宮城県仙台市_仙台都心地域の都市再生の検討に向けて
宮城県仙台市では、平成14年10月に「仙台駅西・一番町区域」が都市再生緊急整備地域に指定されました。そこで、地域整備の指針として4つの大きな柱が掲げられています。
・整備の目標
藩政時代からの緑を受け継ぎ「杜の都」として広く知られている仙台の都心において、既存の都市基盤を活かしつつ、広域的な商業・業務等の高度集積拠点を形成することとともに、緑美しく魅力ある都市空間を創出することを目標としています。
・都市開発事業を通じて増進すべき都市機能に関する事項
具体的に都市機能として何を整備するかについて「商業・業務機能を高度化。併せて都心居住に資する居住機能を確保」「仙台駅西地区においては、商業・業務機能を増進」「一番町区域においては、商業・業務機能を強化」「大規模災害に対応できる都市防災機能の向上」の4つを挙げています。
・公共施設その他の公益的施設の整備及び管理に関する基本的事項
都市再生に必要な公共施設やインフラ等の整備・管理について「地下鉄東西線仙台駅の新設及び仙台駅西口駅前広場の再整備による交通結節機能の強化」「仙台駅西地区において、ペデストリアンデッキや仙台駅東西自由通路等の整備により歩行者ネットワークを充実」「既存の広幅員道路空間の再構成などによる緑地空間の創出」「鉄道を基軸としたまちづくりに資する地下鉄東西線の整備」を挙げ、仙台駅前地区の整備を中心に地区の再生を目指しています。
・緊急かつ重点的な市街地の整備の推進に関し必要な事項
「仙台駅西地区においては、杜の都の玄関口にふさわしい風格ある景観の形成や、駅からの回遊性に配慮した歩行空間の確保に資する都市開発事業を促進」「一番町地区においては、低層部に商業・サービス機能を導入するなど、既存モールのにぎわいの確保・充実に資する都市開発事業を促進」「都市開発事業等において、備蓄倉庫の設置や一時滞在施設・場所を確保することに理、帰宅困難者対策を推進」「建築物の耐震化を促進」「エリアマネジメント等、積極的な地域と協働事業を推進」「低炭素社会の構築に向けてエネルギー負荷が小さい都市空間の形成を推進」としています。
また、宮城県仙台市では、令和元年7月に「せんだい都心再構築プロジェクト」を立ち上げています。震災復興次なるステージを目指して、経済活動と交流の中心的媚態である仙台市の都心部を再構築するために始動されました。杜の都・仙台の都市個性を活かしながら、賑わいと交流、継続的な経済活力を生み出し続ける躍動する都心を目指し、市民や事業者と連携して都心部の機能強化を進めていくものです。
基本的な考え方として「働く場所、楽しむ場所として選ばれる、杜の都の個性きらめく、躍動の都心(まち)」をイメージするとしています。第1弾施策の概要としては、「老朽建築物の建替えと企業立地の促進」「附置を義務づける駐車台数の緩和等」「都市再生緊急整備地域の拡大へ向けた検討」の3つの点を重視しています。
東京都豊島区_事業化に向けた取組み
東京都豊島区では、個々の都市開発と都市基盤との整合を図り、一体的な考えに基づき都市再生に取り組むことが重要と考え、まちづくりに関わる多様な主体の参画のもと、具体的な整備計画・ルールづくりや都市全体のマネジメントを視野に入れ、段階的に「池袋駅周辺地域まちづくりガイドライン」を実現していく取組みを掲げています。
段階的な計画の実現に向けた取組みとして大きく5つの柱に基づいて実行に向けて発信しました。
・計画・構想段階における体制づくりと計画の具体化
計画・構想段階から民間の知恵や提案を生かしつつ、都市再生の事業化について検討する組織を設置するとともに、必要に応じて個別の課題を検討する組織を設置し、事業化に向けた具体的な計画づくりを進めています。都市基盤整備や景観誘導の検討については、基盤検討部会やデザイン検討部会など各専門部会で具体的な検討や調整を行い、関連する協議会や行政と情報共有・連携を図ることを重要視しました。
・都市基盤の整備に関する計画・事業調整
公民連携して推進する都市再生は、環境・交通・都市景観等への影響が大きいため、都市基盤整備に関して、より具体的な整備内容や、事業手法、整備主体、費用負担のあり方について明らかにすることを重要視しています。豊島区は総合調整的役割を担うこととし、都市基盤整備にあたっては、関係者の合意の上、適正な役割分担と負担を取り決め、都市開発諸制度の活用や国等の補助制度の積極的活用により推進する体制です。
・事業実施段階における誘導やガイドラインの管理
今後、開発事業者が主体となって事業実施のための計画検討を行う段階で、豊島区を総合調整役として関係事業者等との計画協議等を進めていきます。都市再生の一層の具体化を図るため、社会状況の変化や都市再生施策の変更、周辺開発計画や事業の進捗状況等に応じて戦略及び個別地区のルールの見直しなど、ガイドラインを適切に改定することとしています。
・まちの成熟段階におけるまちの維持・管理・運営
都市再生を円滑に進めるため、事業調整や合意形成を図る場として、まちづくりに関する調整会議を設立に取り組みます。また、都市再生で生み出された都市空間・都市機能を、まちの魅力やにぎわいに結び付けるため、ソフト・ハードを一体的に活用するエリアマネジメント組織の設立も取り組むこととしています。
・エリア特性と都市整備の進捗にあわせたまちづくり
ここでは、「エリア特性を踏まえたまちづくり」「都市基盤整備と連動し重点的な調整を図る地区」を2つの柱として掲げています。池袋駅周辺地域はエリア特性が大きいため、大きく3つのエリアに分けて、全体のまちづくりの将来像や方針に基づき、エリアごとに課題や整備の進捗に応じたまちづくりを進めていきます。また、「池袋駅周辺コアエリア」「東池袋駅周辺エリア」を重点エリアとして、池袋駅東西連絡通路の整備や地下通路の整序、駅前広場の再編整備、環状5の1号線・補助81号線整備の進展など、都市再生のキーとなる都市基盤の整備を行うとしています。
東京都三鷹市_基本的な考え方
三鷹市では平成24年3月、リーマンショックに端を発した長引く景気の低迷や東日本大震災の影響などの厳しく不安定な社会経済状況を背景に「三鷹市行財政改革アクションプラン2022」を策定しました。持続可能な自治体経営の創造に向けて、数量的な行政のスリム化の取り組みを一層強化するとともに、基礎自治体のあり方を見直し、質的な変革を求めるという考え方に立って策定し、12年間にわたる計画です。
市民ニーズのさらなる多様化・複雑化とともに、マイナンバー制度及び子ども・子育て支援新制度をはじめとする国の制度改正への対応や社会保障関連経費の増加など、今後の財政運営に大きな影響を及ぼす課題が顕在化していることや、世界的な経済情勢に鑑み、自治体経営に取り組んでいくために改定することとしました。
改定後のアクションプランでは、事務事業総点検運動、公共施設総点検運動、「対話による創造的事業改善」の実践から得た発想を今後の取り組みに反映させることが求められています。安定的な市政運営を継続し、市民の安全・安心を確保するために社会経済状況の急激な変化にも対応できる経営基盤を構築できるよう、行財政改革を日常的な取り組みとしていく必要性についても言及しました。また、数量的な行政のスリム化のみならず行政サービスの質の向上を図るという三鷹市の行財政改革に対する基本的な考え方を発展させ、行政サービスの質の向上と市民満足度の向上を中核に据えた行財政改革の推進が、これからの持続可能な自治体経営に求められるという考えを打ち出しました。
今後の持続可能な自治体経営にとって必要な活動の指針として大きく4つ掲げています。
・新たなニーズ等へのスピード感のある対応
・効率性や有効性の一層の改善
・最少の経費で最大の効果をあげるための創意工夫
・非常事態からの回復力の向上
平成29年4月にオープンした「三鷹中央防災公園・元気創造プラザ」を今後の三鷹のまちづくりの中核を担う「元気創造拠点」とし、高品質で魅力ある事業を積極的かつ効率的に展開していく必要性についても言及しました。また、持続可能な自治体経営のために「サステナブル都市の実現」に向けた施策の展開も必須であり、行財政改革の視点から取り組むべき多くの課題があることを再確認しました。
さらに、今回の改定においては、3つのポイントを挙げています。
・計画体系そのものの大幅な見直しを行う
・各体系を「三鷹市基本構想」における「自治体経営の基本的な考え方」と関連づけて示す
・「三鷹中央防災公園・元気創造プラザにおける質の高い効率的な事業展開」を最重点課題とする
・「コミュニティ創生によるまちづくりの推進」と「持続可能なサステナブル都市の実現」を重点課題とする
大阪府_新大阪駅周辺の都市再生の検討に向けて
大阪府・新大阪駅周辺のまちづくり方針の骨格の位置づけは、2037年頃予定のリニア中央新幹線の全線開業によるスーパー・メガリージョンの形成や社会状況の変化に備え、広域交通の一大ハブ拠点となる新大阪駅周辺地域の20年から30年先を見据えた新しいまちづくりのコンセプトを中間的にとりまとめたものです。検討対象地域は、新大阪駅周辺を中心に直近の鉄道の交通結節点である十三駅周辺、淡路駅周辺を含めた範囲としています。
踏まえるべき社会状況や大きなまちづくりの方向性・視点としては大きく4つ挙げられました。
・踏まえるべき社会状況と大阪都市圏のポテンシャルと新大阪の広域交通ターミナル化
「踏まえるべき社会状況」としては、スーパー・メガリージョンの形成による7,000万人の巨大都市圏の形成・アジアダイナミズム(人口、経済)の進展・Society5.0(超スマート社会)の到来・災害(大規模地震等)への対応・持続可能なまちづくり(SDGs)などが中心です。「大阪都市圏のポテンシャル」については、大阪都市圏にはものづくりや医療、ライフサイエンスなどの産業・学術研究拠点、ベンチャー企業の集積、観光資源など多様な魅力をもつ都市拠点がコンパクトに集積している点を挙げています。さらに「新大阪の広域交通ターミナル化」として、新大阪駅はリニア中央・北陸新幹線や淀川左岸線など、鉄道・道路の広域交通ネットワークの整備が進み、日本屈指の一大広域交通ターミナルとなるという見込みです。
・新大阪駅周辺地域のまちづくりの大きな方向性
大阪が世界の中で存在感を発揮していくためには、日本各地との連携を深め、アジアと直接つながってその活力を取り込み、進化しつづける国際都市となることが重要です。そこで、新大阪の圧倒的な広域交通アクセスの良さを活かし、世界一の広域交通ターミナルとしてのまちづくりを実現して大阪の国際都市化のフラッグシップとなり、関西、日本の発展を支えることをめざしています。
・新大阪駅周辺地域のまちづくりにおいて踏まえておくべき主な視点
踏まえておくべき主な視点として「地理的条件」「Society5.0における拠点のあり方」「利用者の目線」を柱として据えました。「地理的条件」は広域のハブ拠点であり、国土軸と大阪都市軸のクロスポイントであるという国際的優位性を指します。「Society5.0における拠点のあり方」としては相互理解や信頼関係を深める双方向コミュニケーションや直接モノに触れて体験する価値がより一層高まるため、サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合することで、これらを促進する環境をソフト・ハードの両面で一体的に提供していくこととしています。「利用者の目線」は、国内外の多様な人誰もが利用しやすい、それぞれに応じた多様で柔軟なサービスを高めていくことで、多くの人をひきつける場所にしていくことを目指します。
・日本・アジアの発展に向けて新大阪駅周辺地域が担うべき役割と導入すべき都市機能
広域交通ターミナルとなる特性を活かし、国内外の人や情報をつなぐ都市拠点となるまちづくりを実現するため、新大阪駅、十三駅、淡路駅の各エリアがそれぞれの個性を活かして必要な機能を備えつつ、面的にも連携力を高めることが重要です。その実現のため、「スーパー・メガリージョンの西の拠点<交流促進機能>」「広域交通ネットワークの一大ハブ拠点<交通結節機能>」「関西・西日本・アジアから人を迎え入れる国際都市のゲートウェイ<都市空間機能>」となるための取り組みを推進するとしています。
今後の取り組みとしては、以下の3点が挙げられます。
・新大阪の動きを、国内外に広くプロモーションし、民間都市開発の機運の醸成、新たな事業の創出、人の集積などの動きを作り出す。
・交流促進機能、交通結節機能、都市空間機能に関するハード・ソフトの両面を視野に入れて、プロジェクトの実現に向けた調査・検討の取組みを官民連携で進める。早期に実現可能なものは、適宜具体化を進める。
・3つの機能に関連する事業者や学識経験者などとの意見交換を行いながら、関係者のネットワークを広げつつ、将来の自立したまちづくり組織への発展を見据え、検討を進める。
大阪府堺市_堺市ホームページ
大阪府堺市における都市再生に関連して、3つのプロジェクト(4事業)が進められています。具体的には、以下の通りです。
・大都市圏における環状道路体系の整備:大和川線及び淀川左岸線と一体的に整備するスーパー堤防などの関連事業の推進
大都市圏において自動車交通の流れを抜本的に変革する環状道路を整備し、都心部の多数の慢性的な渋滞や沿道環境の悪化等を大幅に解消するとともに、その整備により誘導される新たな都市拠点の形成等を通じた都市構造の再編を促すことが目的です。都心部に新たな環状道路の形成を図り、第二京阪道路の近畿自動車道までの供用に併せてこれを整備することを目標とし「淀川左岸線延伸」「大和川線及び淀川左岸線と一体的に整備するスーパー堤防等の関連事業が推進されています。
・密集市街地の緊急整備
地震時に大きな被害が想定される危険な密集市街地について、特に大火の可能性が高い危険な市街地を対象に重点整備し、最低限の安全性を確保します。危険な市街地プロジェクトの選定を受け、大阪府では平成15年4月「大阪府インナーエリア再生指針」を公表し、密集市街地の内、特に大火の可能性の高い危険な市街地をアクションエリアとし、今後10年間で整備します。堺では、湊西地区の一部(約17ヘクタール)がアクションエリアに指定されています
・大都市圏における都市環境インフラの再生:臨海部における緑の拠点の形成
豊かでうるおいのある質の高い都市生活を実現するため、大都市圏の既成市街地において、自然環境を保全・創出・再生することにより水と緑のネットワークを構築し、生態系の回復、ヒートアイランド現象の緩和、自然とのふれあいの場の拡大等を図ります。臨海部における緑の拠点の形成として、大都市の臨海部において戦略的に緑の拠点の創出のため、地方公共団体と関係者が連携して計画の具体化を図り、大阪湾堺臨海部の公有地を森として整備するとともに隣接する未利用の企業保有地を長期にわたり暫定利用することにより緑地の拡大を目指しているのです。
また、地域ごとに整備の方針を立て、都心部とその周辺について生活・交流拠点の形成、臨海拠点都市の形成、複合市街地の形成を目標としてそれぞれについてどこをどのように整備するかという基本方針が立てられています。
福井県敦賀市_都市再生整備計画 鉄道と港のまち敦賀地区 事後評価の概要(原案)
都市再生整備計画が策定され、事業を実施したあとは、事後評価によって課題は解決されたか、目標は達成できたか、計画通りに実行できたか、改善すべき点はあるか、効果持続のために何が必要かを検証することとなっています。このような事後評価を行ったうえで、改善策の実施、まちづくりの継続、次期計画への反映を行い、まちづくりの効果を事業後も持続すること、成功体験、失敗体験を次のまちづくりの教訓にすることが決められています。
福井県敦賀市の都市再生整備計画では、地区の課題に応じて「JR敦賀駅周辺における賑わい拠点整備」「敦賀港周辺における賑わい拠点整備」「各拠点を結ぶ動線の安全・快適性の向上」に関する事業を計画、実施しました。各事業については以下の通りです。
・JR敦賀駅周辺
「賑わい交流拠点」としてJR敦賀駅を位置づけ、土地区画整理事業により基盤施設整備を行いました。駅前区画整理事業、駅前広場整備事業、道路の高質化が具体的な内容です。
・敦賀港周辺
敦賀港周辺を「賑わい拠点」として位置づけ、歴史的建造物の活用や統一感のある街並み形成を通じた地域の魅力向上のため「赤レンガ倉庫」「ランプ小屋」の集客施設の整備を行いました。また、敦賀港に隣接する舟溜まり周辺については、景観形成協議会が策定した景観形成推進計画に基づき、区住民自ら行う建築物の新築や増改築等の外観整備に対する支援が行われたのです。
・中心市街地
安全安心で快適に生活できるよう、主要な道路における歩道のバリアフリー化、生活道路の側溝整備が実施されました。具体的には、道路改良工事や道路修繕工事です。
これらの事業に対する事後評価において、今後のまちづくりの方策の検討が行われました。その結果、まちの課題の変化と改善策の基本的な考え方として、JR敦賀駅周辺については一定の効果が得られたという評価でした。敦賀港周辺については、施設の拡充や景観に対する意識について課題があるとされ、新たな施設整備事業を行うとともに景観形成整備事業の継続が課題とされました。中心市街地では、拠点を結ぶ動線のさらなる魅力向上と空き家・空き地の活用など、まちなか回帰に向けた対策が必要とされました。
また、新たな課題と改善策として「更なる賑わいの創出」を行うことによって効果の持続を図ることとしています。市民や民間団体が企画・運営し、賑わい創出の効果が持続的かつ波及的に展開されるイベント開催等のまちづくり活動について、行政として支援を行うこととしています。具体的にはイベント開催等のまちづくり活動支援などです。
このように、事業の事後評価によって今後の課題点や、計画立案時に出てこなかった潜在的な必要性のある課題を洗い出し、新たな事業につなげてまちの賑わいを創出するという目標実現のために事業を計画し、効果の持続を目指しています。