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新型インフルエンザ等対策行動計画・職員行動計画について【自治体事例の教科書】

新型インフルエンザ等対策行動計画・職員行動計画について【自治体事例の教科書】

国土交通省は公共交通機関をはじめとした国民生活や経済活動に必要なインフラを提供する業務を行っています。新型インフルエンザ等のまん延により、その業務が万が一停止してしまうと、社会的混乱が起き、国民の健康や経済活動に重大な影響が出てしまうことが予想されます。そうした事態にならないために、国土交通省で対策行動計画を作成しています。その内容を見てみましょう。

【目次】
■国土交通省_新型インフルエンザ等業務継続計画
■人員確保について

国土交通省_新型インフルエンザ等業務継続計画

〇目的
新型インフルエンザはほとんどの人が免疫を獲得しておらず、世界的な大流行になり健康被害や社会的影響が大きくなると懸念されています。そのため発生時には感染拡大をできる限り抑えて国民の生命・健康を保護することはもちろん、社会生活・経済への影響を最小限にすることが大切です。

国土交通省では、「新型インフルエンザ等業務継続計画」が作成されています。公共交通機関の運行や安全の確保、空港や道路など生活上の重要施設の管理・安全確保など国土交通省が新型インフルエンザ等発生・流行時に、どのような執務体制を取るべきか、どのような業務を継続または縮小すべきかなどを定めたものです。

〇地震との違い
国土交通省ではすでに首都直下型地震における業務継続計画を策定しています。新型インフルエンザ等の場合と共通する面もありますが、以下のような違いもあります。

     地震災害 新型インフルエンザ等
業務継続 早期復旧を目指しできる限り業務継続をする 感染リスクや社会的責任を考慮し業務レベルを決定
想定される被害 施設・設備などインフラ被害 国民の健康被害とそれに伴う社会生活・経済への影響
被害期間の想定 過去の事例からある程度の想定ができる 長期化する傾向にあるが実際の影響予測は困難である
被害が影響する範囲 局所的であり代替施設・設備での操業が可能 国内・世界規模になり施設・設備の代替可能かどうかは不確実
発生と被害の抑制 突発的で被害規模は制御することは実質不可能 海外発生から国内発生までに期間があるため準備可能。ウイルスの感染力や脅威度、それに対する対策によって被害量が変わる

こうした違いがあることから首都直下地震時の議論を参考にしつつ、その違いも理解した上で新型インフルエンザ等に必要となる業務継続計画を策定します。

〇基本的な考え方について
国土交通省では職員の生命・健康を守ることはもちろんですが、道路・航空・港湾などのライフライン・社会インフラの破綻を防止しなくてはいけないというのが基本方針です。

新型インフルエンザ等が発生した際には多くの職員が休暇を取る可能性があります。それを考慮した上で不要不急の業務は縮小・中断し、必要な業務(ライフラインや社会インフラ)にリソースを集中させることを記しています。

具体的には、新型インフルエンザ等により新たに発生した業務(水際対策等)や業務量増加が必要なものを「強化・拡充業務」、縮小中断が国民の生活・経済に重大な影響を与えるため縮小困難なものを「一般継続業務(発生時継続業務)」と位置づけています。

強化・拡充業務および発生時継続業務それぞれを実施できるように人・物のリソースや情報入手体制、関係各所との連携体制の確保をします。

〇強化拡充の範囲
強化拡充業務には以下のものが含まれます。

危機管理業務 国土交通省内に対策本部を設置し感染拡大防止対策の推進や情報収集、関係機関との連絡・連携・調整等に係る業務
省内感染拡大防止業務 国内外の職員への注意喚起、海外渡航中の職員の安否確認、職員全体の感染状況の把握、マスク・消毒剤などの準備や休暇制度の運用などまん延防止に係る業務
広報業務 国土交通省が行う新型インフルエンザ等への具体的な対策・最新情報を国民や所管事業者に提供する広報業務
水際対策業務 空港・湾港での検疫業務、国際便の運行自粛検討、海外渡航者への注意喚起など所管事業者等が実施する水際対策に対して必要と考えられる指導・支援を行う業務
社会機能維持対策業務 最低限、社会機能維持のために必要とされる公共交通機関の運行の継続、それ以外の業務・事業の縮小・中断・仕分けについて、国土交通省として指導・助言・支援を行う業務
国内感染拡大防止対策業務 不特定多数の人間が出入りする施設を管理する公共交通機関を含む事業者との情報交換を行い新型インフルエンザ等の感染状況の確認や必要な調整業務等を行う

新型インフルエンザ等の発生・流行により新たに追加すべきと考えられる業務にはこのようなものがあります。国土交通省としては新型インフルエンザの拡大防止のために、これら業務を強化・拡充していきます。

〇一般継続業務
一般継続業務は国民生活や経済にとって必要なもの、一時的にでも止めてしまうと混乱や重大な影響が起きると予想されるものを指します。国内感染期でも業務量を大幅縮小することは困難であると判断しています。
国土交通省が一般継続業務としているものは以下のものです。

国民生活に必要なサービス 輸送機関の管制・治安維持、災害・事故時の情報提供、輸送機関の検査など、生活に必要なサービス。またはこれらと同等・同種の業務も対象となる
社会インフラ維持・安全確保 ・公共交通機関の安全確保
新型インフルエンザ等まん延時でも大幅縮小は困難であり、所管省庁として安全確保業務を継続すべきである
・生活関連施設の管理・安全確保
平常時から行っている空港・湾港・道路等の管理、下水道事業など国民・社会にとって維持が必要である施設を新型インフルエンザ等まん延時でも安心して利用できる状況を確保すべきである
組織維持 予算・国会・福利厚生・人事・会計といった国土交通省の組織維持に必要な業務。これらは新型インフルエンザ等発生時には業務量・内容をできる限り縮小・簡素化し負担軽減の具体的な方策を検討していく

国土交通省ではこれらを国民生活・社会インフラ・組織維持に必要な一般継続業務として、平常時同様に行います。大きな流行となったとしても、国民がなるべく普段どおりに生活できる下地を維持します。

人員確保について

新型インフルエンザ等まん延時は国土交通省の職員も感染している可能性があります。そのため、業務の強化・拡充や一般継続業務を行うためには人員をどう確保するかも重要なポイントとなります。
国土交通省での対策・対応は以下の通りです。

職員感染時の対応 具合の悪い職員に対して通勤前の医療機関受診を勧奨、早めの休暇取得を呼びかける。感染発覚・発症した場合は当該職員にマスク着用や病院受診、病気休暇の取得を要請する。なお、当該職員が使用した物品(電話・パソコン等)は速やかに消毒を行う。感染経緯や症状に関する情報も集約していく。
服務上の扱い 感染した職員に対しては病気休暇の取得を呼びかけ、出勤しようとする場合は人事院規則に基づいて就業禁止とする。濃厚接触が疑われ外出自粛要請された職員については特別休暇が認められる。
勤務形態・通勤方法 新型インフルエンザ等まん延により保育所等が臨時休業となった場合の休暇は年次休暇の取得を原則とする。感染拡大の状況を見て在宅勤務等の検討も行う。
通勤時の感染機会をできる限り減らすため必要に応じて時差通勤を実施。自転車通勤者のための駐輪場確保も検討する。
特定接種 特措法に基づき新型インフルエンザ等対策の実施に携わる職員に対して本人同意のもとで特定接種を実施する。

新型インフルエンザ等がまん延時には、人員確保が難しくなる可能性もあります。国土交通省ではこうした対策をしていくことで、できる限りの職員の健康維持を目指し、必要とされる業務強化・拡大、一般継続業務の遂行をしていくことにしています。

〈参照元〉

内閣官房_新型インフルエンザ等対策政府行動計画等
(https://www.mlit.go.jp/common/001085731.pdf)

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