厚生労働省_在宅医療連携モデル構築のための実態調査報告
これからますます必要とされる在宅医療ですが、そのニーズに応えるためには医療機関同士が適切な役割分担をし、提供体制を整えなければいけません。まだ少数派とはいえ、在宅医療連携の先進的な取り組みをすでに行っている地域もあります。
それらの施設に対しヒアリング調査を行なった結果、次のような回答が得られました。在宅医療を行っている団体は、「医療法人」と「個人」が主体、診療区分は「無床診療所」が9割以上です。診療科目は「内科」が一番多く、医師1名、看護師3名の職員数が平均となっています。
実施状況は、「往診」、「訪問診療」、「訪問介護ステーション指示書の交付」、「在宅看取り」を大半が実施しています。また、在宅医療で対応可能な処置は、「膀胱留置カテーテル」、「在宅酸素療法」、「点滴・静脈注射」等は8割以上対応しているものの、「腹膜透析」、「小児患者への対応」は5~6割が対応不可でした。
医師1人あたりの1年間における平均往診件数は約80件で、24時間体制365日対応が最も多くなっています。往診に対する意向は「現状を維持したい」というものが最も多く、そのような回答をした診療所の1年間における平均往診数は57.2件でした。今後、在宅医療を継続するうえでの課題としては、訪問するための時間が確保できない、医師の高齢化、医師以外の医療・介護スタッフの不足、医師の不足、24時間対応の訪問看護が難しいというものがあげられています。
このような課題を解決するには、地域機関病院との連携や他職種間・同職種間との連携、地域包括支援センター・ケアマネジャー等との連携、医師会との協力、行政との協力といった点に取り組む必要があると考えられます。また、医療従事者の確保、急変時等に対応するための後方支援体制の整備、家族による看護・介護の負担を軽減するサービスの整備が今後さらに必要となります。
首相官邸_在宅医療・介護推進プロジェクト
日本は女性の平均寿命86歳(世界1位)、男性80歳(同2位)であり、同時に高水準の医療・介護制度を確立しています。しかし、入院医療・施設介護が中心となっており、自宅で死亡する人の割合は1950年の80%から2010年は12%にまで低下しています。
そこで現在、在宅医療・介護推進プロジェクトが進められています。このプロジェクトの主な目的としては、施設中心の医療・介護から、住み慣れた生活の場で必要な医療・介護を受けられるようにし、安心して自分らしい生活を実現できる社会を目指すことです。
そのために取り組まれていることは、在宅チーム医療を担う人材の育成、実施拠点となる基盤の整備、個別の疾患等に対応したサービスの充実・支援です。少子高齢化が一層進行する2055年には、1人の高齢者を1.2人で支える社会構造になると想定されているため、在宅医療・介護推進は今後ますます社会全体で取り組んでいく必要があると言えます。
また、自宅で療養していて必要になれば医療機関を利用したいという人も含めると、60%以上が「自宅で療養したい」と回答しています。このことからも、住み慣れた環境でできるだけ長く過ごせるように、また望む場合は自宅での看取りも選択肢になるよう在宅医療を推進していく必要があることがわかります。
そのための今後の課題としては、在宅医療サービス供給量の拡充、家族支援、在宅療養者の後方ベッドの確保、24時間在宅医療提供体制の構築、在宅医療の質の向上・効率化、医療・介護の連携があげられます。
厚生労働省_在宅医療連携拠点事業
在宅医療連携拠点事業の目的は、病気を持ちつつも可能な限り住み慣れた場所で自分らしく過ごす「生活の質」を重視する医療を行うことにあります。そのためには、在宅医療に関係する職種の人々が協力し合い、在宅医療の支援体制を整え、医療と介護が連携した地域における包括的かつ継続的な医療の提供を目指す必要があります。
そこで求められることは、多職種連携の課題に対する解決策の抽出、在宅医療従事者への負担軽減の支援、効率的な医療提供のための多職種連携、在宅医療に関する地域住民への普及啓発、在宅医療に従事する人材育成です。具体的には、地域の医療福祉従事者が集まり、在宅医療における連携上の課題の抽出や対応策の検討や学習会の実施、24時間対応の在宅医療提供体制の構築、地域の医療体制を把握し不足する資源に対して代替資源の開拓を行う、在宅医療に関する機能や役割を地域住民に紹介しその役割の周知を行う、都道府県リーダー研修や地域リーダー研修に積極的に参加するといったものがあります。
このようにして、在宅医療連携拠点事業を行ない、報告書を作成することでデータ収集・分析が可能になり、その後の在宅医療連携拠点事業の向上につなげることができます。好事例の情報を広げ、全国的な在宅医療取り組みの質を向上させることにもつながります。
厚生労働省_在宅医療・介護連携推進事業
在宅医療・介護の推進にあたって課題となるのは、65歳以上の高齢者のうち「認知症高齢者の日常生活自立度」Ⅱ以上の高齢者が増加していくこと、世帯主が65歳以上の単独世帯や夫婦のみの世帯が増加していくこと、在宅医療・介護をするうえで重要となる訪問介護を提供する医療機関が不足していること、またその連携が十分に取れていないことと言えます。
医療と介護では、保険制度が異なることや相互の理解や協力が十分にできていないという問題点もあります。このような問題点を解決するため全国的に取り組まれてきたのが、在宅医療・介護連携推進事業です。在宅医療・介護を促進するためには、国や都道府県、市町村にそれぞれの取り組みが求められます。国に求められる取組みは、在宅医療・介護連携推進事業に関する計画書の支援、都道府県、市町村による在宅医療・介護連携に関する現状分析のための支援、好事例の横展開です。
これを踏まえたうえで、都道府県に求められる取り組みは、小規模市町村等に対する効果的な事業の導入・展開に向けた支援、複数市町村にまたがる連携の取り組み等、広域的な在宅医療・介護連携の推進に向けた支援があります。そして市町村に求められる取り組みが、在宅医療・介護連携推進事業の着実な導入・実施です。各団体がこれらの取り組みを着実に行うなら、在宅医療・介護連携推進事業が円滑に進んでいくことになります。
総務省_医療・介護・健康分野の情報化推進
在宅医療連携は、総務省でも取り組みを行っています。総務省で進めている取り組みは、医療・介護・健康分野のネットワーク化の推進、医療・介護健康分野における先導的なICT利活用の推進です。
内容としては、レセプトに基づく薬剤情報や特定健診情報といった患者の保健医療情報を、患者本人や全国の医療機関で確認できるようにするという取り組みです。そのために、地域医療情報連携ネットワーク(EHR)を整備する事業に対する補助や遠隔医療の普及促進のモデル構築を行なっています。
また、個人の医療・介護・健康データをパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)として、本人の同意の下さまざまなサービスに活用することにも力を入れています。そうすることによって、アプリを活用し個人の情報を時系列で収集・活用できるようになり、災害や緊急時、引っ越し先での医療機関、民間保険会社、高付加価値ヘルスケアサービスへの情報共有を簡単に行なうことが可能になります。
そして技術革新が進むAIを用いることで医療・介護・健康データの利活用を効率的かつ効果的に進めることができるようになります。その結果として、より質の高い医療を提供することになります。
さらには、8K等の高精細映像技術を活用することにも力を入れています。現在の腹腔鏡では不可能な手術でも8K技術を活用することで可能になり、しかもより安全で完全な治療を行なうことができるようになります。