―外国人観光客を増やすためにこれまでに取り組んできた施策を聞かせてください。
無料Wi-Fiスポットの設置といったインフラ整備のほか、夜間の消費を活性化するためのプロモーション活動を多言語対応のWebサイトで情報発信するなど、多様な取り組みを行っています。
最近では、Wi-Fiやクレジットカードの利用、携帯端末から取得する位置情報などから、旅行者の行動や消費を分析し、その結果を各施策の効果検証に活かすためのマーケティング活動に注力。各国旅行者の移動記録や、夜にホテルへ戻る時間などのデータを取得してきました。しかし、これらのデータをWebサイトへのアクセス履歴といった異なるデータに紐づけて効果検証を行えるような仕組みはなく、個々の施策が単発で終わってしまう課題がありました。
―課題に対してどのような対策を講じたのですか。
各種データをひとつのプラットフォーム上で収集・分析できる仕組みの構築を、民間企業の協力をえて始めました。具体的には、旅行客の行動記録などさまざまなデータを収集・分析するDMP(※)を構築。ここには、大阪観光局がもつデータのほか、民間企業などが提供するデータを格納できます。現在は分析に必要なデータを収集している段階ですが、今後は分析でえた結果をもとに施策の効果検証を行い、さらに新たなプロモーションの立案や広告配信につなげていく予定です。
※DMP: Data Management Platformの略。さまざまな情報を収集・分析し、マーケティング施策につなげるためのプラットフォームのこと
―民間企業との協業を決めたのはなぜでしょう。
インバウンド施策に特化した豊富なデータや知見をもっているためです。たとえば、アジアの旅行者の消費にかんする詳細なデータを多く保有していること。住んでいる国・地域や性別、年齢、他国への渡航履歴、嗜好などのデータを私たちがもつデータに紐づけることで、「どのような消費傾向をもったどの国の旅行者が、大阪でどう行動したか」といった具体的な旅行者像を推定できます。そして、この旅行者像をもとにターゲット層を策定することで、より効果的な観光施策の企画につなげられるでしょう。
未来のモデルとなる観光政策を実現する
―今後実現させたい観光政策のビジョンを聞かせてください。
効果的なデジタルマーケティングを行うため、必要なデータを洗い出し、収集をするには、Webサイトやアプリの制作事業者などの協力も不可欠です。デジタルの活用だけでなく、外部の事業者を巻き込む観光政策のあり方は、日本でも先行的な取り組みだと自負しています。日本における未来の観光政策のモデルとなるような仕組みをつくっていきたいですね。