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スマート林業について・実施事例【自治体事例の教科書】

スマート林業について・実施事例【自治体事例の教科書】

日本の国土は約7割を森林が占めています。一方で、林業は重労働である上に、高齢化や山間部の過疎化などが進み、担い手不足が問題となっています。環境資源の保護や森林整備による災害防止のためにも重要な役割を果たしている林業を、より効率的で労働負担を減らしながら担い手の確保が図っていけるよう、林業の将来的な安定を図るべくICTを活用する取り組みが始まっています。最新技術を活用したスマート林業について、地方自治体の実施事例をご紹介します。

【目次】
■山梨県の実施事例
■愛知県の実施事例
■熊本県の実施事例
■徳島県の実施事例

山梨県の実施事例

山梨県では森林所有者の高齢化や、所有者の死亡などにより承継がなされず不在村化する事例が増えています。

適切な森林管理が行われず、所有境界が不明な森林が増加している問題を解決すべく、森林GISデータのGPSなどと連携したICTの活用を通じて、境界の明確化を図る取り組みをスタートさせました。森林情報システムの活用による森林管理や境界の明確化の促進を図るとともに、林業の集約化や路網整備、高性能林業機械の導入による生産性の向上を目指す取り組みです。

森林整備をする上で不可欠となる森林情報を、森林GISの精度を向上させることで、現地と森林簿および地図をマッチングさせ、森林組合や林業事業体に森林経営計画の作成に必要な情報を提供できるようにすることで、集約化による効率的な森林管理を推進しています。

愛知県の実施事例

愛知県では林業において、5つの項目を基本にICT化を図る取り組みを推進しています。

第1に森林情報の整備です。航空レーザやドローンによる計測を導入することで、現地へ赴くことなく森林の状態を把握できるようにします。従来の人による測量方法や調査に比べ、森林情報整備の自動化と高速化、高精度化が図られ、人材コストの軽減や人による作業の業務軽減も目指せます。

第2として木材生産流通体制をICTによって整えていきます。クラウド技術を活用することで、製材工場の需要情報と生産者側の伐採情報を共有して、スムーズなマッチングを図る取り組みです。高性能林業機械をICT化することで、木材生産作業の効率化と安全性を高める取り組みも推進されます。

第3に間伐事業地の選定や林内路網の設計・整備にICTを利用します。航空レーザ計測、森林GISとデータベースの整備により、詳細な森林情報および地形情報を把握し、間伐事業地の選定効率化、搬出可能量の予測の高精度化が可能です。路網計画と生産量を組み合わせた施業プラン提案や、複数の路線計画による比較シミュレーションができるようになるのもメリットです。

第4に治山事業における防災対策にも活用が期待されます。航空レーザ計測などを通じて取得した詳細な地形情報を用い、危険箇所を抽出したり、把握できたりするようになります。詳細な情報をもとに治山事業を効率的に実施できるようになり、災害規模のシミュレーションや、防災対策の検討材料にすることが可能です。

第5に原木安定供給に向けた木材生産と流通促進にもICTを活用します。愛知県内大型製材工場への安定供給を図るべく、航空レーザ計測による詳細な森林情報を活用します。路網設計の効率化を通じて計画的な木材生産を実施し、木材の生産情報と製材工場の需要情報をICTを活用してマッチングし、ニーズに応じた木材サプライチェーンの構築を目指す取り組みです。

熊本県の実施事例

熊本県の球磨地区における中央林業活性化協議会を中心に、スマート林業の取り組みが推進されています。

第1に高精度な森林情報をクラウドで整備し、さまざまなシステムと連携させます。ネットワーク化によって林業の集約計画の効率化を図り、現場の進捗管理や需給のマッチングの効率化を図ることで、生産や流通段階の作業の効率化を目指す取り組みです。

第2に林業の集約化を進める取り組みの効率化と省力化を図っていきます。航空レーザによる解析結果を用いてゾーニングを行い、経済林を集約化の検討地区として抽出し、機械の稼働率を向上させようとする取り組みです。

第3に林業経営の効率性と採算性の向上を図り、現地作業の効率化を通じて人件費の40%削減を目指します。タブレット端末を使って作業工程を記録して見える化を図り、丸太写真検知アプリを通じて素材流通情報を取得する、StanForDを活用して素材情報による配送手配を行う、地上レーザ計測によって施業を管理する流れです。

第4に需給マッチングの円滑化を図ります。単木情報を用いて素材生産の見積もり計算機能を利用し、需要に応じたマーケットイン型の素材生産ができないかを検討する取り組みです。人吉球磨ヒノキ需要拡大を目指し、木材SCMの確立を図ることで、1,000~2,000円/立方メートルのコストダウンを目標としています。

第5に森林情報の高度化と共有化を図ります。森林情報の未取得エリアについて航空レーザ計測を実施するとともに、ドローンや地上レーザにより森林クラウドへ登載することで、1,000~2,000円/立方メートルのコストダウンが可能です。

徳島県の実施事例

スマート林業プロジェクトを行うことで、徳島県産材の増産を図り、さらなる利用の拡大を図るため、10年後の生産量を、令和6年度目標であった60万立方メートルから令和10年度70万立方メートルへと増産させるとともに、林業従事者数を546人から800人へと拡大を目指します。スマート林業プロジェクトを通じて、森林林業を核に地方創生を図る取り組みです。

徳島県の地形は複雑で急峻であるため、計画的で安定的な素材生産を図るためにはICTを利用しての資源量の把握が不可欠です。ICTを活用することで、効率的な施業計画の策定や、現場での労働負担の軽減が図れます。

また、航空レーザ測量の計測データから詳細地形図を解析して、効果的で最適な路網計画を作成します。施業計画の効率化や低コスト化を図り、需要に応じた高度な素材生産を実現することを目指す取り組みです。これによって、高性能林業機械の大型化に対応した路網整備が行えるようになります。

既設作業道の拡張による低コストな林道整備、木材の搬出コストを低減するための基盤整備、路網のネットワーク化による効率的な木材運搬を通じて、主伐などの生産性を向上させる路網整備が推進できます。林業の担い手確保の面でも、最新技術の活用を目指す方針です。新規就業者の確保をはじめ、施業に応じた多様な林業従事者を育成するために、技術や知識、経験に応じた研修を実施するとともに、VRやシミュレータなどを活用して労働安全対策を強化し、安全かつ円滑に作業に従事できる体制を整える取り組みです。

流通体制においては、ICTを活用して需給情報の共有化を図ることで、流通コストの低減を図っていきます。この仕組みを基本に流通備蓄システムの検証を進めていきます。目標とすべき徳島県産材の増産に対応するには、サプライチェーン構築による低コスト化や物流体制の強化が必要であるためです。

〈参照元〉

林野庁_林野庁ホームページ
(https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/genkyou/h29/1.html)

林野庁_林野庁ホームページ
(https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/smartforest/smart_forestry.html)

山梨県_やまなし森林・林業振興ビジョン
(https://www.pref.yamanashi.jp/sinkan-som/saisei_vision/documents/vision30honbun.pdf)

愛知県_愛知県ホームページ
(https://www.pref.aichi.jp/soshiki/rinmu/ictringyou.html)

愛知県_あいちのICT林業活性化構想
(https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/290281.pdf)

林野庁_スマート林業実践対策の取組事例
(https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/smartforest/attach/pdf/smart_forestry-17.pdf)

徳島県_徳島県ホームページ
(https://www.pref.tokushima.lg.jp/ippannokata/sangyo/ringyo/5030567/)

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