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【簡単解説】養育支援訪問事業とは?

【簡単解説】養育支援訪問事業とは?

近年、子育てにおいて幼児虐待や育児ノイローゼなどさまざまな問題が顕在化してきました。そのような問題を解決するために役立つのが養育支援訪問事業です。今回は養育支援訪問事業について詳しく見ていきます。
【目次】
■事業目的
■事業内容
■健康福祉関連ソリューションまとめ

事業目的

近年、児童虐待は大きな社会問題となっています。児童相談所の調査においてもその傾向は顕著であり、発生件数は平成12年度の17,725件から22年度には55,154件と急増しています。政府がこのような状況を改善するために制定したのが養育支援訪問事業です。
児童虐待の原因は主に育児ストレスや産後うつ病、育児ノイローゼなどです。そこで、子育てについて大きな不安を抱えている家庭や孤立感を抱えて育児について相談する環境がない家庭に対して保健師・助産師・保育士などの専門家、子育て経験者が訪問して必要な助言や指導などを行い、個々の家庭が抱えている問題を解消するのが養育支援訪問事業の目的です。この事業は各市町村が中核機関となり、保健師などの専門職の判断を求めながら「子どもを守る地域ネットワーク」等の調整機関と十分な連携を図ったうえで実施されます。また、必要なネットワークが設置されている自治体では中核機関と調整機関が同一であることが理想的とされています。

事業内容

・支援対象者の選定方法
養育支援訪問事業では、最初に支援が必要とされる対象者の選定から行われます。この選定の基準となるのが乳児家庭全戸訪問事業です。乳児家庭全戸訪問事業は生後4ヶ月を迎える乳児を持つ全ての家庭に対して行われる調査で、調査の結果に問題があると判断された家庭は養育支援訪問事業の対象者となります。具体的には以下のようなケースがあります。

1.特定妊婦に指定され妊娠中から公的な支援を要する環境にある場合
妊婦の年齢が非常に若く肉体的や経済的に問題を抱えている場合や妊婦健康診断未受診で母子健康手帳が交付されていない場合、さらに妊娠の後期になって妊娠届が出された場合は支援の対象となります。また、望まない妊娠等の理由で妊娠期から継続的なサポートが必要と判断されたケースも支援の対象です。

2.子どもの状況に問題がある場合
未熟児・低出生体重児といった出生状況に問題がある場合や問題行動・情緒不安定といった発育・発達状況に問題が見られる場合など、子どもの状況に問題があると判断された家庭も支援の対象となります。

3.養育者の状況に問題がある場合
出産後概ね1年以内の時期に養育者に育児ストレス・育児ノイローゼ・産後うつ的な傾向が見られ子育てに対して大きな不安や孤独感を抱えていると判断される家庭、乳児の食事や服装などから判断して適切な養育能力がなく虐待のリスクが高いと思われる家庭は支援の対象です。

4.養育環境に問題がある場合
養育環境に大きな変化が出た場合も支援の対象となります。たとえば夫婦の離婚・再婚や児童養護施設からの退所・里親に引き取られたばかりの児童がいる家庭などが挙げられます。

・具体的な支援の方法
このような支援が必要とされる家庭に対して、次に中核機関は各調整機関や担当部署と十分に連携したうえで専門的な知識を有する保健師などの意見を仰いで短期的目標(3ヶ月を目安とする)及び中期的目標(半年から一年を目安とする)を策定し、その目標を達成可能な支援内容を策定していきます。養育支援訪問事業の具体的な援助内容は主に以下の5つです。

1.産褥期の母子に対する育児支援や簡単な家事等の援助
産褥期とは母親が出産を終えてから母体が回復するまでの、一般的に6週間から8週間程度の期間のことです。産褥期はホルモンバランスが大きく変化するため発熱・むくみ・食欲減退などさまざまな症状が見られる時期でもあり、症状がひどいと家事をこなすことも難しい場合があります。このような家庭に対して子育ての経験が豊富なヘルパーを派遣して育児の手助けや簡単な家事の援助を行うことが養育支援訪問事業の支援内容の一つです。

2.未熟児や多胎児等に対する育児支援・栄養指導
近年は出産年齢が高齢化する傾向にありますが、それに比例して未熟児や低出生体重児の数は増加傾向にあります。また、不妊治療が一般的になってきた中で排卵誘発剤などの影響から多胎児が生まれるケースも目立ってきています。未熟児や多胎児を抱える家庭では疲労が蓄積しがちで夫婦だけではどうしても対応しきれないケースがあります。このような場合にヘルパーを派遣して家事の負担を軽減するのも養育支援訪問事業の事業内容の大きな柱の一つです。周りに未熟児や多胎児を抱えている、もしくは育てた経験のある友人や知人などがいない場合には子育てのために必要な情報を十分に集めることができない場合もあります。このようなケースでは保健師・助産師・保育士などの専門家を派遣して養育に関する指導や助言も行います。

3.養育者に対する身体的・精神的不調状態に対する相談・指導
出産はただでさえ身体的・精神的に負担が大きく、多くの母親は出産後に何らかの症状に悩まされることになります。中には出産や育児に関して家族の十分な理解を得ることができない場合や周囲に相談できる人がいないことで孤立感を強め、産後うつや育児ノイローゼへと進行してしまう母親も少なくはありません。産後うつや育児ノイローゼの捌け口が乳児に向いてしまうと虐待へとつながるリスクもあるので、虐待防止という観点からも対象者に積極的にアプローチして問題解決のために相談に乗ることや指導を行うことも支援内容の一つです。

4.若年の養育者に対する育児相談・指導
10代同士の結婚など養育者が若年の場合には子育ての知識やスキルが十分でないこともよくあります。乳児のオムツ交換やお風呂への入れ方、健康診断への付き添いなど育児に関するさまざまな相談を受けるのも大切な事業内容です。同様に料理や掃除といった家事全般の指導といったことも行います。このようなことが十分に行われていない家庭では乳児の食事や衣服などに問題が出てくることもしばしばです。地域のネットワークなどと連携してきめ細かく目を配ることで虐待やネグレクトを早期に発見して指導を行うことにも役立ちます。

5.児童が児童養護施設等を退所後にアフターケアを必要とする家庭等に対する養育相談・支援
家庭の事情などから児童養護施設等に預けられていた子どもが退所後に安心して暮らせるように支援することや相談に乗ることも支援の内容に含まれます。一般的に児童養護施設を出た子どもは家族の元へと戻っていく場合や里親の元で新しい生活を始める場合、就職して一人暮らしをする場合があります。ただし、全ての子どもが新しい環境にすぐに順応できるわけではなく、多く場合はその後も継続的な支援が必要です。養育支援訪問事業では退所児童を支援するNPO法人や任意団体などとも連携して子どもの抱えている悩み事を解決するのはもちろんのこと、親や里親の立場に立って養育相談を受けています。その他にも安心して立ち寄ることのできるホットスポットの提供や就職先の情報の提供など、多様な形で支援を行っています。

・委託者の選定
養育支援訪問事業において実際に支援対象者の自宅に訪問するのは中核機関によって選定された委託先のスタッフです。中核機関が立案した支援内容を円滑に実施するためにも、委託先の選定は慎重に行わなければなりません。委託先に求められるのは支援対象者の抱えている問題を解決するための十分な知識やスキルです。そのため、支援策の実施にあたっては事前に研修プログラムを組み込んで一定の質を維持できるように努めています。また、訪問者が知り得た事実を第三者へ漏らすことがないように守秘義務についても徹底的な周知をするよう心掛けています。

健康福祉関連ソリューションまとめ

子育て支援を含む健康福祉関連のソリューションをまとめています。是非、参考にしてください。

 

<参照元>
厚生労働省_平成12年度 児童相談所における児童虐待相談処理件数報告_(https://www.mhlw.go.jp/houdou/0111/h1114-3.html)
厚生労働省_厚生労働省ホームページ_(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/kosodate09/)
厚生労働省_厚生労働省ホームページ_(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/164-1.html)
厚生労働省_乳児家庭全戸訪問事業ガイドライン_(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dv/dl/131030_03-02.pdf)

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