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防犯まちづくりにおける自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

防犯まちづくりにおける自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

子どもや女性、高齢者を狙った犯罪、平和な住宅地での侵入盗など、安全・安心な暮らしを脅かす卑劣な犯罪が後を絶ちません。住民を被害から守り、犯罪に強いまちづくりを推進するための注意点とは? 事例などを通じ、そのポイントを探りました。
 
【目次】
■「防犯まちづくり」とは
■事例①【認定制度】足立区(東京都)
■事例②【公園整備】川越市(埼玉県)
■事例③【回線使用料が不要の監視カメラ】高崎市(群馬県)

「防犯まちづくり」とは

警察庁・文部科学省・国土交通省などの関係省庁・機関と各自治体は、道路、公園等の公共施設や住居の構造・設備・配置等について犯罪防止に配慮した環境設計などを行うことで住民が犯罪被害に遭いにくい「防犯まちづくり」を推進しています。

警察庁などが策定した防犯まちづくのガイドライン「安全で安心なまちづくり」では、犯罪が起こりにくく、犯罪に対して抵抗力のあるまちづくりを推進する基本的な手法として、次の3つを挙げています。

①人の目の確保(監視性の確保)
多くの「人の目」(視線)を自然な形で確保し、犯罪企図者に「犯罪行為を行えば、 第3者に目撃されるかもしれない」と感じさせることにより犯罪抑止を図る防犯手法です。

②犯罪企図者の接近の防止(接近の制御)
犯罪企図者の侵入経路をなくし、被害対象者(物)に接近することを妨げることにより、犯罪の機会を減少る防犯手法です。

③地域の共同意識の向上(領域性の強化)
地域コミュニティの形成、環境の維持管理、防犯活動の活発化等を通して犯罪抑止を図る防犯手法です。

こうした犯罪抵抗力のある防犯まちづくりを促進するため、監視カメラ等の物理的なハード設備や“死角”をなくす都市整備などについて、国土交通省は交付金制度や相談窓口を設け、自治体の取り組みを支援しています。

交付金では、地下通路・駐車場・公園等の公共施設整備にあわせて、安全性確保等の施設管理上の観点から照明灯や施設管理用カメラ等を設置する場合、市街地整備の一環として「社会資本整備総合交付金」による支援を実施しています。また、各地方整備局等に防犯まちづくりに関する相談窓口を設置し、地方公共団体からの相談を受け付けています。

次に、さまざまな工夫で防犯まちづくりを行っている事例を紹介します。

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事例①【認定制度】足立区(東京都)

足立区(東京都)は犯罪の起こりにくいまちを目指す地区を「足立区防犯まちづくり推進地区」として認定する制度を推進しています。

認定されるためには「防犯まちづくり憲章」を作成したうえで、①地区内の自主パトロール、登下校や小学校等の行事に合わせた子どもの見守りなどの「直接的な防犯活動」、②各戸での門灯・玄関灯など夜間照明の点灯運動など「間接的な防犯活動」、③警察との協議に基づく防犯カメラの設置、外構のブロック塀解消、地域内に存する空き家マップ作成などの「防犯性の高い環境整備」―といった防犯活動や取り組みを行っていることが必要です。

そのうえで足立区防犯専門アドバイザー、足立区防犯まちづくり推進アドバイザー、管轄警察署等に意見を求め、認定委員会を開催し、「足立区防犯まちづくり推進地区認定要綱」の基準に基づく審査を行い、条件を満たしていると判断された場合に認定書が交付されます。これまでに長門南部町会、綾瀬四丁目自治会、隅田自治会などの14町会・自治会が認定されました。

こうした地域住民と連携した取り組みにより、平成30年の足立区の刑法犯認知件数は前年比で1,403件減少しました。

事例②【公園整備】川越市(埼玉県)

樹木に囲まれた公園は人の目が行き届きにくく、警察庁も防犯対策の重点箇所に挙げている場所です。そこで川越市(埼玉県)は周囲から見通せるなど、「領域性」と「監視性」を確保した防犯効果の高い公園整備を推進しています。

具体的には、樹木ではなく鉄柵で公園を囲むことで監視性を確保し、出入り口をブロック舗装することで公園の中と外の領域を明確に分離。犯罪企図者が足を踏み入れにくい空間整備を実施しています。犯罪心理学などの研究では、境がはっきりしておらず、きちんと区切られていないなど、領域性の低い場所は「どこからでも入れて、どこからでも逃げられる場所」と認知されやすく、犯罪企図者の侵入を招きやすいとされています。

事例③【回線使用料が不要の監視カメラ】高崎市(群馬県)

高崎市(群馬県)は、通信会社との回線契約が不要な光無線通信を活用した通信網を構築し、回線使用料がかからないシステムで監視カメラを運用しています。

同市は平成29年の市民体育館「高崎アリーナ」の開館にともない、約500m離れた野球場の近くに立体駐車場と公衆トイレを設置し、それぞれに監視カメラを設置しました。公衆トイレのカメラ映像を約100m離れた立体駐車場に送る必要があったことから、さまざまな通信手段を検討しました。

まず、道路を隔てた立体駐車場と公衆トイレの監視カメラを有線接続する案が浮かびましたが、手間や費用の面から現実的ではなく、次にWi-Fiによる電波無線で接続することを検討。しかし、Wi-Fiでは安定した通信の維持に不安があるほか、約100mの通信に回線使用料を毎月支払う必要もあり、さらに別の接続方法を探していました。

そうしたところ、光無線通信を活用した通信網を構築すれば回線使用料などの通信料が不要で、かつ安定的にハイビジョン画質の映像を通信できることが判明。長期的なコスト面でのメリットなどから光無線通信方式で接続することにしました。

同市では、多くの施設間の通信に光無線通信を活用することで通信コストを削減し、住民サービスの充実につなげていけるのではないかと見ています。

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<参照元>
警察庁・文部科学省・国土交通省「安全で安心なまちづくり」、 国土交通省「防犯まちづくり」、 足立区ホームページ、  埼玉県ホームページ、  自治体通信16号「光無線の活用で安心・安定・安価な監視カメラ通信網を整備する」  等

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