ファイル名だけでは特定することが不可能
―印刷環境における堺市上下水道局の取り組みを教えてください。
間瀬 印刷環境の改善を行うため、目安となる3つの指標を立てました。それが「セキュリティの強化」「効率化」「環境問題に配慮したペーパーレス化」です。5年ごとのシステム更改のタイミングで、これらを実現しようとしました。
まずは、「誰が、どのような内容を、どの出力機で、何枚印刷しているか」の把握が行える認証印刷ソリューションを検討しました。いわゆる印刷環境の“見える化”です。
ただ、そうした検討のなかで課題がありました。
―どのような課題ですか。
菊池 従来のソリューションでは印刷ログとして、ファイル名しか残らなかったことです。ファイル名は偽装できますので、悪意のある人物が印刷物を持ち出した場合に特定することができません。
これではセキュリティ強化とはいえなく、印刷している文書内容が追跡できるソリューションが必要と判断しました。
―そんななか、民間企業の認証印刷ソリューションを入札して導入しました。どういった点を評価したのでしょう。
菊池 印刷内容をすべての印刷物から正確に取得し、その印刷内容を権限のある管理者が検索できる点です。万が一情報漏えいが発生してしまっても、どのような内容がどの経路で漏えいしたのかを特定することが可能です。そのため、内部の職員に対して、抑止効果が得られていると考えています。
間瀬 また、パソコンで印刷をかけても、印刷した本人が出力端末に職員カードをかざさないと出力できないようになっているので、印刷物を長時間放置することによる紛失や、取り間違いもいっさいなくなりました。
―ほかに評価した点があれば教えてください。
菊池 現場からの声をしっかりくみ取ってもらえる点ですね。ソリューションは使っていくうちに「こんな機能があればいいな」という要望が次々と出てきます。それを民間企業の担当者に話すと検討と対応が具体的に話し合え、カスタマイズではなく、標準機能として製品対応をしてもらえます。ほかの自治体や官公庁向けの機能についても同様に対応されているので、同じレベルを使用できるという安心感があります。
情報セキュリティは日々進化する一方、その脅威も日々進化します。つねに対策を打てる環境があるので、大変ありがたいですね。
ログをチェックできる そのリスクにも対応
―その一方で課題はありますか。
菊池 「管理者が情報を見ることができる」ということにより、管理側の体制強化などの課題が発生しています。そのため当局では、なんらかの事態に見舞われた場合に閲覧可能とし、普段は管理者がログを閲覧できない設定で運用しています。
間瀬 そうしたリスクに対しても、民間企業に対応してもらっていて、管理者権限保持者が複数で同時認証といった仕組みを作成中と聞いています。
―今後の方針を教えてください。
菊池 セキュリティは一定のレベルに達したと考えられるので、次は印刷機器の最適化やコスト削減に取り組んでいきます。どの印刷機器をどれだけ使っているかが組織、人単位でわかってきますから、それに応じた台数削減やペーパーレス化を進めていく予定です。
間瀬 当局では、行政系と業務系2種類のネットワークを使っていますが、今回の導入により、印刷ネットワークのみ統合しました。これでかなりのコスト削減になるほか、管理も容易になりました。これからも、最小の設備で最大の成果を発揮する取り組みを行っていきます。