子育て支援員基本研修を修了している者が望ましいとされています。
ただし実施要件があり、以下のいずれかの要件を満たす施設である必要があります。
○市区町村内の保育所及び幼保連携型認定こども園の平成25年から平成29年の各年10月1日時点のいずれかの定員充足率が市町村内全体で 100%以上であること。
○市町村内の保育所及び幼保連携型認定こども園の数が平成29年4月1日時点において 100 以上であること。
○平成24年改正前の児童福祉法第56条の8第1項に規定する特定市町村又は平成27年から平成29年の各年4月1日時点のいずれかの待機児童数が 50 人以上であること。
○緊急対策を実施していること。
・母子保健型
母子保健型は、主に市区町村の保険センターなどで提供されるサービスです。
保健師などの専門職者が担当し、妊娠期から子育て期まで母子の保険や育児に関するさまざまな相談に応じます。状況を継続的に把握できるため、適切な情報提供と母子保健サービスなどの紹介が可能です。同時に関係機関と協力し、支援プランの策定を実施するのも重要な業務となります。職員配置は前述の通り、保健師や助産師など、母子保健に関して専門知識を持つ資格者を1名以上配置する必要があります。
このように、各類型にはそれぞれ異なる特徴があり、相談内容や利用者のニーズに合わせた対応が重要と言えます。母子保健型については少々位置付けが異なりますが、総じて重要な業務は、連絡調整、連携や協働、地域の体制づくりです。各地に合わせた子育て資源を発掘し、地域課題を発見共有することで、真に必要とされる地域社会資源を開発することが命題と言えます。
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<参照元>
厚生労働省_放課後児童健全育成事業について_(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000027098.html)
厚生労働省_利用者支援事業について_(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/kosodate/index.html)