首相官邸_都市再生に取り組む基本的考え方(要約版)
首相官邸による都市再生に取り組む基本的考え方は「都市再生に取り組む視点」「基本姿勢」「新たな取り組み」「制度改正等」の四段構えとなっています。
● 「都市再生に取り組む視点」は大きく以下の4点にまとめられます。
・東京への一極集中の是正(災害リスク軽減、ローカルアベノミクス具体化等)、地方創生の推進は喫緊の課題であること
・インバウンドや子育て支援等、新たな需要も見られるが、質の高い投資案件が地方には不足していること
・国民生活や経済の基盤である都市、特に「国力の源泉」となる、地方中枢・中核都市等に、いかに戦略的に投資するか、いかに投資を呼び込み「未来の発展基盤」を構築していくかは、内政上の重要課題であること
・AI、IoT、FinTech等、都市への投資のあり方に影響を及ぼす革新的技術(近未来技術)が進展している現状
● 4つの「視点」を踏まえ、「基本姿勢」として考えられている点は以下の通りです。
・地方経済のエンジンとなる中枢・中核都市等を「世界に直結し、機能、成長する都市」へ再生させる
・近未来技術の実装や「SDGs」の考え方を踏まえた「世界最先端の都市再生」を進める
・産学官金の総力を上げ、「現地支援体制」を整え、「質の高い投資案件」を形成する
・リニア中央新幹線等の整備効果を広く全国に波及させ、諸都市の国際競争力を向上させる
・多様な主体の連携によるインバウンド需要への対応や、対日投資の気運を取り込む都市再生を推進する
● 「新たな取り組み」は大きく分けて以下の4点です。
・都市再生緊急整備地域の「候補地域」の設定、公表
・「候補地域」段階等における「産学官金のプラットフォーム」の形成
・都市再生の見える化情報基盤「i-都市再生」の構築、活用、普及等
・「特定都市再生重点プロジェクト」の推進
4点目の「特定都市再生重点プロジェクト」の推進は、さらに2つに分けられます。「「近未来技術社会実装関連プロジェクト(Society5.0の形成に資する近未来技術を社会実装するための都市再生プロジェクト)」と「スーパー・メガリージョン関連プロジェクト(リニア中央新幹線により出現する7000万人規模の集積効果を最大限に引き出す都市再生プロジェクト)です。
首相官邸_都市再生に取り組む基本的考え方
概要として挙げられていた点についてさらに詳しく見ていきましょう。
● 「都市再生に取り組む視点」の背景としては、具体的に以下の4点が挙げられます。
・日本の経済情勢は、都市再生の取り組みが始まった平成 13 年当時と比べ激変してきており、AI、IoT、ビッグデータ、FinTech といった都市への投資のあり方に影響を及ぼす革新的な技術(近未来技術)が進展してきていること
・インバウンド観光等が急増する一方、東京への一極集中は依然として是正され ておらず、災害リスクの軽減、ローカルアベノミクスの具体化等による地方創生の推進は 喫緊の課題となっていること
・わが国は長く続いたデフレからようやく抜け出し、未来への発展基盤を準備、構築する段階にあるため、国民生活や経済の基盤である都市へいかに戦略的に投資するか、質の高い投資を呼び込み、未来の発展基盤を固めていくかという点が内政上の重要課題となっている。そこで、地方再生のために必要な視点としてさらに4つの視点が必要であること
・国土全体を俯瞰し、国家的見地から都市再生を推進する
・近未来技術を実装し、主要な都市の競争力を世界最高水準に引き上げる
・世界の成長や新たな需要を取り込み、所得の向上に資する都市再生を進める
・多様な主体と連携し、SDGs 等を踏まえた持続可能な都市を創造し、世界に貢献する
・前世紀から残された課題(交通渋滞や災害への脆弱さ、 都市空間の質の低さ等)を解決するとともに、わが国の伝統文化を育み、自然と調和した 世界に誇れる都市を未来に引き継ぐこと
● 「都市再生に取り組む基本姿勢」をさらに具体的に見ると、以下の4点に集約されます。
・規制改革との連動、民間の創意工夫等による質の高い都市再生
・財政的制約下においても、未来への力強い発展基盤を構築するため、国家戦略特区等の規制改革と
連動させながら、民間の創意と工夫、投資等を呼び込み、高度で複合的な都市サービスを提供する
質の高い都市再生を推進する
・特に三大都市圏に加え、地方経済のコアとなる中枢・中核都市等において質の高い投資案件を
形成し、世界に直結し、機能、成長する都市へと再生させ、東京一極集中の是正、大規模な
災害への備えとする
・近未来技術の実装等による世界最先端の都市再生
・科学技術政策との連携を強め、Society5.0を実現する自動走行、AI、IoT、ロボット等の
近未来技術を実装するとともに、持続可能な社会の形成を目指すSDGsの考え方や
気候変動への対応を踏まえた世界最先端の都市再生を進める
・リニア中央新幹線等の整備効果を広く全国に波及させ、諸都市の国際競争力を向上させると
ともに、都市のコンパクト化を進め、周辺部における自然再生等に配慮する
・インバウンド観光等の新たな需要や対日投資の気運等への総合的な対応
・インバウンド観光、子育て支援等の新たな需要や近年みられる対日投資の気運等を取り込む
都市再生について雇用分野等も含めた総合的な観点から進める
・特に地方大学のサテライトキャンパス等の都市再生への組み込みや地方経済を支える
グローバルニッチトップ企業等地域中核企業との連携等を通し、都市の賑わいの創出や
人材の確保、ビジネスし易い環境の整備、やりがいのある仕事の創出等に配慮しつつ取り組む
・国と地方、NPO等との連携やFinTechの活用等による地域の諸課題の解決
・地方公共団体の自主性の発揮やNPO等との連携を促し、国も早期の検討段階から参画(ハンズオン)
する等、検討の視点の多様性を確保しつつ、空き家や未利用地の利用促進等、各地域の諸課題の
解決に繋がる都市再生を強力に推進する
・資金の調達に際しては、地域の実情に即したESG投資や地域金融機関の参画等による地域内の
資金循環に配慮するとともに、FinTechの進展など激変する金融環境に対応し、クラウド
ファンディングや不動産の証券化手法を積極的に活用する等、都市再生への投資家の
すそ野を広げていく
● 基本的な視点、姿勢を踏まえたうえで新たな取り組みとして、以下の点が挙げられています。
・都市再生緊急整備地域の「候補地域」の設定、公表
早期の段階から民間の斬新なアイディアや創意工夫を引き出し、質の高い都市再生を行うため、
都市再生緊急整備地域の「候補地域」を設定し、公表する
・「候補地域」段階等における産学官金のプラットフォームの形成
多様な視点から都市再生の方針、内容等を検討するため、「産学官金」により構成する
(地域指定等に向けた)準備協議会を組織し、早期の段階から国や関係機関等が参画する
・都市再生の見える化情報基盤「i-都市再生」の構築、活用等
VR技術や地球地図、ビッグデータ等を活用し、都市再生についての空間的、数値的な
理解が直感的に得られる、見える化情報基盤「i-都市再生」を構築、活用、普及させ、
関係者の合意形成、投資家の理解促進等により、都市再生の生産性と投資の質の向上を図る
・「特定都市再生重点プロジェクト」の推進
未来への投資戦略分野やSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の成果等を活用し、
以下のプロジェクトに取り組む。プロジェクトの支援責任者を明確にする等、
省庁横断的な「社会実装現地体制」を構築し、複数の地方部局に跨る「ワンストップ支援等」
を行う
・「近未来技術社会実装関連プロジェクト」Society5.0の形成に資する近未来技術を
社会実装するため、関連する都市再生プロジェクトを組成、推進する
・「スーパー・メガリージョン関連プロジェクト」
リニア中央新幹線により出現する7000万人規模の集積効果を最大限に引き出し、
わが国全体の経済活力を向上させるため、関連する都市再生プロジェクトを組成、推進する。
首相官邸_都市再生に取り組む基本的考え方—強い地方経済を支える世界最先端の都市再生
都市再生に取り組む基本的考え方が見直された背景として、省庁横断的な都市再生に一定の成果が出てきたものの、都市再生を目指し始めた当時と比べて社会経済情勢が激変したことが挙げられています。
都市再生に取り組み始めた当時は、デフレ経済の初期であり、総人口は横ばい状態、インターネットも普及が始まったばかりの時期でした。経済に対する認識もリアルな(仮想を含まない)経済を対象とするもののみでした。
しかし、デフレギャップが解消され、未来への投資・生産性向上、経済成長を重視して金融緩和政策が行われている現状やインターネットの普及、IoTやAIをはじめとした近未来技術の出現など、日本を取り巻く状況は変化し続けています。そこで、今後の技術動向等も踏まえつつ、諸課題の解決や新たなニーズ等に的確に対応するため、「都市再生に取り組む基本的考え方」が新たに定められたのです。
首相官邸_都市再生制度に関する基本的な枠組み
都市再生特別措置法に関連して、都市再生制度のための基本的な枠組みも策定されています。内閣総理大臣を本部長とした都市再生本部により、都市再生に取り組む基本的な考え方」が策定されていますが、それを日本のどこで行っていくか、どのような組織でやっていくかという点についての基本的な枠組みは以下の通りです。
・特定都市再生緊急整備地域の指定
政令で指定された都市再生緊急整備地域55地域の中から、都市の国際競争力の強化という視点によって重点化する特定都市再生緊急整備地域13地域がさらに指定されました。
・地域整備方針に基づく事業計画、予算措置など
都市再生本部で決定された地域整備方針に基づき、都市計画等の特例(都市再生特別地区の指定、都市計画提案制度、都市再生事業に係る認可等の迅速化)、民間都市再生事業計画に基づく税制特例や金融支援を行うこととしています。
・官民で組織された都市再生緊急整備協議会とともに特定地域の整備計画、都市再生安全確保計画とそれに伴う予算支援
具体例としては、都市再生緊急整備地域内において、既存の規制にとらわれず自由度の高い計画を定めることによって、都市再生特別地区における特例として容積率制限の緩和等が可能となっています。
首相官邸_緊急整備地域における「都市再生」の効果
緊急整備地域における「都市再生」の効果として、人口、世帯数、地価について、周辺地区よりも増加率で上回るという結果となっています。根拠となる数字としては、人口増加率(H17年→H27年)、世帯数増加率(H17年→H27年)、地価増加率(H14年→H28年)が挙げられています。特に地価増加率は、全国平均を大きく上回っています。