※下記は自治体通信 Vol.20(2019年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
3月29日、内閣府は「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン」を公表した。これをもとに各自治体は今後、地域防災計画の修正を急ピッチで進めることになる。そこで本誌『自治体通信』と時事通信社は、7月19日に「防災・危機管理カンファレンス」を開催。自治体での取り組みや有識者・民間企業からの提案をまとめ、今後のあるべき防災対策を探った。
開催概要
【日時】令和元年7月19日(金)
13:00~14:00 基調報告・基調講演
14:15~16:20 自治体事例紹介と民間企業プレゼンテーション
16:35~17:30 パネルディスカッション
【会場】 時事通信ホール
【参加者】 首長・地方自治体職員、中央省庁職員、議員など自治体関係者約150人
防災対策は不断の見直しをかけていくもの 冒頭の基調報告では、内閣府政策統括官(防災担当)の青柳一郎氏が、新ガイドラインの政策的意義を語った。
青柳氏は、ガイドラインが想定する3つの異常現象を紹介。もっとも甚大な被害が想定される「半割れ」とは、震源域の岩盤の半分だけが割れて地震に至るケースであり、震源域の東西で時間差をもって地震が発生することを指摘。ガイドラインでは1週間程度の時間差を想定しながらも、過去には2年間の時間差が生じたケースなども紹介された。また、岩盤の一部が割れて地震が生じる「一部割れ」ケースや、ゆっくりと断層が動き地震波を放射しない「ゆっくりすべり」ケースでの被害想定や対策にも触れた。
国による試算では、南海トラフ地震による経済活動への影響は44.7兆円とされている。青柳氏は、「直接間接の影響は日本全国におよぶ」とし、参加した多くの自治体関係者に対策の重要性を語った。
最後に青柳氏は、「防災対策は不断の見直しをかけていくべきもの」と指摘。各自治体が防災計画に修正・改善をかけるなかで、国の防災計画にも意見があれば届けてほしいと参加者に呼びかけた。
社会全体の安全レベルを上げていくために ~産業界との連携が重要に~ 続いての基調講演では、名古屋大学教授・減災連携研究センター長の福和伸夫氏が、「自治体や企業に期待したいこと」と題する講演を行った。
同氏は、ガイドラインをとりまとめた中央防災会議防災対策実行会議のワーキンググループで主査を務めた人物。講演のなかで同氏が指摘したのは、まず地震データの変遷について。近年、「急速に増設された震度計によって震度のインフレーションが起きている」と語る福和氏は、観測地点の増加によって現代は過去にくらべて観測震度が過大になっているのではないかと指摘。過去と現代、都市部と地方といった震度計分布密度の違いを考慮し、観測データの取り扱いには注意が必要と述べた。
そのうえで、大都市の地震に対する脆弱性にも言及。エレベータの停止・閉じ込めなど、小さな揺れでも簡単にマヒしてしまう現代の都市機能の問題点を指摘した同氏は、「緊急地震速報や臨時情報をうまく活用し、事前の対策で大都市の混乱をできるだけ回避することが重要」と語った。
同氏は、自治体が防災対策を進めるうえで、「住民の命を守るためにも、産業を維持することの重要性に気づくべき」とも指摘。「産業界とも連携し、社会全体の安全レベルを上げていくことが重要で、今回のガイドラインはそのきっかけになる」とまとめた。
静岡版ガイドラインの策定に注力 ~県内3自治体をモデル地区に選定~ 防災対策をめぐる自治体の取り組み事例では、最初に静岡県危機管理部の板坂孝司氏が登壇し、同県の南海トラフ地震対策を紹介した。
同県では過去40年にわたり、東海地震に備えた防災対策を整備してきたが、平成25年にはこれに南海トラフ地震も踏まえた、「第四次地震被害想定」をまとめている。そこでは県内の半分以上の地域で震度6弱、一部地域では最大33メートルの津波が到達すると想定されている。県独自の試算では、最大10 万人を超える犠牲者が出るとされ、その数をいかに減らすかに腐心してきたという。
同県では、「地震・津波アクションプログラム」を策定し、平成25年度からの10年間で、想定犠牲者の8割を減らすことを目標に事前防災や災害応急対策を実施。平成29年度末時点で、約4万人の減災効果を確認している。
このほか、今回のガイドラインに地域の実情を加味した県版ガイドラインの策定を進めている。具体的には、湖西市、伊豆市、河津町の県内3自治体を先駆モデル地区に選定し、現地調査を実施。要配慮者や観光客の避難を想定した円滑かつ安全な移動手段の検討や、事前避難対象者数を勘案した避難所の選定・確保を、スピード感をもって進めている。
大規模災害から産業を守る ~産学官民連携による「オール碧南」で~ 自治体事例紹介の2つ目として、碧南市(愛知県)経済環境部長の永坂智徳氏が、「基礎自治体における産業防災の新しい潮流」と題して同市の取り組みを紹介した。
碧南市が位置する西三河地区は、世界トップレベルの競争力を誇る自動車産業の集積地であり、製造業の集積や、臨海部の就労人口が1万4,000人にもおよぶという地域特性をもつ。こうした背景から同市では「地域防災計画」に産業防災の観点を取り入れ、大規模災害から産業を守る取り組みを実施してきた。
平成26年度からは地域連携BCPの普及促進に力を入れ、「地域連携企業防災力向上事業」を開始した。モデル地域内で進めてきた津波避難場所の確保や避難マニュアルの作成といった活動を、その後、臨海部全地域に拡大。近隣企業が連携して地震や津波への対応力を高める仕組みを構築した。碧南市では各種セミナーやワークショップの開催を通じて、個別企業のBCP策定も支援してきたという。
また、「防災対策行動計画」の策定では、産業・行政・市民の3分科会を組織し、117人の分科会委員が2年間にわたる活動に参画。産学官民の連携を強化するプラットフォームを構築し、「オール碧南」で市の防災力強化を進めてきた活動が紹介された。
南海トラフ地震の死者ゼロをめざす ~国に先がけて防災対応方針を策定~ 3つ目の自治体事例紹介では、徳島県危機管理部次長の坂東淳氏が、同県の防災対応について講演した。
同県では昨年12月、国のガイドライン発表に先がけて独自の防災対応方針を策定している。これは、南海トラフで巨大地震が発生する可能性が高まり、「臨時情報」が発表された際の住民避難について示したもの。紀伊水道を挟んで北部と南部で浸水の様相が大きく変わる同県の地域特性を鑑み、それぞれの地域での住民避難行動モデルを策定。南海トラフ地震による死者ゼロの実現をめざしている。
講演では、臨時情報に対する意識調査の結果、住民の認知度がわずか3割程度であったことを紹介。ワークショップの実施やメディアとの連携で、理解の促進を図っているという。また、住民への情報発信については、ITの活用とともに、高齢者対策として自主防災組織のなかで連絡網の作成を進めている。
さらに同県では、市町村と連携した住民行動のモデルケースの検討も進めている。さまざまな業界団体で構成される「地域継続推進協議会」でBCPを策定するとともに、県立学校では先行的に臨時情報発表時の対応方針を策定した。これにより、保護者への啓発や、企業や団体への波及効果を狙っているという。
「日本一危ない」と言われた町の防災対策 ~津波想定34メートルに備える~ 自治体事例紹介の4つ目として、高知県黒潮町産業推進室長補佐の友永公生氏が登壇。南海トラフ地震の際に国内最大となる34.4メートルの津波被害想定が出された同町における防災対策が紹介された。
友永氏によると、「津波想定34.4メートル、最大震度7という衝撃的な予想で、町は大混乱に陥った」といい、町民のあいだには避難をあきらめる「避難放棄」と、ふるさとをあきらめる「震災前過疎」という2つの「あきらめ」が生じたという。そこで同町では、全職員を防災担当と見立て、「逃げる人づくり」「逃がす環境づくり」「生きぬく地域社会づくり」を施策の三本柱に据えて、犠牲者ゼロをめざした防災まちづくりを進めてきた。
また、「日本一危ない」と言われ、町民が苦悩するなか、同町では防災対策だけでは町の活性化にはつながらないと考え、地域資源を活かした新産業の創出にも着手した。それが平成26年に設立された缶詰工場。缶詰は非常食になるため防災対策の一環としても有益であり、「防災の産業化」として注目を集め、事業は軌道に乗りつつあるという。
同町では国のガイドライン公表を受けて、町内2つのモデル地区でワークショップを重ね、町民の防災意識の向上にも努めている。
-1- 準備できていますか? 訪日中国人に向けた防災情報の発信 民間企業からのプレゼンテーションでは、中国の検索事業大手バイドゥの國井雅史氏が、同社による訪日中国人観光客に向けた防災情報発信の取り組み内容を紹介した。
近年、中国からの訪日観光客は増加を続け、昨年は年間838万人と国別では最大となる。昨年発生した北海道胆振東部地震や大阪北部地震の際には、これら中国人向けに防災情報がスムーズに発信されず、大きな混乱やその後の訪日客数減少を招いた事例を紹介。バイドゥが提供するMAP機能を活用した避難所情報の表示や防災ガイドといった機能を紹介し、自治体と連携した被災時の情報提供の必要性を訴えた。
-2- 被災時には蓄電池として活用も 電気自動車を活用した災害対策 民間企業からのプレゼンテーション2つ目は、日産自動車日本事業広報渉外部担当部長の大神希保氏から、電気自動車(EV)を活用した災害対策が紹介された。
同社は、世界初の量産型EVとして平成22年に『リーフ』を発表。現在、13万台以上が普及し、全国で3万基を超える充電インフラが整備されている。これを地域の課題解決に活かす取り組みとして、同社では昨年から日本電動化アクション「ブルー・スイッチ」を推進。EVを蓄電池としてとらえ、その給電能力を災害時に活用できる。同社では多くの自治体と災害連携協定を結び、災害対策でのEV活用を後押ししている。
※写真左から
【コーディネーター】
時事通信社 解説委員(静岡大学防災総合センター客員教授) 中川 和之(なかがわ かずゆき)
【コメンテーター】
名古屋大学教授 減災連携研究センター長 福和 伸夫(ふくわ のぶお)
【パネラー】
徳島県 危機管理部 次長 坂東 淳(ばんどう まこと)
愛知県碧南市 経済環境部長 永坂 智徳(ながさか とものり)
内閣府 政策統括官(防災担当)付 参事官(調査・企画担当)付 企画官 古市 秀徳(ふるいち ひでのり)
認定NPO法人 災害福祉広域支援ネットワーク・サンダーバード 副代表理事(元練馬区防災課係長)
高橋 洋(たかはし ひろし)
新ガイドラインは地域で防災を考える契機 ~行政・産業・市民が総力で対応を~ 本カンファレンスの締めくくりには、パネラー4人によるパネルディスカッションが開かれ、南海トラフ地震への備えをめぐってさまざまな意見が交換された。議論のコーディネーターは、主催者となる時事通信社解説委員の中川和之氏が、コメンテーターは基調講演を担当した福和氏がそれぞれ務めた。
議論の冒頭、内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(調査・企画担当)付企画官の古市秀徳氏は、「臨時情報の運用が始まったが、今後まとまる各自治体の推進計画に最初から100点満点を求めるのは無理。日頃から地域で取り組み、徐々に合意形成を図り、年々充実させていくことこそが大事」と指摘。さらに、「100年に一度の突発的な事象として取り組むのではなく、日頃から自分事として皆が取り組んでいくことが重要。黒潮町の缶詰工場のように、通常の営みの延長線上として、日常に溶け込ませるような防災活動が必要」と語った。
また、パネラーのひとりである災害福祉広域支援ネットワーク・サンダーバード副代表理事を務める高橋洋氏(元練馬区防災課係長)からは、被災の際、県境を越えて応援が必要になると想定される要支援者の広域支援について、今後の検討の必要性が提起された。これに対し、徳島県の坂東氏は、鳥取県との連携協定の取り組みを紹介。「南海トラフ地震では、徳島県と鳥取県は同時被災がないと想定されるため、震度5強以上の際に相互に人的支援を出し合う協定を市町村、商工会、社会福祉協議会それぞれのレイヤーで結び、相互に支援する体制を構築している」との取り組みが紹介された。
さらに、会場からは碧南市の永坂氏に対して、産業界を巻き込んだ地域連携BCPを推進した際のポイントについて質問が飛んだ。永坂氏は、「大規模災害の発生は避けられないが、大事なのは災害復興の原動力となる産業界の機能がどれだけ生き残るか。そのために、臨海部の事業所からは死者を出さないことを共通認識に、規模も業種も違う企業が一緒に対策の階段を一段でも上がる意識をもつことが重要」と指摘した。
モニタリングシステムの提案を通じ、地域の防災・減災対策を支える ―提供している防災関連サービスを教えてください。
防災・減災につながる“まち”のモニタリングを提案しています。たとえば、昨今増加傾向にある豪雨への備えとしては、道路のアンダーパスや河川の水位を遠隔監視できるシステムを展開し、災害時の早期対応と職員・地域住民の安全確保を支援。昨年度には、兵庫県小野市で小規模河川の監視にこのシステムが導入されました。同市の課題は、「非常に激しい雨」による水害を防ぐことでしたが、そのためには大規模河川だけでなく、小規模河川でも水位を網羅的に計測する必要があったのです。半年以上の運用を通じて有用性が評価され、本年度にも当社のシステムが追加導入される予定です。
―今後はどのように自治体を支援していきますか。
雨量や積雪量など災害にかかわる気象状況を加味した早期対応や、各種施設における遠隔監視・制御の省力化など、多様なモニタリングの仕組みを提案することで、自治体の防災対策を支援していきたいですね。
このほか、自社が保有する事業ノウハウを活かし、自治体の安全・安心だけでなく、地方都市のさまざまな課題解決に寄与する取り組みも進めています。関心のある方は、ぜひ、お問い合わせください。
木南 敏之 (きなみ としゆき) プロフィール
平成6年、オムロン株式会社(平成23年にオムロン ソーシアルソリューションズ株式会社が分社化)に入社。令和元年より現職。おもに公共施設のモニタリング事業などに従事している。
オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社
設立 平成23年4月 資本金 50億円 売上高 808億2,800万円(平成31年3月期:連結) 従業員数 2,747人(平成31年4月1日現在:連結) 事業内容 交通管理・道路管理システムの開発・保守メンテナンス、社会インフラのモニタリングソリューションなど URL https://www.oss.omron.co.jp/
平常時から応急復旧まで、全フェーズでの災害対応を支援 ―防災に関連してどのようなサービスを展開していますか。
平常時から警戒、発災、応急復旧まで全フェーズの災害対応を一元的に支援する『災害情報システム』を提供しています。地図データ上に被災箇所や気象情報、ハザードマップなど多様な情報を表示する災害情報共有機能を中心に、避難所運営や避難物資管理、職員参集などの機能も実装。既存の外部センサーやサイトと連携した発令判断支援や、住民・事業者・各種関係機関への一斉発信も可能です。同サービスは、クラウドやオンプレミス、LGWAN対応など、さまざまな形態で提供しています。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
『災害情報システム』はこれまで、自治体5団体に導入されています。当社ではさらに、操作研修の開催を行うほか、警戒時にシステム保守要員が待機するサポート体制の構築など、導入後の運用面においても自治体を継続的に支援しています。災害発生時には、社会貢献の一環として、航空写真撮影やドローン撮影、レーザ計測を実施。その計測成果をデータ処理し、当社の特許技術である「赤色立体地図」として提供します。今後も、多様なカタチで自治体の防災業務に貢献していきたいですね。
政木 英一 (まさき ひでかず) プロフィール
昭和42年、埼玉県生まれ。埼玉大学大学院理工学研究科で博士号取得。空間情報のモデリングから流通にかかわる仕組み・流通基盤の構築を専門とする。
アジア航測株式会社
設立 昭和24年12月 資本金 16億7,377万8,000円 売上高 245億円(平成30年9月期) 従業員数 1,449人(平成31年4月1日現在) 事業内容 空間情報システム事業と建設コンサルタント事業を合わせた空間情報のコンサルティング、測量および、調査・デジタルマッピング・GIS・画像および計測技術などをベースとした図面作成、各種台帳作成、各種調査、行政支援システム構築、デジタル計測など URL https://www.ajiko.co.jp/
つながりやすい無線機で、災害時の情報共有を効率化する ―どのような防災関連製品を提供していますか。
災害用無線機や緊急地震速報受信機、安否確認システムなど、さまざまな製品を提供しています。たとえば、災害用無線機『ハザードトーク』は、災害時に一般の携帯端末が輻輳(ふくそう)(※)してつながらないときでも、専用のデータ網で通信を行えます。写真・動画の共有機能では、画像や動画を、位置情報や撮影者名、緊急度タグ、コメントとともに、簡単な操作で関係者にいっせいに発信。情報は、Googleマップ上に自動でプロットされて共有することができます。
※輻輳:通信が一度に集中して通信回線がパンクし、通話ができなくなる状態
―導入事例を教えてください。
神奈川県厚木市では、従来のMCA無線では市内全域をカバーしきれなかったことから『ハザードトーク』が導入されています。メールに画像や動画を添付する従来の方法よりも、情報共有が簡略化できることも評価されたのです。東京都葛飾区では、アナログ無線の停波にともなう次の移動系無線の手段として、同製品を採用。庁舎や出先機関などに配布し、災害時のホットラインを構築しています。『ハザードトーク』はデジタル無線とくらべて初期費用が低く、緊防債(※)も活用できます。興味のある自治体にはデモ機の無料貸出を行っていますので、お試しください。
※緊防債:緊急防災・減災事業債の略。東日本大震災を教訓に生まれた、防災対策にかかる費用を対象とする地方債。令和2年度まで延長された
青山 利之 (あおやま としゆき) プロフィール
昭和48年、東京都生まれ。平成18年、テレネット株式会社に入社し、専務取締役に就任。おもに技術部門を統括。緊急地震速報利用者協議会の理事も務める。
テレネット株式会社
中国人に情報を届けるサイトづくりには「チャイナフレンドリー」が重要に ―防災にかんするサービスの詳細を教えてください。
日本に旅行中の中国人観光客向けに、防災にかんするWebページの提供を行っています。具体的には、中国人観光客が使用している『百度(バイドゥ)地図』のなかで、日本全国の避難所マップを提供。あわせて、防災ガイドのWebページを立ち上げました。
平成30年の訪日中国人客は838万人で、訪日外国人全体で一位。そうした中国人観光客が万が一災害にあった際に、対応できるようにするための取り組みです。特に自治体向けには、防災に限らず、中国語サイト診断サービスの提供を強化しています。
それはなぜですか。 当社は平成31年1月、全国47都道府県の中国語サイトが中国本土から何秒で表示されるのかを調査しました。結果、3秒以内に表示されたサイトはわずか20%。一般的に、Webサイトの表示に3秒以上かかるとユーザーの関心度が著しく低下するといわれています。防災も重要ですが、Webサイトを通じて地方の魅力を発信することはとても有効な方法です。ただ、中国は独自のインターネット環境があり、情報を届けるには「チャイナフレンドリー」なサイトづくりが重要なのです。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
百度広告を活用する自治体には、無償でサイト診断レポートを提供します。「中国人向けの施策を行っているが、なかなか効果につながらない」という自治体は、ぜひご相談ください。
國井 雅史 (くにい まさふみ) プロフィール
北京大学社会学部を卒業後、SBIサーチナ株式会社に入社。株式会社マクロミルを経て、平成26年にバイドゥ株式会社(Baidu Japan Inc.)に入社。現在、中国ビジネスコンサルタントとして、中国Webマーケティングを中心に越境EC、インバウンド、日本企業の中国ビジネス支援などの業務に従事している。
バイドゥ株式会社(Baidu Japan Inc.)
蓄電池の役割を果たす電気自動車で、災害時における電力供給をカバー ―防災にかんして、どのようなサービスを提供しているのでしょう。
日本が抱える「防災」をはじめ、「環境」「エネルギーマネージメント」「観光」「交通弱者対策」などの課題を解決するため、昨年5月、電気自動車の普及を通じて社会の変革、地域課題の解決に取り組む、日本電動化アクション「ブルー・スイッチ」を発表しました。
防災にかんしていうと、蓄電池にもなる電気自動車は、災害時に避難所などで電力を供給することが可能です。
―実際に導入は進んでいるのですか。
現在のところ、自治体においては、東京都練馬区、神奈川県横須賀市、岐阜県飛騨市、三重県伊勢市、熊本県熊本市とすでに災害連携をしています。企業では、北海道の大手コンビニエンスストアを運営しているセコマ社と、同様の内容で協定を締結ずみです。
―今後の自治体に対する支援方針を教えてください。
蓄電池の役割を果たす電気自動車の活用で、災害時に電気自動車から電力供給するほか、ガソリンが手に入りにくい環境下で連絡車として活用することも可能です。
そうした取り組みを推進するため、活動をけん引するリーダーとして、全国の自治体や企業と協力し、災害時連携協定を積極的に締結していきたいと考えています。
また災害時に限定せず、平時から環境やエネルギーマネージメントなどの施策も実施する「包括協定」も視野に入れて取り組んでいきたいですね。
日産自動車株式会社