文部科学省_文部科学省ホームページ
文部科学省では、「スポーツ資源」を活用したインバウンド拡大の環境整備について、その目的を地域資源とスポーツを掛け合わせたスポーツツーリズム等の取組を活性化させるための環境整備等を行うことにより、スポーツによる海外からの交流人口の拡大や地域・経済の活性化を図ることとしています。
事業の概要としては以下の3つが挙げられます。
・コンテンツの造成・磨き上げ、環境整備及び武道ツーリズム調査の実施
各地域が誇る地域資源とスポーツを掛け合わせたコンテンツの造成や磨き上げ、環境整備等を行うとともに、先進的に武道ツーリズムを推進する団体の取組をモデル的に調査・研究・分析し、横展開を図ります。
・人・物・施設等の資源情報データベースの構築
インバウンドの満足度を向上させる体制を構築するため、人・物・施設等の地域資源のデータベースを構築し、効果的なマッチング手法を開発するとともに、ネットワークを形成する取り組みをするとしています。
・新たなプロモーション等の実施
インバウンド拡大に向けたブランディングを推進するため、関係機関・団体の海外拠点や情報プラットフォームを活用した効果的なプロモーション等を行うとともに、地方部への誘客を更に促進するため、最先端技術(AR・VR等)を活用した疑似体験コンテンツを整備することを掲げています。
文部科学省_武道ツーリズムの取組について
文部科学省では、スポーツツーリズムの一環として「武道ツーリズム」に対する取組について提言しています。
スポーツツーリズムは、スポーツ庁が中心となり、スポーツツーリズム関係企業、地方公共団体・地域スポーツコミッション・スポーツ・レジャー系団体が連携を促進し、国内外に向けたプロモーションを行うことによって日本国内でのスポーツツーリズムの関心喚起、来訪・体験意欲の拡大を図るというものです。
その一環として、武道ツーリズム研究会が発足し、推進の必要性。将来のビジョン、課題と対応策の案を出しています。その内容は以下の通りです。
・推進の必要性
定住人口が減少する中、スポーツと地域資源を掛け合わせて、交流人口の拡大、地域・経済の活性化を図ることが必要であり、日本発祥の武道はそのキラーコンテンツになり得る可能性を秘めているとしています。少子高齢化等により、各地域にある武道場等は減少傾向にあるため、これまで武道に触れたことのない層の取り込み、文化や観光等との融合による武道の「新たな価値」を生み出し、継続的に発展させていくことが不可欠であることが内容です。
・将来のビジョン
武道が日本発祥であることの国際的認知(プレゼンス)の向上、武道によるインバウンド誘客の促進と地域活性化、体験を通じたファン層・競技人口の増加、日本の精神・文化の国内外への普及・発信を将来のビジョンとして掲げています。
・課題と対応策の案
案1:まず、地域・関係者が一体となってインバウンドニーズに合致した多様なコンテンツ開発や受入環境整備を行う必要があるものの、そうした動きは一部の地域に留まっているという問題があります。対応策としては、地域の意識啓発及びコンテンツ開発・受入体制強化が必要だとしており、多様な体験コンテンツの開発、多言語対応が可能な人材の育成・確保、インバウンド受入環境整備、モデル事業の実施等が具体的内容です。
案2:武道関係者や観光関係者などコンテンツ提供者の協力体制を構築することが不可欠ですが、武道ツーリズムの意義や役割分担がまだ共有されていないという課題があります。対応策としては、国・企業・地域・団体等の連携強化により武道ツーリズム推進組織の設立検討、地域レベルでのアライアンス(協力体制)の構築等を行っていくとしています。
案3:インバウンドの受け皿づくりと平行して、武道は日本発祥のスポーツ・文化であることを一元的に海外へプロモーションすることが重要ですが、単発のプロモーションに終始しているという課題も看過できません。これには、官民連携プロモーションにより、デジタルプロモーションの実施、海外拠点・支部と連携した情報発信、AR・VR等を活用した疑似体験コンテンツの整備をすることを対応策としています。
文部科学省_武道ツーリズム研究会ヒアリングシート
文部科学省の武道ツーリズム研究会ヒアリングシートでは、日本武道館、内閣官房、Voyaginという3団体から、取組状況と課題・対応策について報告されています。以下、それぞれについて見ていきましょう。
・公益社団法人日本武道館
令和元年度は国内で世界柔道選手権や空手プレミアムリーグ東京などの国際大会が実施されました。国レベルの国際大会や指導者講習会等は日本武道協議会加盟団体ごとに毎年実施されています。全国都道府県立武道館協議会では、広島県が交流計画を策定するなど、今後取り組みが拡大することが期待されているということです。また、日本古武道協会で6日間・海外修業者130名が参加した大東流合気柔術の特別稽古が実施されるなど、各流派団体で国際交流事業が実施されています。
また、武道という特性上「指導者層(コア層)」と「中間層」に分かれるという傾向がわかりました。「指導者層(コア層)」は、毎年日本武道協議会加盟団体ごとに国際大会や指導者講習会などの事業が実施されているので、武道の国際化に伴って今後も事業の自然拡大が期待されるとしています。一方「中間層」は今後の武道ツーリズム拡大が期待できる層と考えられているのです。
課題点として「いかに相手側のニーズを掘り起こすのか」「どのようなネットワークで連絡調整するのか」「日本側はどのような態勢で受け入れるのか」の3点が挙げられました。なかでも、中間層の掘り起こしと実行が武道ツーリズムの将来の鍵として位置づけられています。このほか、初心者層についてはお城観光や忍者屋敷観光などの観光事業で対応することになるという対応策も見られました。
・Google、内閣官房クールジャパン地域プロデューサー
骨太の方針2019に基づいて、武道ツーリズム×Society5.0時代の仕組みづくりがなされました。具体的には、デジタルマーケティングの手法を活用したJNTOや各地の取り組みが進んだとしています。YouTube動画を活用した国際広報も行われました。
課題と対応策については「デジタルファースト合意形成」「デジタルマーケティングを推進する体制強化」を挙げています。前者については、武道ツーリズム推進のためには、体験素材の磨き上げ、受入環境整備、プロモーションいずれの領域もデジタルファーストで施策を展開することが必要です。後者については「組織強化」「人材強化」「予算強化」の3つが必要だとし、スポーツ庁や地域にデジタルマーケティング専門統合組織の新設、中途採用・兼業採用によるデジタル人材の民間登用、事業予算50%以上はデジタル上の投資とするといった対応策を挙げています。
・Voyagin
訪日観光客向け体験予約サイト「Voyagin」では、武道をキーワードにした体験を販売中で、キーワードとしては「Samurai」が圧倒的に多いという結果が出ました。その中で、実際に武術を学ぶ体験については、有段者(黒帯)の師範から直接教えてもらえる内容が人気が高いということがわかっています。
課題としては「体験の新規開発」「面での訴求」を挙げています。前者については、SamuraiやNinjaといったキーワードで体験を探している訪日観光客のニーズが強いため、首都圏のみならず、全国的に外国人目線で魅力的にうつる体験を用意するべきだとしています。後者については、現状が点での訴求にとどまっているため、武道を面で訴求していくべきであり、例えばスポーツ庁が特設サイトを用意し、販路を拡大していくことが考えられると結論づけました。
その他、欧州、北米、オセアニアに向けて観光+文武両道セミナーを提案し、試験的に参加者50~60名程度のセミナーを実施したという実績も報告されています。なかでも欧米からの旅行者は、想像以上に日本文化に興味を持っていて、より奥深い日本体験をしたがっていることがわかったという結果も見られました。スポーツツーリズム、武道ツーリズムも幅広い連携があってこそ大きな効果があるので、官民一体となって活動する必要があるという意見が出ています。
文部科学省_スポーツツーリズム需要拡大戦略
スポーツツーリズム需要拡大戦略を話し合うため、2017年8月31日に第1回官民連携協議会が開催されました。そこで話し合われた中で、柱となる戦略を2点ご紹介します。
戦略1:地域の意識啓発及びコンテンツ開発・受入体制強化に向けた支援
・背景・課題
世界の観光トレンドは体験性にシフトしており、スポーツアクティビティに対するニーズは高まってきており、長期的な経済効果が期待できます。平成29年度の調査によると、各国・地域共に日本でのスポーツツーリズムへの関心は非常に高く、関心を持つスポーツの内容や実施する際の期待や不安となる要素等についても国・地域により傾向が異なるため、海外のニーズを正確に把握してコンテンツ開発や受入体制強化、プロモーションが必要となるという課題点が浮き彫りになりました。
・推進戦略
「恒常的・持続的な誘客や経済効果の創出を図ることが可能なスポーツアクティビティ開発の啓発を行うとともに、必要な動向データや先進事例の共有を図る」「意欲的に新たな取組を行おうとする地域を支援する事業を展開する」「スポーツアクティビティの拠点となり得る地域や施設の認知度向上を図る」の3つが戦略の具体的な柱です。
・具体的な施策
1つ目は「マーケティングデータや優良事例等の地方公共団体・事業者への提供による地域の意識啓発」です。これについては、スポーツによる持続的なまちづくり・地域活性化が全国で推進されるために、地方公共団体、地域スポーツコミッション等に対し、地域資源や特性を活用したスポーツアクティビティの開発や磨き上げ、デジタル技術の活用による受入体制強化、デジタルデータの活用によるKPI設定やマーケティングの執行を啓発するとしています。
2つ目は「支援事業の実施による地域の新たな取組の促進」です。地方公共団体が地域スポーツコミッションと連携して行う、季節・年間を通じて体験・参加が可能なスポーツアクティビティの創出に向けた新たな取組に支援することで、地域の活動を促進して横展開も図るとしています。
3つ目は「スポーツアクティビティ拠点の国内外への発信による認知度向上」です。地方公共団体・地域スポーツコミッションを通じ、地域でスポーツアクティビティの機会や必要なウェアや用具のレンタル、ガイド等のサービスを提供する受入側事業者・施設等の情報を収集し、国内外への広報を図り、地域アクティビティ拠点の認知度向上を図ることと結論付けてます。
戦略2:需要拡大のための官民連携プロモーション展開
・背景・課題
世界的に観光プロモーションは映像を活用したデジタルプロモーションが大きな潮流となってきており、平成29年度のマーケティング調査結果でもスポーツツーリズムに関する情報収集源として検索エンジンやSNS、動画サイト等のデジタルメディアを挙げる率がどの国・地域でも高い結果となっていることがわかりました。SNS利用の拡大と合わせ、一般層の発信が他者の関心・来訪意欲を生むCtoC的な展開も新たな潮流となってきているという背景もあります。この潮流を捉えたプロモーションを設計し、各国・地域別のニーズや動向を正確に把握して展開していくことが必要であり、関係各省庁と連携を図って、日本の総合的な魅力の一つとしてスポーツツーリズムを発信していくことや、民間企業等と連携・協働してスポーツツーリストの誘客を図る展開等が必要だとしています。
・推進戦略
「日本のスポーツツーリズムの魅力を世界へ伝える映像を制作・発信するプロモーションを展開する」「関係各省庁と連携を図り、スポーツツーリズムを日本の様々な魅力と合わせて発信する」「官民双方の活動が相乗効果を発揮できるよう連携・協働のデジタルプロモーション展開を設計し、日本全体での交流人口の最大化を図る」「スポーツツーリズム体験者のSNS拡散の促進を図る展開を、関係各省庁や地域とともに講じる」という4つを戦略として挙げています。
・具体的な施策
1つ目は「日本のスポーツツーリズムの魅力を発信する映像の制作・発信」です。国内外のニーズが高く、日本のポテンシャルを活かせるスポーツを中心とした日本のスポーツツーリズムの魅力を発信するプロモーション映像を制作・配信することが考えられています。新規の撮影、地域スポーツコミッション等からの動画素材の提供や、広く一般からも体験動画を募る手法等も検討し、関連団体や関連企業、地方公共団体も活用が可能なオープンな広報ツールとすることとしています。。
2つ目は「省庁間連携による総合的な日本の魅力発信」です。関係省庁間で連携を図り、海外メディア・WEBサイト・観光展・大使館などを通じ、スポーツ以外の日本の幅広い魅力を合わせて発信を行うこととしています。
3つ目は「官民が一体となったデジタルプロモーション等の実施」です。映像を配信していくことで得られる興味関心層のデータを国内のスポーツツーリズムに関連する民間企業に提供し、民間企業が誘客等のプロモーションを図り、その動向や結果を国へ還元する、官民が協働することを目指します。デジタルデータ連携プロモーションの展開を検討する際には展開時期やターゲットエリア、訴求テーマ等について国が方向性を定め、官民合同で実施するプロモーション展開の検討を図ることとしています。
4つ目は「参加者自らが誘う・発信する仕組みづくり」です。スポーツツーリストの体験談や画像・動画によって、同様な嗜好を持つ旅行者の来訪を促進するために、旅行者のSNS発信・拡散意欲を醸成する展開を図ることとしています。
文部科学省スポーツ庁_スポーツツーリズムの取組について
ここでは、スポーツツーリズムの具体的な内容についてご紹介します。
取組その1:地域の意識啓発及びコンテンツ開発・受入体制強化に向けた支援
・マーケティングデータや優良事例等の地方公共団体・事業者への提供による地域の意識啓発
・支援事業の実施による地域の新たな取組の促進
・スポーツアクティビティ拠点の国内外への発信による認知度向上
取組その2:国・企業・地域・団体等の連携強化(2019年度の重点的な取り組み予定)
・スポーツツーリズム応援企業等のネットワーク化・マッチングの促進
・地域スポーツコミッションの増加と強化
・スポーツ・レジャー系団体等のツーリズム意識啓発によるコンテンツ創出
取組その3:需要拡大のための官民連携プロモーション
・日本のスポーツツーリズムの魅力を発信する映像の制作・発信
・省庁間連携による総合的な日本の魅力発信
・官民が一体となったデジタルプロモーション等の実施
・参加者自らが「誘う」、「発信する」仕組みづくり
これらの取り組みのために、「企業⇔地域の連携促進」「企業⇔スポーツ・レジャー団体の連携促進」が不可欠だとしています。
前者は、地域の環境やイベント等の情報を地域スポーツコミッションが中心となり、集約・発信する体制を整備し、企業とのコラボレーション創出を支援するというものです。
後者は、スポーツ・レジャー関連団体と企業の連携によるスポーツツーリズムコンテンツの創出を柱としています。
今後の取り組みとしては「スポーツ資源」を活用したインバウンド拡大の環境整備、スポーツによるまちづくり・地域活性化活動支援事業、スポーツツーリズム・ムーブメント創出事業に重点を置き、予算措置を行っていくということです。