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ワーケーション誘致における自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

ワーケーション誘致における自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

働き方改革の一環として、休暇を取得しながら社内打ち合わせなど短時間の就業を行う“ワーケーション”を導入する企業が増加しつつあります。民間のこうした動きに対応し、地域の魅力を発信しながらワーケーション誘致に取り組む自治体も増えてきました。ワーケーション誘致を進めるうえでのポイントを、事例などを通じて探りました。
 
【目次】
■ワーケーションが注目される理由とは
■事例①【“先進地”を目指す】和歌山県と白浜町(同)
■事例②【森のワーケーション】長野県と県内3市町村
■事例③【大スケールのプログラムを整備】北海道と道内17市町
■自治体が導入している民間企業ソリューションまとめ

ワーケーションが注目される理由とは

ワーケーションとは“ワーク”(仕事)と“バケーション”(休暇)を組み合わせた合成語で、国内外のリゾート地や帰省先など、休暇取得中の滞在先でパソコンなどを使ってリモトートワークをすることです。たとえば3日間の休暇の午後をすべて仕事にあてるなど、勤務割合が多い場合はワーケーションとは言えず、2日目の午後だけを勤務にあてるなど、あくまでも休暇が主で、勤務割合は休暇全体のなかの一部であることが必要とされます。

ある大手企業が休暇取得促進を目的にワーケーションを取り入たところ、実際に利用した社員から「業務の都合で帰省を断念しようとしたが、予定通り帰省することができた」「職場とは異なった環境で気分を変えることができ、効率よく業務ができた」など、おおむね好意的に評価されたそうです。

「自分らしい働き方」や「自分の生活に合わせた働き方」を実践することで生産性とワークライフバランスの質の向上を図る“新しい働き方”のひとつとして注目されているワーケーションは、受け入れ先となる自治体にとり、観光業などの経済効果だけではなく、都市から地方への“新しい人の流れ”が生まれることで、さまざまな地域活性効果をもたらす可能性があります。

こうしたワーケーションを誘致するためには、魅力的な観光コンテンツの企画開発のほか、Wi-Fiなどの通信環境やコワーキングスペースなど、短時間でも十分快適で効率よく仕事ができる環境整備が欠かせません。

次に、これから本格普及が期待されているワーケーションの誘致に取り組んでいる事例を紹介します。

事例①【“先進地”を目指す】和歌山県と白浜町(同)

和歌山県は平成29年度に全国の自治体に先駆けてワーケーションを推進することを決定し以来、さまざまな誘致施策や環境整備を推進しています。実際にワーケーションを試してもらう体験プログラムも提供しています。国内ではまだ事例の少ないワーケーションを周知・普及するためのPR活動も展開し、「和歌山県=ワーケーション先進地」とのブランディングをはかっています。

ワーケーションに注力するきっかけになったのは、同県白浜町にセールスフォース・ドットコムのサテライトオフィスが進出したこと。平成27年に白浜町が総務省のテレワーク実証事業の委託先に採択されたことで、“新しい働き方”を実践する同社が県と町が整備した「ITオフィスビル」にサテライトオフィスを開設。これが呼び水となって取引先企業も同ビルに続々と入居し、1年後には満室状態になりました。

セールスフォース・ドットコムの白浜サテライトオフィスでは、飲食店向けの電話予約受付サービスや人材紹介会社向けのアポイント業務などを行っています。入居後、東京でオフィスを構えていた時に比べ商談件数が11%、契約金額が63%増えたほか、通勤時間が減り、地域との交流や余暇の時間が増えるなどの効果も実証されました。

こうした実証事業の結果等から、同県はワーケーションが今後普及することを見込み、
①ワーケーション体験会の開催
②ワーケーション・コンシェルジュの設置
③ワーケーション・フォーラム開催等のPR活動
といった3つの施策を展開しました。

体験会では、地元企業と協力して仕事場所を提供するほか、交流や地域理解を深めるためのアクティビティを毎日企画しました。

ワーケーション・コンシェルジュは同県情報政策課に設置し、ワーケーションに適切なカフェや宿泊場所、アクティビティについての問い合わせなどに応じています。また、和歌山でのワーケーションを視覚的に理解してもらうためPR映像を地元企業と制作し、YouTubeで公開しています。

和歌山県では誘致だけではなく、県庁の業務にもワーケーションを取り入れることを検討しています。

事例②【森のワーケーション】長野県と県内3市町村

長野県は県内の代表的なリゾート地である軽井沢町・茅野市・白馬村に整備したリゾートテレワーク拠点でのワーケーション誘致を推進しています。

モデル地区の軽井沢町・茅野市・白馬村は東京からのアクセスがよいほか、名湯やスキー・スノボや登山などのアクティビティが豊富にあり、四季を通じた保養地として定番的な人気を誇っているリゾート地です。長野県ではこうしたワーケーション適地としての魅力を発信し、山と森のなかに身を置いたワーケーションを提案することで誘致につなげていく考えです。

長野県の取り組みの特徴は商店街の空き店舗などの遊休施設を利活用している点。その拠点整備事業として、同県は平成30年度補正予算で1,900万円を計上しました。平成31年3月には「信州リゾートテレワークフォーラム」を開催し、ワーケーションに興味をもつ企業などを対象にワーケーション拠点としての長野県の魅力やメリットなどをPRしました。

同県内では、ワーケーション誘致に力を入れる民間のホテルやコワーキングスペースなどが新たな設備投資を行ったり、ワーケーションについてのコンソーシアムや勉強会も開催。民間も積極的にワーケーション誘致に取り組んでいます。

事例③【大スケールのプログラムを整備】北海道と道内17市町

北海道はテレワークの普及啓もう活動などを推進している一般社団法人テレワーク協会と連携し、道と道内17市町との共同の事業として「北海道型ワーケーション」の創出に取り組んでいます。この事業は総務省が実施している「関係人口創出・拡大事業」に採択されています。

北海道型ワーケーションとは、首都圏の企業の社員やその家族などを対象に、道内に点在する短期滞在型サテライトオフィスを活用し、点と点を線で結んだ北海道ならではの長期滞在・広域周遊型のワーケーションプランです。

受入プログラムは「休暇・観光型」と「仕事・業務型」の2タイプを企画しています。

「休暇・観光型」では大自然のなかでのホーストレッキングや冬季限定の流氷ウォーク、「仕事・業務型」では最先端スマート農業の視察など、首都圏企業の本業と関連する北海道ならではのプログラムを用意する計画です。参加者との継続的な関係を築くため、受入自治体では「ふるさとサポーター倶楽部」を設置。ワーケーションをした場所への愛着を深めてもらえる活動を実施し、関係人口の創出につなげていく構えです。

道と共同してワーケーション誘致に取り組んでいるのは、釧路市、北見市、岩見沢市、美唄市、深川市、富良野市、長沼町、秩父別町、鷹栖町、津別町、斜里町、厚真町、浦河町、鹿追町、新得町、清水町、大樹町。山間部からオホーツク海に面した広大な範囲をカバーしたバラエティに富んだ自治体です。

自治体が導入している民間企業ソリューションまとめ

さまざまな自治体がすでに導入している民間企業のソリューションをまとめています。担当されている業務のテーマごとに分類されています。是非、参考にしてください。


<参照元>
国土交通省「平成29年度 国土交通白書」
和歌山県ホームページ
長野県ホームページ
北海道ホームページ    等

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